第20話 ごめんなさいが言えない人

あなたの周りには、ごめんなさいが言えない人はいますか?

相手に迷惑をかけた時、申し訳ないと思った時、謝罪の言葉はとても大切ですよね。

私の元いた会社には、ごめんなさいが言えない人が居ました。

わたしよりも年上の、怖くて厄介な人。

その人は皆から、あの人は面倒だ。あの人はちょっとおかしい。と言われていて、出来れば距離を置きたいという空気がありました。

最初は何故そんなふうに言われるのか理解出来ませんでしたが、私にとってはありえない出来事が何度も起こるのです。


その人は自分は絶対に正しくて何ひとつ間違っていない、問題があるのはお前たちだと言うような態度の人でした。

たとえ本当は自分の勘違いだったとしても、1度火がついて怒り狂うその人に何を言っても訳の分からない理屈で論破したつもりなのか、聞き入れませんでした。

私が正しい行動をしていたとしても気に入らないのか機嫌が悪かったのか、何であれ理不尽に怒鳴りつけて相手が完全降伏するまで納得しないのです。

もう勘弁してください。私が全て悪かったです。あなたは何も悪くありません。

そんな事を無理矢理に言わせて、何をどうしたいと言うのでしょうか?

お互い人間なのです。絶対にどちらが正しいなんて存在しないはずです。

だから人は議論を重ねて、そこに価値のあるものを見出すのですよね?

こんな一方的な決めつけは理不尽だと思いましたし、何よりトラウマになってしまったようです。

怒鳴られたのは決して1度ではありませんでした。

当時は反抗心もあり、正当な話し合いをしようと試みたこともありましたが全て無駄でした。


そして何よりその影響は、恐らくこれからの私の社会復帰のステップを大きく阻害するでしょう。

分かるのです。もう既に私はあの人にされた事で社会を怖がっている。

あんなに嫌な目に合うくらいなら働きたくないと思っている。そしてそう思う時に思い出すのはその上司のことです。

もちろん許せるはずなんてありません。

この先ずっとあの人に苦しめられるのも不愉快です。しかし忘れてあげる方が悔しいので、せめてずっとずっと根に持ち続けてやろうと思っています。


いつ傾くかも知らない、小さな会社という場。

あの場では確かに上司は殆ど無敵でしょう。

何て言ったって自分に不都合なことは全て怒鳴って解決し、正を誤にねじ曲げるのですから。

その実態を管理者ですら容認している。

この職場は歪み切っている。そう判断するに至った事柄でした。


可哀想な人だな、と皮肉を抱きました。

あの会社での正義は確かにあなたの手の上かもしれない。

ただしそれは社会全体に通用するものでは無い。

正しい判断や言動が出来ないのであれば、いつか痛い目を見るのは容易に想像できますよね。

そうなった時にはきっと、あの人はもう手遅れでしょう。いや、年齢を考慮した場合はもう既にと言ってもいいかもしれませんね。

せめて私が元いた会社で大きな顔をしていればいいと思います。

哀れにもその時が永遠に続くと信じて。

そして訪れた破滅に絶望してくれたら本望です。


今のあなたには、そこは大層居心地がいいでしょうね。

そっちの水は、甘いですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る