第15話 強制終了
先日、とある検査で病院に行かねばならなかった。
採血検査をしなければいけなかったので気が重く、当日は睡眠も浅かったようで外へ行く気分にはなれなかったが無理矢理体を起こして病院に行った。
予約して来院したのだが、結構待たされて疲れてしまったのかウトウトしていたら名前を呼ばれ
さあいよいよ採血、となった。
私は昔から血管が細くて見つかりにくいとどの病院でも何回も刺し直されたり手の甲から針を刺すという痛い目にあってきた。その日も手の甲に針を刺すことになった。
チクッとしますよ〜と声がして、まあまあな痛みが走る。うん、予想通り…よりも少し痛いかな。
力を抜くと管の中に血が一斉に飛び出した。
なかなか出ないな〜あんまりとれてないな〜とか思っていたら突然呼吸がしづらくなって酷いめまいのような感覚と、瞬きする度に視界が真っ暗に点滅した。
おっと、これはまずいのではないか?と思い
「あ、すみませんちょっと…気分が悪いかも」
と言った直後、私は意識を失い地面に倒れたらしい。
——真っ暗な闇の中、色んな声がする。
それは現実の音や声ではなくて、かつての思い出の中の声のような…幻聴のような。
誰かが何かを言っているのは分かるが、何て言ってるのかは分からない。それを聞いた私はいやに懐かしく感じた。思い出の断片なのだろうか。
というか私は今どこにいるのだろう、体の感覚が鈍くて…寝ている状態なのがかろうじて分かってきた。
あれ、なんで寝ているのだろう?病院は?
私、いつの間に帰ってきて寝ちゃったのかな…
重い瞼をうっすらと開けると、やたらと人がたくさんいた。すぐそばに居るのに遠くにいるような音量で周りの音が聞こえる。
「綾瀬さん!わかりますか!?」
看護師さんが何人もいる…
それにさっき診察してくれた先生も。
あれ…なんで…
ああ、そうか。倒れたんだ私。
「綾瀬さん!綾瀬仁菜さん!大丈夫ですか!?」
わあ…本当にこのセリフ言うんだ…
ドラマでしか見た事ないや、そんな能天気な考えが頭に浮かぶが、朧げに「はい、はい…」としか言葉が出ないし、変な汗で顔中がびちゃびちゃに濡れていたし体も頭も思い通りに動かせない。
「ダメだ、血圧測ってベッドに連れていこう」
その声を最後に私はまた意識を失った。
次に目を覚ました時もまだまだ状態は悪かった。
看護師さんの問いかけに答えるのがやっとだった。
5分か10分おきくらいに血圧を測られ、手元にはナースコール。顔中を覆っていた汗は丁寧に拭って貰ったようだ。
はあ…患者さんも多かったし忙しい時に迷惑かけてしまったな、後で謝らなきゃ。
少しずつまわるようになってきた頭。それ故に自分の体の異常もはっきり分かるようになってきて逆に辛い。まだぐるぐると定まらない視界に目を閉じ、回復するまで安静にしているようにと言われたので少しだけ眠る事にした。
その後段階的に回復した私は最後にもう一度血圧を測り、問題なかったので帰宅することになった。
お忙しいときにすみません、と残して会計を済ませ帰路に着く。
回復には1時間くらいかかっていたようで、家を出てからはかなり時間が過ぎていた。
倒れる時に頭を打ってなくてよかった。
それにしても意識を失うのは初めてでは無いにしても滅多にあることではない。
それも採血中に気分が悪くなることはあれど、失神は初めてだった。なかなか辛かった。
次からは採血検査は寝た状態でしてもらうことにしよう…
というちょっとした事件でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます