独白

※ややヤンデレの話です。直接的ではありませんが、性的な行為と近親相姦要素を含みます。

お題:遅い体 必須要素:外国語・外来語禁止 制限時間:4時間

(2013.8)

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「お兄様、私、もう二月も経つのに月の物が来ないのです」


愛しいお兄様の耳元にそっと、囀るようにそう告げた時の顔は忘れられません。


そうしたら、言うのが遅すぎる、何故直ぐ言わなかったんだ、ですって。

お兄様が動揺する様だなんて、何時以来の事かしら。


お前の体は、まだ月の物は来ていないのだと、そう言ったのは嘘だったのか、ですって。

お兄様が聞かないから言わなかっただけでしたのに。

最近はもう、そんなことも聞かずに安心しきって、愛して下さいましたね。沢山、愛して頂きました。


幼いころは運動音痴でどんなお友達と鬼ごっこしていても私はすぐに捕まった、足の遅い体。

其れを見て、鈍い奴、とお兄様は何時も私を笑っていましたね。一寸むくれてみせていたけれど、其れさえも嬉しかった。

お兄様が私を見ていて下さるのだと、小さい頃はそれが良く判って嬉しかったのです。

家に帰ればお兄様がお部屋でお勉強していて、幼い私の拙い話を優しく聞いていて下さる。その日常が本当に、本当に、幸せだったのです。


時間は経って、もうお庭で駆けっこをするような子供では無くなりました。

えぇ、子供では無くなりました、お兄様。

体がまず大きくなって、何時だったか婆やが喜んで年頃のお嬢様になったのですからと髪飾りをくれました。その日私は、もう自分は子供ではないのですと、女性なのですと言い張り始めたような気がします。

ですが、年の頃になって、同い年の学校のお友達には皆来たと言うのに、まだ来ない、まだ来ないと月経が来るのが遅かった体。お母様に何度も訊かれて、そう急かされた為か私の体はまた遅くなって。

確かその頃からだった気が致します。不安で夜も寝られないと泣いていた時に、お兄様は何度も添い寝してくださいましたね。


年頃の娘がはしたない、とお母様やお父様に知られたら事だからとこっそり、屋敷が寝静まった頃に訪ねて来てくださるのが、私の幸せで御座いました。

そっと頭を撫でて、大丈夫だと抱きしめて頂けたのが、どんなに私の心を軽くしたか。お兄様がいたからこそ、私は女としてまだ未完成だと言って毒を飲む事も無かったのだと思っております。


そしてあの日、新月で星が綺麗な夜だったと思います。私が年頃の娘であればお兄様も年頃の男の方でありましょう、と茶化しただけの積もりでしたのに。

ご自分の部屋にお戻りになる時に、嗚呼、戻れない所まで来てしまった、とお兄様は溜息をついておりましたね。そんな風に貴方を困らせるのも、酷く甘美に思えました。罪の味は甘くて危険だと、私はその日身も心も女に成りました。忘れられることなんて出来ない夜でした。

お兄様の事を思うともうどうしようもない程心臓が痛くなるように成ってしまった夜でした。


あの夜の後に、月の物が来たのです。お兄様、けれど私はお兄様の愛が欲しくて欲しくて堪らなかった。黙っていれば、貴方の子が授かるかもしれないと。醜い歪んだ欲求かもしれませんね、血の繋がったお兄様の子が欲しい、だなんて。


「添い寝」は次第にお兄様から所望するように成って行ったのも、嬉しかった。

他にいい人がいるならばそんな事はしませんでしょう?

嗚呼、お兄様には私しか居ないのだ、と。

私にはお兄様しか居ないのと同じだ、と。


私は、時期が来れば知らないお家にお嫁に行くことになりましょう。

その前に私は、貴方の物に成りたかった。

だから、だから。



月の物が来ない、遅れていると気付いた時の私の感情は、歓喜に他なりませんでした。


嗚呼お兄様、この私を愚かだと思われますか?醜いと思われますか?

私は例え勘当されてこのお家から追放されてしまったとしても、構いません。

お兄様の子を授かったのです、それは何よりも代えがたい、私の一番欲しい愛の形在る物です。

どんな目にあっても、今後どんな人生になろうとも、この子を産めるなら私はどうなったっていいのです。


勝手な事をしてごめんなさい、お兄様。

小さい頃に遅い体だなぁと貴方が優しく笑ったこの体は、貴方の子を宿した体へと変わりました。


嗚呼、嗚呼。

私はこの愛を抱いて死んでいくのです。

この愛のために少女の私は死ぬのです。


お腹をさすると、私の血潮が巡っているのが、もしかしたらお兄様から頂いた愛を育てているかもしれないと思うと、何とも言えず嬉しい気持ちになります。


愛しいお兄様。

お兄様に愛して頂けて、私はもう思い残すことは無いのです。

そして、お兄様のことだから、きっと綺麗なお方をお嫁に貰えると思うのです。どうやったって兄の元にお嫁に行くことなんて妹にはできないのですから、お兄様には、お兄様がお選びになった方と幸せなご家庭を築いて欲しい、と切に貴方様の妹は願っております。


貴方様の妹はもう、添い寝して頂かなくとも大丈夫です。

だいぶ兄離れの遅い妹だったと、貴方の体温が愛おしいと思うような異端な妹だったと、どう貴方様が感じるか分かりませんが、私は、もうお兄様から何も要りません。



私が諸々遅い体だったから、生まれてくるのが遅い子になるかもしれませんね。

どんな子だったとしても、貴方の子だから愛して愛して愛して、私の人生を投げ打って、育て上げましょう。



嗚呼、また、お腹に血潮が巡っている。

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