第95話 迷いの森サバイバル(南部) 狩猟

2日目




「ん…朝か…」




ヒカリゴケが発光し始めると共に目を覚ました。


ウルフ毛皮の寝袋はふかふかで暖かく、いつもと同じくらい熟睡できた。




『師範は…まだ寝てるか。よし、日課の早朝訓練しますか!!』




訓練を始めて数時間後




「ん…おはようなのじゃ…」




「おはようございます。」




「弟子よ、朝食の準備をするぞ。」




「ウェアウルフ亜種とジェノスタイガーの肉が余ってますけど…」




「木の実を食べるじゃ!!ほれ、ついてくるのじゃ!!」




「はい。」




結論から言うと、師範は本当に博識だった。


見るだけで食べられるかどうかを瞬時に判断し、俺の“鑑定“を行使するまでもなかった。




採取のついでに食べられる実や似た毒性植物との見分け方などを教わった。


覚えることは多いが、実体験に基づいているので覚えやすかった。




「…うむ、十分集まったから帰るのじゃ!!」




「はい!!」




元々ジェノスタイガーの縄張りだったおかげだろうか?


洞窟の周囲に魔物が近寄らず、エンカウントしなかった。




洞窟で朝食を取り、一休みした後




「…よし、そろそろ外に出るのじゃ!!」




「今日は何をするんですか?」




「罠を使った魔物狩猟の方法を教えるのじゃ!!」




「おぉ…!!」




ソロで大きな魔物や俊敏性のある魔物を討伐するには、罠は必要不可欠だ。


師範に言われた通り、植物のツタを集めつつ森の中央へ向かった。




『ワイヤートラップに利用するのか…?それにしては弱すぎる気がするが…』




「止まるのじゃ!!」




「っ⁉︎す、すみません!!」




俺がツタを取るため植物に触れようとすると、表情を厳しくして叱られた。


何かいけないことをしてしまっただろうか…?




「その魔物に触れてはいけないのじゃ。」




「魔物…?」




今触ろうとしていたツタの部分を“鑑定“してみた。


すると、“イヴィープラント”という魔物名が表示された。




「師範、この魔物は…?」




「ツタに触れた生物を絡みとって、毒針を刺して養分にする魔物じゃよ。…こんな感じじゃ。」




師範がツタに大きめの木の枝を落とすと、0.5秒くらいでバキバキという音と共に枝が折れた。




「うわ…結構エグいな…」




落ちた枝を見てみると、何十個も穴が空いており、プスプスと音を立てて溶けていた。




「ふむ…いいツタが手に入りそうじゃな。弟子よ、イヴィープラントを刈ってみるのじゃ!!」




「えぇ!?わ、分かりました…」




グレートバスタードソードの強度なら毒で溶かされないとは思うが…


心配だから一応遠距離で仕留めよう。




数歩下がり、イヴィープラントに向けて両手間Lv.9“ノヴァディザスター“を行使した。




「…っ⁉︎」




イヴィープラントが思わぬ行動に出た。




斬撃を飛ばしてツタを何本も斬り裂いたところまでは良かった。


しかし、自分を傷つける斬撃の発生源…つまり俺に向けてツタを伸ばしてきたのだ。




「うわっ!!危ねっ!!」




右へステップを踏んで回避すると、ツタが追いかけてきた。


そこへ両手剣Lv.5“サイクロン“を行使して広範囲を殲滅した。




「くっ!!」




だが、ツタの勢いは止まない。


延々と迫ってくるツタへソードスキルを行使し続けること数十分




「…よし、ツタ切れじゃの!!」




『ツタ切れって…んな弾切れみたいな…』




だが、やっと攻撃が止んだ。


師範曰く、ツタを再度生成するために仮死状態になっているらしい。




「イヴィープラントのツタは本体から切り離すと毒が抜けてただのツタになるのじゃ!!」




「へぇ…じゃあ切り取った分全部収納しておきますね。」




「うむ!!」




ツタを回収した後、さらに森の深部へと進んだ。




「止まるのじゃ。」




「はい。」




「これはBランク魔物ラッシュボアの足跡とフンじゃな。この近くに寝床があるはずじゃよ。」




「なるほど…」




冒険者学校で読んだ本では、イノシシの巨大化バージョンといった感じの魔物だった。


足跡が40cmほどあることから察するに、まあまあ大きい個体だろう。




足跡を追跡して寝床を探すこと数十分




他より少し大きい木の陰で、落ち葉が敷き詰められている場所を発見した。


そこにはラッシュボアの体毛が落ちていたので、寝床はここで間違いないだろう。




「…妾が説明するから、この獣道に罠を仕掛けるのじゃ。」




「はい。」




「まずはイヴィープラントのツタを…」




数分後




「これで完成なのじゃ!!」




「おぉ…!!」




予想通りツタを利用したワイヤートラップで、ラッシュボアの足に絡ませて転倒させる罠だ。




ラッシュボアの警戒すべき点は体重を利用した突進攻撃と発達したツノによる刺突攻撃だ。


この罠に引っ掛けることができれば、相手の長所を無効化して仕留めるだけでいい。




「ラッシュボアは真昼と真夜中に1度寝床に戻る習性があるからそろそろのはずじゃが…」




「師範!!噂をすれば獣道70m先からこちらへ歩いてきています!!」




「ふむ!!なら妾達は藪に隠れるのじゃ!!お主はラッシュボアが罠に掛かったら仕留めに行くのじゃ!!」




「はい!!」




大きな影が一歩また一歩とこちらに迫ってくる。


罠まであと10m…5m…今!!




「グオオオオオオオオオ!!!!」




罠に掛かって転倒し、まるで地鳴りのような鳴き声を上げた。


俺はそこへすかさず飛び出し、両手剣Lv.1”スラッシュ”で頭を落とした。




『こんなに簡単に仕留められるのか…!!』




ソロ冒険者として活動する際は可能な限り罠を使おうと、そう決意した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る