第133話 冒険者学校 卒業試験 実技①

「ルールは簡単、闘技場で俺と1対1の模擬戦だ!!俺が独断と偏見で評価する!!」




「うわぁ…絶対厳しいよなぁ…」




「教授の独断と偏見だもんな…」




クラスメイト達の間でどよめきが広がった。


…評価基準が理不尽極まりないため、至極当然なことだが。




「教授、1つ質問よろしいでしょうか?」




「何だ?」




「教授を倒した場合、得点は200点満点をもらえるのですか?」




「もちろんだ!!倒せるのなら倒してみろ!!」




『ん…?今俺の方を見て言ったな…』




獲物を見るような目でニヤついたアランとばっちり目があった。


今のは俺への挑発ということだろうか?




『受けて立とうじゃないか…!!』




「教授、試験の順番は番号順ですか?」




「いや、俺の指名制だ!!ランダムで行くからな!!」




『おいおい…独裁的すぎるだろ…』




「他に質問はあるか?…よし、無いみたいだし始めるぞ!!まずはアイク!!」




「はい!!」




アランの表情から察するに、俺は最後に指名されるだろう。


メインディッシュと言ったところか。




「試験官は私、ジェシカが担当いたしますわ!!」




『ジェシカ教授…!!懐かしいな。…っと、今は試合に集中しよう。』




「それでは両者武器を構えて…試合開始!!」




結論から言うと、アランが相手を瞬殺した。


オーラは纏っていないものの、それなりにTP消費をして“闘気操術“を行使しているようだ。




「次、サマト!!」




「は、はい!!」




「両者武器を構えて…試合開始!!」




それからクラスメイト達は次々アランに瞬殺されていった。


おそらく3分も持っていないだろう。




中には5分程苦戦した者もいたが、1撃も与えることはできなかった。


アランは無傷で、その上まだ息も切れていない。




瞬く間に30人以上の試験が終わり…


残るは俺、クレア、アイリス、イザベル、スーの5人だけだ。




「次は…イザベル!!」




「は、はいなのです!!」




「頑張れよ!!」




「ありがとうなのです!!」




両手棍棒を握りしめ、闘技場へ上がった。


深呼吸をすると、イザベルの周りに黄金のオーラが出始めた。




『…っ!!“闘気操術“を習得したのか!!』




イザベルを“鑑定“してみると、TPが6,000減少していた。


天使族故なのか、黄金のオーラはどこか神聖さを帯びていた。




「それでは両者武器を構えて…試合開始!!」




「やぁぁぁぁ!!!」




開始と同時に、イザベルが攻撃を仕掛けた。


アランはその場で防御の構えを取っている。




棍棒を右上に構え、棍棒Lv.4“ジェットブラント“を行使して素早く距離を詰めた。


そして、棍棒を右下に構え直して左上へ振り上げた。




『なっ…!!システムアシスト軌道じゃない…!?』




アランは一瞬焦った表情をしたが、両手剣Lv.1“スラッシュ“で相殺した。


…それも、システムアシスト軌道外の“スラッシュ“だった。




『なっ…!?アランまで…!?』




まさかこれまで習得しているとは思わなかった。


1度システムアシスト軌道に慣れると、それを変えるのはなかなか難しいはずなのだが…




そんなことを考えているうちに、戦闘は激化していた。


イザベルがソードスキルを放ち続け、アランがそれを防ぎ続けている構図だ。




どうやらイザベルは反撃をさせずに仕留める作戦のようだが、アランにはまだ余裕があるようだ。




「…そこだ!!」




イザベルが棍棒Lv.3“ブラントスクエア“を行使しようとした瞬間…


攻撃が勢いに乗る前に両手剣Lv.5“インパクト“でパリィし、イザベルの体勢を崩した。




そこへすかさず両手剣Lv.8“グランドハザード“を行使し、イザベルを仕留めた。




「試合終了ーー!!」




「ふぅ…なかなか手強かったな…」




俺がアランの立場だったら、何撃か食らっていたかもしれない。


それほどまでに、イザベルは強くなっていた。




魔道具の効果で闘技場から出されたイザベルは俺たちと反対側の、試験終了者の待機場所へ移動してしまった。


声をかけたかったが…仕方ない。




「次、スー!!」




「は〜い!!じゃあ行ってくるね〜」




「あ、ああ!!頑張れよ!!」




やはりスーは以前よりのんびりとした性格になった気がする。


試験に指名されたのに、全く緊張している様子がない。




『…態度に余裕がある敵って何かを隠し持ってそうで怖いんだよな。』




表情はのほほんとしているが、闘技場へ一歩ずつ近づく度に雰囲気がピリついている。


そして闘技場に上がると、スーは緑色のオーラを放った。




『…っ!!スーも“闘気操術“を習得したのか!!』




スーを“鑑定“してみると、TPが最大値か9,000減少していた。


アランもスーに対抗するように、“闘気操術“の消費TPを上げて赤いオーラを纏った。




「それでは両者武器を構えて…試合開始!!」




「いくよ〜!!」




体勢を低くして槍を構え、瞬時に距離を詰めると同時に槍Lv.3“ステラスピア“を行使した。


…それも、システムアシスト外軌道で。




『なっ…!!この技術まで…!?』




だが、スーもアランも表情に変化がない。


まるでこうなることを予期していたようだ。




「驚いたでしょう?」




「あ、ああ…」




「今では私たちの中でスーが1番強いんですよ。」




「オレも全然勝てねー!!」




「なっ…そうなのか!?」




旅に出る前からスーの並外れた動体視力や思考速度には一目置いていたが…


アシスト外軌道や“闘気操術“を身につけた今、さらに強くなったようだ。




お互いソードスキルを行使し、激しい攻防が繰り広げられた。


スーは息が切れ始めて決着を急いでいるが、アランはむしろその逆だった。




スーの攻撃を精密に相殺または回避し続け、攻撃を食らっても皮膚が少し斬れる程度で抑えている。


アランは最初から、スーのスタミナ切れを狙っていたのだろう。




『アランの作戦勝ちだな…』




「…今!!」




疲労で攻撃の軌道が僅かにずれたのをアランは見逃さなかった。


最小限の動きで回避し、“スラッシュ“でスーを仕留めた。




「試合終了ーー!!」




「はぁ…はぁ…ちょっと休憩させてくれ…」




アランに息を切らせるほど強くなっているとは…


皆相当強くなったようで、驚いた。




残りのアイリスとクレアの実力を見るのが楽しみだ。

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