その26

酒匂王国連邦海軍 開発隊群 通常動力型試験潜水艦<伊400>


艦長・沢地大佐は、発令所の真ん中に置かれた折りたたみ式のパイプ椅子に座っていた。艦が揺れるたびにきしんだ音を立てる古い椅子。その椅子に座る沢地大佐は、腕を組み、目を閉じていたが、寝ているわけではなかった。

沢地大佐の隣では、副長・桝谷少佐が潜望鏡を覗きながら操艦にあたっていた。

「艦長、中洲の上流は水面が荒れています。流されないよう最大戦速でいっきにぬけます」

沢地大佐は、組んだ右腕を軽く挙げて、目を閉じたまま了解の意思を示した。

沢地大佐の了解を得た桝谷少佐は頷くと「各部へ、間もなく増速する」と伝えた。これを聞いた乗員は、手近なものにつかまるか、足を踏ん張るかして急激な増速に備えた。艦制御システムの調子が悪いときに速力を変更すると、どんなにゆっくり操作しても急激な速力変化になることが多い。機関長・森住中佐の頭痛の種は尽きなかった。

「最大戦速」

桝谷少佐の操艦命令に対する機関科員の反応は早かった。だが、艦制御システムは機関科員の操作に反応しなかった。艦制御システムは、3秒ほどしてようやく反応した。しかも急激に。

回転数を増したスクリューの羽根からは無数の気泡が発生し、この気泡が原因で発生した新たな騒音(キャビテーション・ノイズ)が<伊400>から発生した。




香貫公国海軍 第1太平洋艦隊 原子力攻撃型潜水艦 <ペトロザヴォーツク>(B-388)


「発令所、ソナー! 目標、急激に回転数を上げています。キャビテーションも出てきました。方位0-0-4」

「1番、2番、発射用意! 解析値を確認しろ!」やはり探知されたか。そう思う艦長・北堀中佐の声が発令所に響いた。

<伊400>が増速した理由を知らない北堀中佐にとって、キャビテーション・ノイズが発生するほど急激に増速した<伊400>は、回避行動を始めたとしか見えなかった。

「1番、2番、解析値確認」川は雑音が多く探知は困難だが、探知してしまえば行動が制約される川での目標解析は海ほど困難ではなかった。おかげで先ほどから解析値を更新してきた発射管制士官の答えは早かった。

「1番、2番、注水! 先に1番、30秒後に2番を発射する」北堀中佐の命令は、素早く発射管室に伝わった。

魚雷が装填された1番と2番の魚雷発射管が水で満たされ、発射管制員の手によって圧力の調整が行われた。「注水、調整完了」

「1番、2番、前部ドア開け」

「1番発射!」全長30センチメートルの<ペトロザヴォーツク>は、身震いして魚雷を吐き出した。

川に出た魚雷は自らのエンジンによって、順調に加速していった。魚雷の後ろには、有線誘導用のワイヤーが<ペトロザヴォーツク>とつながっていた。ただ、このワイヤーは切れやすいのが欠点だった。中洲の端にある水草にワイヤーが触れるだけで切れてしまう。

「ワイヤーが切れないように早めに中洲を抜けたほうがよさそうです」解析班によって作図された目標解析値を海図に写していた副長・古羽少佐が言った。

<伊400>との相対位置に気を取られていた北堀中佐は、ハッとして増速を命じた。「前進3分の2」そして古羽少佐に頷いた。

作図台の横に控えた航海科員は、1番発射と同時に手に持つストップ・ウォッチを発動させていた。「15秒……20秒……25秒」航海科員の報告が25秒を過ぎたところで、北堀中佐は2番魚雷の発射を命じた。「2番発射!」

<ペトロザヴォーツク>から放たれた2本のTEST-71ME魚雷が、<伊400>に向かっていった。




星川合衆国海軍 CSG3(第3空母打撃群)攻撃型原子力潜水艦<カメハメハ>(SSN-642)


「突発音、突発音! 発令所、魚雷の発射音! 川下からです。距離は……<伊400>に近い」チーフ(ソナー員長)からだった。

「<伊400>が撃ったのか?」艦長・村田中佐は、ソナー室に届くような大声で言った。

「方位が近いので確実ではありませんが、<伊400>ではありません」

「機関停止」村田中佐が命じた。<伊400>でなければ<そうりゅう>が撃ったのか?いずれにせよ距離は遠い。我々にとどく魚雷ではない。その点は心配ないが、いったい誰が誰に向かって撃ったのだ?

「新たな魚雷の発射音! 最初の魚雷の方位は徐々に左に移っています……待ってください、魚雷の発射を探知した方位から機械音を探知! シエラ2と呼称する」増速した<ペトロザヴォーツク>の機械音をチーフが探知した。

「どんな艦か識別できるか?」村田中佐は、ソナー室に入った。

「ええ、シグナルは弱いのですが、循環ポンプが2つ、1軸スクリューのようです。<伊400>の騒音が大きすぎます。この騒音を濾しとっていますが、これ以上はわかりません。ただ、この特徴は潜水艦、香貫のヴィクターⅢと一致します」チーフの額からは、汗が一筋流れた。目標までの鈴川はほぼ直線なので、<伊400>や<ペトロザヴォーツク>の発する音は直接伝わってくるのだが、川岸で反射してきた音も時間差を置いて伝わってくる。このため、ディスプレイに映る表示は不明瞭で、頼りはチーフの耳だけ。目標の判別は困難だった。

「チーフだから、これだけ早くわかったのだ。ところで、<伊400>の動きはどうだ?」

「先ほどから変化ありません」

魚雷を撃ったのがヴィクターⅢだとしたら、<伊400>に対して撃ったのだろう。だが、<伊400>は魚雷に気付いた様子はない。自らの騒音で探知できないのか? いずれにせよ、このままではまずい。昨日の敵は今日の友というが、酒匂とはまさにそんな関係だ。酒匂を味方だと考えるには抵抗もあるが、今は<伊400>に危険を知らせなければならない。それにヴィクターⅢも新たな敵の出現に戸惑うはずだ。村田中佐は、そう考えた。

「チーフ! ヤンキー・サーチを1回だけ打て」

「アイ! 艦長」チーフは出力ダイヤルを最大にすると、カバーを上げてボタンを押した。

<カメハメハ>の丸い艦首に装備されたBQQ-5ソナーは、一瞬の間をおいて鈴川の水を強打した。

「魚雷がお前を狙っているぞ! 気付け!」村田中佐は、そうつぶやいた。




酒匂王国連邦海軍 第6艦隊 通常動力型潜水艦<そうりゅう>(SS501)


「突発音! 注水音です。方位2-9-7。中洲の南側です」水測員長・矢島兵曹長の声が発令所に響いた。

「なに! 面舵いっぱい!」艦長・高原中佐は、そう命ずるとTDS(潜水艦戦術状況表示装置)の前に立った。

<そうりゅう>には、様々な新技術が装備されているが、なかでも高原中佐が画期的だと思ったのがTDSだった。TDSには敵艦との対勢、海図、センサー情報など艦長の意思決定に必要な情報が表示される。これまでのように対勢作図盤と海図台を行ったり来たりしながら必要な報告を求める必要がなくなったのである。

ただ、複雑で状況が目まぐるしく変わるソナー情報だけは、水測員の口頭による報告が必要だった。それだけは<そうりゅう>でも変わっていない。

「魚雷の航走音! まって下さい。遠ざかります。こいつは<伊400>を狙っています」

<カメハメハ>が先回りして攻撃したのか? それとも香貫の待ち伏せか? そんなことはどうでもよい。攻撃してきたからには識別に時間をかける必要などない。元の進路に戻してこちらも攻撃だ。「もどせ! 取り舵いっぱい! 員長、距離は?」

「90ヤード! 正確ではありません」

「かまわん! とっさ攻撃! 1番、2番、いや、1番、3番発射管用意! 準備できしだい発射!」高原中佐の命令は、直ちに実行された。

「注水完了、前扉開いた。1番、3番発射する! テーッ」

<そうりゅう>の右舷にある魚雷発射管2本から、89式魚雷が連続して発射された。

「1番、3番、航走異常なし」2本の魚雷は中洲の下流端をすぎると右に進路を変更した。

「艦長、目標、わずかに増速しています。スクリュー音探知……4枚ブレード……ヴィクターⅢ、香貫です。」

「くそっ! 香貫の待ち伏せだったか」副長・新井少佐は自分の足を叩いた。

「上流から探信音、BQQ-5ソナー、星川のものです。音圧レベル低い。反響音からすると距離は700ヤード前後です」

<カメハメハ>が発した探信音か。状況は複雑になったが、少なくとも彼我の態勢は概ね判明した。だが、<伊400>の危機が去ったわけではない。<伊400>を助けることが最優先だ。「魚雷を高速に切り替えよ」高原中佐は、そう命じた。

<伊400>もヴィクターⅢも魚雷に気付いた様子はない。<伊400>から発せられる騒音にマスクされて、両方の潜水艦とも迫り来る魚雷を探知できないのだろう。しかも魚雷は後方から接近してくる。両方の潜水艦とも命中する直前まで魚雷を探知できない可能性だってある。

「沢地さん、何をしている! 早く動け!」高原中佐は心の中で叫んだ。




酒匂王国連邦海軍 開発隊群 通常動力型試験潜水艦<伊400>


巨大な潜水艦にしては、こぢんまりとした発令所の左舷に、2台のソナー管制卓が設置されていた。ただ、有り合せの器材を寄せ集めて作られたシステム・プログラム試験用の管制卓は、極めて操作性が悪かった。それでもベテランの水測員は、見事に使いこなしていた。

左の管制卓に座る水測員は「艦長、上流から低周波ソナーの発信音」と、報告すると探知したデータをライブラリと照合するために、左を向いてラップトップ・コンピュータのキーボードを叩いた。

「当たり」左の水測員は、耳で聞いたソナーの発信音が星川のBQQ-5ソナーだと見当をつけていたが、ライブラリも同じ解析結果を出力してきた。「艦長、ソナーの発信源、BQQ-5、<カメハメハ>が装備するソナーと同一です」

「<カメハメハ>だとしても、意図がわからんな」副長・桝谷少佐がつぶやいた。

すると、目を閉じてパイプ椅子に座っていた艦長・沢地大佐が突然立ち上がり命じた。「ディーゼル止め! 下舵10度。急げ!」

機関科員は直ちに2基のディーゼルエンジンを停止し、操舵員は舵を下げた。

「水深キール下70センチ、水流の乱れを考慮すると、水深50センチで前後水平にします。<カメハメハ>の攻撃ですか?」操艦を担当していた桝谷少佐は、突然に発せられた沢地大佐の命令の理由がわからなかった。

「<カメハメハ>ではない。何者かが我々を狙っている」

鈴川を満たしていた古いディーゼルエンジンの爆音が消えた。そして、その爆音の残響も少しずつ消えてくると、これまで隠れていた様々な音が聞こえてきた。それを示すように、ソナー管制卓のディスプレイには幾筋もの線が下りてきた。そこには<伊400>にとって危険な音が紛れていた。

「魚雷! 方位1-7-1度」水測員の報告は驚くほど冷静だった。

「下げ舵いっぱい」沢地大佐は、土砂とゴミが堆積したデコボコの川底に身を潜めるよう<伊400>を導いた。




香貫公国海軍 第1太平洋艦隊 原子力攻撃型潜水艦 <ペトロザヴォーツク>(B-388)


爆音に隠れていた音は<ペトロザヴォーツク>のソナー員にも聞こえだした。だが、真後ろから迫りくる魚雷の航走音を<ペトロザヴォーツク>のソナーはとらえられなかった。それを知るすべのない艦長・北堀中佐の関心は、<伊400>に向けて発射した2本の魚雷に向けられていた。「魚雷と目標までの距離は?」

「210センチ。俯角が徐々に下がります。回転数も落ちています。目標は減速、降下しています」と、ソナー員が報告した。

「まずいな。川底に鎮座されたら魚雷が追尾できません」副長・古羽少佐は、川底による反響音の影響で魚雷のソナーが目標を追尾できなくなることを心配して言った。そこに<伊400>が入り込めば、魚雷は目標と川底の見分けがつかなくなる。

ソナー室では、ソナー員がヘッドフォンに手を当ててディスプレイを見つめていた。「これは何だ?」左の川岸から高速スクリュー音がとぎれとぎれに聞こえてきた。川岸からの反射波が艦首ソナーに届いたものだ。魚雷が後方の死角からやってくる。「後方から魚雷! 探知は左川岸からの反射波! 方位、距離不明」

「右舵いっぱい! 前進全速」北堀中佐は条件反射のように反応した。そして続けた「ノイズメーカー発射! ソナー、魚雷の方位・距離わかったら知らせろ!」

<ペトロザヴォーツク>は、急回頭によって生じた泡の塊を後ろに残して増速していった。

急回頭の影響はそれだけでなく、2本のTEST-71ME魚雷を誘導していたワイヤーも切断させた。

誘導ワイヤーが切れて信号が途切れた2本の魚雷は、事前に設定されたとおり探信音を発し始めた。魚雷は、自らの意思で<伊400>に向かっていった。




酒匂王国連邦海軍 開発隊群 通常動力型試験潜水艦<伊400>


「ヴィクターⅢ、回転数上げています。方位も変わる。魚雷は……探信をはじめた。方位1-7-1度。距離1.8ヤード。まっすぐ近づいてきます」

艦長・沢地大佐は水測員の報告に頷いた。<そうりゅう>がヴィクターⅢに魚雷を放ったに違いない。<そうりゅう>の魚雷をかわすために急激な回頭をしたことで自分が放った魚雷の誘導ワイヤーが切れた。それで探信をはじめた。そういったところだろう。おかげで更なる被攻撃の可能性は減少した。迫り来る魚雷の対処を間違えなければ預かり物を無事に届けられるだろう。「先に来る魚雷を連続測距」沢地大佐は、そう命じた。

「1.6……1.5……1.4」水測員は接近する魚雷との距離を連続して報告した。

魚雷が接近するにしたがい船体を叩く魚雷の探信音が<伊400>の艦内に響き始めた。一部の乗員は上を向いたり後ろを振り返ったりして見えぬ魚雷を探したが、ほとんどの乗員は手近かの物につかまり爆発の衝撃に備えた。

「0.5……0.4……」

「両舷停止、後進いっぱい! 下げ舵10度! 急げ!」沢地大佐は、潜望鏡の横で命じた。

最初のTEST-71ME魚雷は、<伊400>に当たって戻ってくる探信音を基に<伊400>の未来位置を計算して、その方向に向かうモードで自らを誘導していた。このモードの場合、お互いが針路と速力を変えなければ、魚雷は<伊400>の中央部分で衝突する。だが、<伊400>は減速を始めた。もちろん魚雷の頭脳は<伊400>の急減速を認識して針路を変えようとした。だが全長2センチメートル弱の魚雷は、乱れる水流によってなかなか向きが変わらない。向きを変えようとあえぐ魚雷と<伊400>の距離は急速に縮まった。

「魚雷方位変わる。1-6-9度。距離0.2」

「発射管室、後部に退避!」沢地大佐は叫んだ。

最初の魚雷は、左舷の前部潜舵直上で爆発した。

爆発の衝撃波は、前部潜舵から前方の外殻を引きちぎった。衝撃波はなおも突き進み、魚雷発射管室を覆う内殻の弱い部分、魚雷発射管が内殻を貫く部分を容赦なく破壊した。その時点で衝撃波は弱まったが、それでもほとんどの乗員を弾き飛ばし、配電盤をショートさせて艦内を漆黒の闇に変えた。

沢地大佐は爆発に備えて海図台をしっかりと握っていたが、衝撃の威力にはかなわず発令所の床に投げ出された。すぐに起き上がろうとしたが、暗闇で平衡感覚を奪われ再び床に転がった。なんとか海図台につかまりながら立ち上がると「発射管室浸水!」との報告が艦首側から響いてきた。

すかさず応急長が、衝撃でふらふらする頭を振りながら常時身に着けている懐中電灯を点灯させて前方に駆けていった。

この程度の爆発なら、この艦は持ちこたえる。だが、2発目を食らったらどうなるかわからない。沢地大佐はそう考えた。「2発目はどこだ? わかるか? 水測」

電源を喪失してソナーが使えない水測員は、発令所の内殻に耳をつけ外の音を聞いた。「魚雷右舷を遠ざかる。いぜん探信音を発しています」と、報告した。

沢地大佐は「了解」と答えた。よし、魚雷は間もなく着底する我々を見つけられん。魚雷が円周捜索しても、あと10分で燃料が切れるはずだ。それを待ってから浮上する。

沢地大佐がそこまで考えていると航海科員が懐中電灯を持ってきた。沢地大佐は航海科員から懐中電灯を受け取ると、バルブが並ぶ区画に光を当てて破損状況を確認しようとした。するとバルブの前で必死に立ち上がろうとする潜航指揮官が映った。「どうした。潜航指揮官」

「立てんのです」と、潜航指揮官は答えた。

沢地大佐は潜航指揮官に光を当ててよく見ると、左の足首が不自然だった。爆発の衝撃で足首が骨折し、つま先が180度後ろに向いていた。これでは立てない。

「潜航指揮官、足首を骨折している。衛生員が来るまで無理をするな」沢地大佐がそう言い終わらないうちに、掌帆長が「副長、副長、だいじょうぶですか」と叫んだ。

沢地大佐が掌帆長の声がした方向に懐中電灯を向けると、副長・桝谷少佐が頭から血を流して倒れていた。

「掌帆長、動かすな。損傷が広がる可能性がある。衛生員に任せよう」

「了解しました」といって掌帆長が立ち上がると同時に非常用電源が復旧した。赤い非常灯が艦内を赤く染めた。

「私は発射管室の浸水状況を確認してきます」立ち上がった掌帆長は右腕を押さえていた。

「掌帆長、きみも負傷したのか」沢地大佐は右腕を見て言った。

「骨折したようです」

「手当てしてからにしろ」

「そうもいきません。発令所で手が空いているのは私だけです。艦長に状況を報告してからでも遅くはありません」

「わかった。行って来い」沢地大佐の承諾を得た掌帆長は、発令所を後にした。

艦の前方からは、発射管室の後方区画にまで浸水する水を止めようと指示を出す応急長の怒鳴り声が響き、角材を前方に運ぶ兵員が慌しく発令所を横切っていった。

「艦長、主電源は10分で復旧します。あと、艦制御システムは再起動しました。あと1、2分で使えるようになります」発令所にやってきた機関長・森住中佐は、そう報告して前方をチラリと見た。「浸水は応急長に任せておけば問題ないでしょう。それよりも内殻の接合部分に亀裂がないかが心配です。思わぬ場所に亀裂が走っている可能性があるので、今から特別チームを作って点検にかかります」

<伊400>を輪切りにしてその断面を見ると、内殻は二つのパイプをつなぎ合わせたような形状をしている。ダルマを横にしたような形状である。この二つのパイプをつなぎ合わせる溶接部分は構造上応力がかかりやすい。もちろん設計者はそのことを認識していたため、十分な対策を施しているのだが、それでも森住中佐は心配だった。

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