第130話 βテスト調査報告
アランと別れた後、2年半ぶりに寮の夕食をとって眠りについた。
旅の途中はベッドで眠れることがほとんどなかったので、とても熟睡できた。
翌朝
早朝訓練を終えて朝食を取った後、俺は教会へ礼拝に行った。
そろそろβテスターとしての役割を果たすため、神様と話すためだ。
『お久しぶりです!!大きくなりましたね!!』
「はい。もう成人ですからね。」
『古代文明の素材は眠らせてくれているようですね。ありがとうございます!!』
「いえいえ。」
過去に発展した超科学文明の素材…
装備に使えば無双できること間違いなしなので、誘惑に負けそうだったが何とか堪えた。
「今日はβテスターとして調査報告に来ました。」
『助かります!!』
実は今まで、この世界のシステムで気になったことは全て紙にメモしておいたのだ。
“アイテムボックス“からメモを取り出し、神様に手渡した。
「お手元の紙をご覧ください。上から重要度の高い順番に書いてあります。」
『細かいところまでありがとうございます!!』
「いえいえ。まずHPとTPの増加率についてですが…100倍はしていいかと思います。」
『ひゃ、100倍ですか!?』
「はい。今はLvが1上がるごとに5しか上昇しませんよね?」
『は、はい。』
「Lv.10ソードスキルの消費TPは30,000…初期TPが300だとしても、単純計算でLv.5940が必要になります。」
『で、でもTP切れでも増加しますし、増幅薬もありますよ!?』
「TP切れの苦痛を我慢して1しか上がらなければ全員諦めますよ。それにTP増幅薬は流通してませんし、何より高価です。」
まあ俺は“状態異常無効“スキルの効果でTP切れの苦痛を感じないし、TP増幅薬は師範に無料でもらったが…
一般論なので俺が提案しても問題ないだろう。
『た、確かに…100倍する計算の方が合理的ですね!!アルフレッドさんのアイデアを採用します!!』
「えっ、そんな簡単に採用していいんですか!?」
『はい!!世界設定を変更するためには神力が必要ですが…私は信者が多いので十分にストックはあります!!』
「なるほど…」
『では、ほほいのほい!!』
謎の呪文(?)を唱えると、神様が輝いた。
だが、その派手な演出とは裏腹に特に何も変化がないようだ。
「…?」
『ふぅ…変更完了しました!!』
「えっ!?」
自信を“鑑定“してみると、本当にHPとTPが100倍になっていた。
…正確には俺の意見通り、今までのLv上昇で上がった数値が5→500、TP切れの上昇値が1→100に変更されたようだ。
「急に変更して大丈夫なんですか!?人々が疑問に思ったりは…?」
『大丈夫です!!最初からこうだったと違和感を感じないはずです!!』
「ならよかったです…」
『神力にはまだ余裕がありますよ!!』
神様のテンションが普段より大分高い気がする。
俺の調査報告でこの世界がより良くなるからだろうか?
「では、次にスキルについてです。」
『ステータスに反映しないプレイヤースキルが多い…例えばどんなのですか?』
「調合や解体、魔道具生成など色々です。」
『なるほど…確かに熟練度システムにしたら分かりやすいし効率が良さそうですね!!』
「ただ、問題があるんです。」
『なんですか?』
「探せば探すほど見つかるし、熟練システムの上昇率など細かいことを決める必要があるので、一気に変更するのは難しいんです…」
『確かに…では、詳細の決定は私がやっておきましょう!!』
「ありがとうございます。俺はプレイヤースキルを見つけ次第メモしますね。」
『はい!!』
「次に、ソードスキルについてです。」
『システムアシスト軌道を消してもいいかもしれない…どうしてですか?』
「俺は訓練でアシスト軌道に囚われないソードスキルを習得しましたが…ほとんどの人はアシスト軌道のままですよね?」
『はい。』
「対人戦で相手も自分もソードスキルの軌道を知っていたら対処が簡単なんです。なので、ソードスキルを使わない通常攻撃がメインになるんです。」
『確かにそれだと迫力がないですね…』
「ただ、アシスト軌道を消すとソードスキルにばかり頼って基礎がダメになると思うんです。だから修正するかどうかは神様に任せますね。」
『なるほど…1つ聞きたいんですが、対魔物戦でソードスキルは通用していますか?』
「はい。知性の高い魔物に学習されたら厳しいかもしれませんが…」
『そうですね…知る人ぞ知る戦い方ってことで修正はなしでいきましょう!!』
「分かりました。最後に、スキルLvの上限についてです。」
『Lv.10をMAXにせず、ソードスキルは習得できないものの11以降も作って欲しい…ですか。』
「スキルLvが上がると目に見える結果があるから、やる気が出るんですよ。」
『なるほど…修正しましょう!!ほほいのほい!!』
ステータスを見てみたが、Lv.11のソードスキルは見当たらなかった。
純粋に熟練度不足なのだろう。
「俺の報告は以上です。」
『お疲れ様でした!!何かユニークスキルの報酬を…』
「あっ、1つ欲しいものがあるんですけどいいですか?」
『内容によりますね。話してみてください!!』
「ステータスの偽装ができるスキルが欲しいです。鑑定の魔道具技術が発展して、ユニークスキルまで見られたら厄介ですから…」
『なるほど…強いスキルでもないですし、許可します!!』
神様が俺の方へ手をかざすと、ピロンッというシステム音がした。
ステータスを見てみると、ユニークスキル欄に“偽装“が追加されていた。
「ありがとうございます。」
『こちらこそ!!では、今後もよろしくお願いします!!』
そっと目を開けると、真っ白な部屋から教会に戻っていた。
何やら周りにいるシスターや神父がこちらを見ている。
『…?って、1時間近く経ってたのか!!』
神様の空間は時間の流れが遅いのだが…
だいぶ話し込んでしまったようだ。
それから俺は敬虔な信徒として聖職者達から一目置かれるようになった。
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