ゾンビ災害により壊滅寸前の街で、その原因を断つべく奮闘する、少年ふたりとその姉の物語。
ゾンビパニック映画をそのまま小説にしてしまったお話です。
あるいは、というか同時にというか、少年同士の友情物語でもある作品。
本当にどストレートなエンタメなので、肩肘張らずに気楽に楽しめるのがいいところ。
そこかしこに漂う〝それっぽさ〟、というか、ゾンビ映画の特徴でもある「B級らしさ」が最大の魅力。
冒頭一章を丸々事件の発端、漁師の家族が感染する場面に割いて、でもその漁師ら自体はただのモブに過ぎない(しかも読んでいる最中にそうわかる)、この感じ。
まさに他ではまず味わえない魅力。脳内で低予算映画っぽい絵面に変換されてゆく感覚には、独特の楽しさがありました。
個人的に一番好きだったのは、主人公である十三歳の少年ふたりの活躍。友情で結ばれた関係性と、あと彼らが頑張ったり堪えきれず泣いたりするところ。良い……。
徹底してエンタメ一辺倒を貫いた、とても気持ちのいい作品でした。