第132話 冒険者学校 卒業試験 筆記

特に試験会場が設けられているわけではなく、俺たち5人は特待クラスの教室へ入った。


席は自由だったので、左右にクレアとアイリス、前後にスーとイザベルの構成で座った。




「お、おい。あいつ主席のアルフレッドだよな…?」




「帰ってきたのか…」




久しぶりに俺を見たクラスメイト達が、何やら俺のことを話しているようだ。


気にならないことはないのだが、今は試験が先だ。




『ふぅ…心を落ち着かせて…』




「アルフレッドといえば、入学早々先輩を血祭りにあげてたよな!」




「ああ!あれは爽快だったな!」




『…っ!?おいおい、そんなことするわけ…いや、そういえばそんなこともあったな。』




確かエレナ先輩を守るために決闘をした気がする。


ここを卒業し、今頃元気にしているのだろうか…?




『…っと、集中しないと。』




筆記用具を用意し、机上に置かれた注意事項を読んでいると教室にアランが入ってきた。




「よしお前ら、試験を始めるぞ!!まずは筆記試験だ!!」




試験時間は200分と非常に長い。


集中力や持続力も求められているのだろう。




実技試験と合わせて7割を超えていれば卒業できる。


目安は140点だが、最悪140点を取れなくても実技試験で何とかなるだろう。




「問題用紙と解答用紙は行き渡ったな…それじゃあ、試験開始!!」




1度深呼吸をしてから、問題用紙をめくった。




「大問1 魔物の討伐証明部位について、以下の問いに答えなさい。」




『ソフィアがくれた教材の分野だな。(1)は…おっ、昨日やったな。(2)は…これも昨日やった!!(3)も(4)も…!!』




全て記述解答だったが、一問一答のようにスラスラ解くことができた。


大問1は30問あったが、分からない問題は無く全て合っている自信がある。




「大問2 薬草について、以下の質問に答えなさい。」




『師範に教わった分野だな。これは楽勝だ!!』




途中に手書きイラストで薬草の見分け問題などもあったが、詳しく学んだ俺には何の問題もなかった。


大問2は20問あったが、こちらも大問1と同様全て合っている自信がある。




大問1、2の50問は60分で解くことができた。


残りの大問はあと4つ…


このペースを維持すれば、時間配分は大丈夫だろう。




それから大問3、4、5を100分かけて解いた。分からない問題がいくつかあったが、何とか合計80問全ての解答欄を埋めた。




予定より10分ほどかかってしまったが、5問あった記述問題は添削して完璧なものになった。


おそらく部分点ではなく満点が取れるだろう。




『流石に疲れたな…』




あと40分で大問は残り1つ…


見直しの時間も考えると、20分以内には解ききりたい。




「大問6 あなたは仲間4人と共に魔物と戦闘をしています。図1の場合において、パーティが取るべき行動を80字以上100字以内で記述しなさい。」




『相手は小型複数体で仲間の装備は大盾、両手剣、片手剣、弓、俺の得物が槍か。それなら…』




今まで師範とデュオで行動していた弊害で、明確な解答は思いつかなかった。


何とか疲れた頭を回転させ、97文字で記述した。




『ふぅ…残りは25分か。あとは見直しして終わりだな。』




見直しで大問1の解答欄が1つずつずれていたことに気付いた。


見直しをして本当によかった…




「…そこまで!!全員筆記用具を置け!!」




「ふぅ…」




「最後列のやつは解答用紙を集めてきてくれ。」




「アルフレッド、どうでしたか?」




「9割は取れたと思う。」




「流石ですね。私もそれくらいです。」




「クレアはどうだったんだ?」




「オ、オレは…多分7割いったぜ!!」




クレアの視線が泳いでいる。


それに、何やら変な汗をかいている。




『まさか…?いや、大丈夫だと信じよう。』




筆記試験は自信あるだと言っていたのだが…


やはり苦手はそう簡単に克服できるものではないらしい。




「あたしは時間ギリギリだったよ〜」




「ボ、ボクも…」




「確かに問題数多かったよな。」




「ほんとだよ〜」




「…よし、回収終わったぞ!!次は実技試験だから、着替えて闘技場に移動だ!!」




アランがとても笑顔なのだが…


おそらく試験はアランとの模擬戦で、生徒達の成長を確認するのが楽しみなのだろう。




『俺もアランと戦うのが楽しみだな…!!』




クレア達と別れ、男子更衣室で着替えて闘技場へ向かった。


更衣室では、クラスメイト達に恐れられているのか俺の周囲には人が寄り付かなかった。




『…まあ着替えやすいからいいけどな。』




友達を100人作るのではなく、100人分大切にできる友達を1人作る…


これが前世からのモットーで、俺にはクレア達がいるので全く問題はない。




「おっ、アルフレッドのその姿久しぶりだな!!」




「訓練服か。2年半ぶりに袖を通したからな。」




このトレーニング着は学校でサイズごとに貸し出している。


そのため、身長が数十cm伸びたが丈が小さくて着れないなんてことはない。




「クレア達も…っ!!」




「ん?急にどうしたんだ?」




「あっ、いや。なんでもない、」




このトレーニング着は動きやすさ重視で少し身体に密着しているため、膨らんだ胸がうっすら見えたからだ。


ありがたい光景だが、目のやり場に困る。




「…よし、全員集まったな!!それじゃあこれから実技試験を始める!!」

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