第96話 迷いの森サバイバル(南部) 試験開始
ラッシュボアを倒すと、ピロンッ!とシステム音が鳴った。
”獲得経験値10倍”のユニークスキルのおかげでウェアウルフ亜種戦でも大幅に上がり、今の戦闘でちょうどLv.100に達した。
「弟子よ!!妾は周りを警戒しておくから、ラッシュボアの解体を1人でやってみるのじゃ!!」
「分かりました!!」
前世は狩猟者ではなくただの社畜だったので、もちろんイノシシを解体したことはない。
だがウェアウルフ亜種を何十匹も解体したおかげで、コツは掴んだ…はずだ。
まずは血抜きをするために、切り落とした頭を下にして太い木の幹吊るした。
時間を置き、次に”アイテムボックス”から綺麗な水をかけながら血や泥を落とした。
綺麗になったところで、肛門辺りから首付近まで内臓を傷つけないようにナイフで切り開く。
そして皮を剥いで…
「…出来ました!!」
「うむ!!皮を剥ぐときに少し手間取っておったようじゃが…あとは慣れじゃの。合格じゃ!!」
「ありがとうございます!!」
体長5mほどあったので、かなり腕が疲れた。
前世の狩猟者たちは自分で仕留めて解体していたのだと思うと、その激労に敬意を表さずにはいられない。
「ラッシュボアの肉を使って昼食にするのじゃ!!調理は頼むのじゃよ?」
「分かりました!!」
昨日師範に教わった通り、乾燥した葉や枝を集め、火打石を剣で擦って火を起こした。
そして火から少し離れたところにボア肉を置き、塩と胡椒で味付けして時間をかけて焼いた。
「…うむ、なかなか上手く調理できているのじゃ。」
「ありがとうございます!!」
「冒険者に野営はつきものじゃからな。調理ができないと話にならないのじゃ。」
「はい!!」
ボア肉は濃厚な旨味があり、絶品だったが野生臭さを少し感じるのが玉に瑕だ。
調理時にハーブのような臭い消しを使えばもっとおいしくなるだろう。
『…クレア達にも食べさせてあげたいな。』
ふと、冒険者学校の皆のことが脳裏をよぎった。
まだ別れてから2日目だというのに…情けない限りだ。
「…弟子よ。サバイバルと言えば1度くらいは痛い目を見るべきだと思うのじゃが…」
「えぇ…痛い目を見なくて済むならそれに越したことはないんじゃ…?」
「甘いのじゃよ!!というわけでお主に試験を課すのじゃ!!」
「試験…?」
「うむ!!1週間生存しつつ迷いの森のどこかにいるキリングベアを1匹仕留めるのじゃ!!」
急すぎる…が、確かに昨日今日のサバイバルは難易度がぬるかった。
チュートリアルっぽいことも大体教わったし、そろそろ1人でサバイバルしてみるのも問題ないだろう。
「分かりました。」
「なら妾は帰るのじゃ!!1週間後の今頃に帰るから、生き残るのじゃぞ!!」
「えっ。あ、はい!!」
まさか今すぐに始まるとは思わなかった。
師範は吸血鬼の羽を出し、飛んで帰っていった。
『…よし、頑張るか!!』
ひとまず今日はキリングベアを倒す作戦を立てるため、拠点に帰った。
帰り道でウェアウルフ亜種数匹に出会ったが、焦らず正確に仕留めることができた。
『…まずキリングベアってどこに生息してるんだ?』
ラッシュボアが前世の猪と同じ習性を持っていたことから察するに、キリングベアも前世の熊と同じ習性を持っているだろう。
『…とはいえただの社畜には熊の習性なんて知らないぞ!?』
知っていることといえば、せいぜい川でサケを捕えて食べていたことぐらいだ。
『いや待てよ?確か…あっ、思い出した!!』
エリス先生に教わった本に、※キリングベアに遭遇した際、死んだふりをすると食料として洞窟に引きずり込まれる。との記述があった気がする。
『ということは…おそらくキリングベアの寝床は洞窟か!!』
そうと決まればあとは戦略を考えるだけだ。
ジェノスタイガーの時は失敗してしまったが、今度は成功したい。
熟考すること十数分
『…よし、これで行こう!!』
作戦はこうだ。
1.足跡やフンに“鑑定“を行使し、キリングベアの寝床となっている洞窟を探す
2.洞窟内で眠っている間に、入り口にイヴィープラントのツタでワイヤートラップを張る
3.洞窟の入り口で火を起こし、洞窟内に煙を充満させる
4.息苦しくて洞窟から出てきて、トラップに引っかかったところを仕留める
『完璧だな…!!』
まずは1の寝床探しだが…日の入りまであと4時間ほどしかないので急ごう。
ツタや装備の点検をしたあと、早速探索を始めた。
『そういえば…さっきラッシュボアを仕留めたあたりで水の音がした気がするな。』
この世界にも鮭の魔物がいるとすれば、キリングベアはそこで狩りをするはずだ。
“アイテムボックス“にある飲み物も無くなってきたので、ついでに水を補給しよう。
『…っ!!』
数十分かけてラッシュボアを仕留めた場所まで戻った。
すると、そこには解体時に地面に垂れた血に反応したウェアウルフ亜種が集まっていた。
『1、2、3…14匹くらいいるな。厄介だ…』
試験初日にして、問題に対面してしまった。
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