第131話 冒険者学校 卒業試験対策

『まだ10時なのか…一旦寮に帰ろう。』




少し遠回りして街をぶらつきつつ、寮に帰った。




「アルフレッド様、おかえりなさいませ。」




「ただいまソフィア。」




「卒業試験の対策は万全ですか?」




「ああ。大分強くなったからな!!」




「いえ…私が心配しているのは実技ではなく筆記の方です。」




「あっ…忘れてた…」




今までサバイバルや探索に役立つ知識は学んだが、冒険者としての知識を学びそびれていた。


師範はブルーノ帝国冒険者ギルドのギルドマスターなのだがな…




「アラン教授から筆記試験用の教材を預かっています。」




「助かる…!!」




「では私は隣の部屋にいますので、ごゆっくりどうぞ。」




「ありがとう。」




筆記試験用の教材は200ページ近くあり、各ページにぎっしりと文字が詰まっていた。


魔物の弱点や生息場所、討伐証明部位など様々だ。




『弱点と生息場所はサバイバルの時に教わったから軽くでいいか。問題は…討伐証明部位か。』




完全に暗記科目なので、時短は無理そうだ。


試験まであと2日、出来るだけ詰め込むしかない。




『ふぅ…始めるか!!』




ソフィアに身の回りの世話を頼み、ただひたすら椅子に座って勉強をした。


今までは何かしら行動しながら学んでいたので、座学は久しぶりだ。




『何だろう…椅子が落ち着かないな…』




2年半もサバイバルをし続けたせいだろう。


いつも木の幹に座っていたので、こんなに安定した椅子はどこかムズムズする。




最初は落ち着かなかったが、すぐ慣れて食事や入浴以外のほとんど全ての時間を暗記勉強に注ぎ込んだ。


娯楽がないため怠ける事はなく、我ながらなかなかの集中力だ。




“闘気操術“のTPを頭に集中させることで、若干記憶力が上がった気がする。


…その分疲労度も増したが。




「アルフレッド様、定時なので帰らせていただきます。」




「ああ。お疲れ様。」




俺もかなり疲れたので、軽く訓練して鈍った身体をほぐしつつ休憩した。




「おっ、アルフレッドも自主練か?」




「座学の休憩だ。クレアは実技の対策か?」




「ああ!!何とかアランを倒したいからな!!」




「そうだな…頑張れよ!!」




「アルフレッドは余裕そうだな?」




「余裕…ではないけど自信はあるな。それより、筆記試験の勉強を忘れてたからそっちの方が危ない。」




「オレは筆記に自信あるぜ?」




「おぉ…!!あれ、クレアは座学が苦手じゃなかったか?」




「オレも成長したからな!!」




確か定期考査のときに唸っていて、手を貸した覚えがある。


気のせいかもしれないが、クレアが少し賢くなったように見える。




「ところで…ばったり会ったことだし、軽く打ち合わないか?」




「おぉ!!オレもそうしたいと思ってたぞ!!」




お互い後ろへ下がって距離を取り、練習用の両手木剣を構えた。


ステータス差が2倍近くあるため、俺は“闘気操術“や“武器強化“は行使していない。




「じゃあ…来い!!」




「おらぁぁぁぁ!!」




雄叫びをあげると、一直線に斬りかかってきた。


入学式の後にやった模擬戦と全く同じだ。




『戦術は成長してないのか…?いや、そんなことはないはずだ。』




剣を前に構えて攻撃を防ごうとした。


すると、剣の軌道を上から右に変えて空いた胴を狙ってきた。




やはり戦術も成長しているようだ。


俺は鍛えた動体視力でその軌道を見て予測し、剣を右に構えて攻撃を防いだ。




「さすがアルフレッドだな!!」




「この程度か?」




「ふんっ!まだまだぁぁ!!」




鍔迫り合いになったところを、力でゴリ押ししてきた。


STR差でこのまま押し返すことはできるが、俺は切っ先を滑らせて攻撃をいなした。




「うわっ!!」




そしてクレアがバランスを崩したところへ後ろから斬りかかり、首の前で寸止めした。




「俺の勝ちだな。」




「くっ…オレの負けだ!!」




「戦い方が上手くなったな。アランに教わったのか?」




「いや、独学だ。全員がアランの戦術じゃつまらないからな!!」




「クレアらしいな…1つ指摘するとすれば、力でゴリ押ししようとしたところだな。」




「オレも失敗したと思った…付き合ってくれてありがとな!!」




「ああ。こちらこそ楽しかった。」




『さて…程よく身体もほぐれたことだし、暗記再開するか!!』




それからひたすら暗記と軽い訓練を繰り返し、ついに卒業試験の前夜を迎えた。




「アルフレッド様、進捗はどうですか?」




「大体覚えられたし、筆記もいけそうだ。」




「それは良かったです。」




「色々ありがとな。」




「どういたしまして。では私は定時なので帰らせていただきますね。」




「お疲れ様。」




「明日は頑張ってくださいね。」




「ああ!!」




『さて…見直し終わったら俺も寝るか。』




翌朝




いつも通り早朝訓練をして朝食を取り、寮を出た。


すると、寮の前にはクレア達4人が集まっていた。




「アルフレッド!!一緒に行こうぜ!!」




「ああ!!」




「アルフレッド、自信はありますか?」




「まあまあだな。アイリスはどうだ?」




「筆記は大丈夫ですが…実技が心配です。」




「ボ、ボクも実技が心配なのです…」




「あたしも〜」




「3人も強くなったみたいだし、最善を尽くせば大丈夫だと思うぞ。」




「そうですか…そうですね!」




お互い鼓舞しながら歩いていると、学校に着いた。




『さて…卒業試験頑張りますか!!』

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