2話 質素な一人暮らしからのスタート
新米冒険者は用意された居住空間にて転生を完了とし目覚めることになります。居住空間に不満があるとしても程度は一律なために原則として不足の事態がなければ無償での引っ越しはできない決まりとなります。さらにこれからは近隣の同じ冒険者とも交流をしていき社会性をさらに学び協調性も養うのも大事なことでもありました。そんなこともあり完璧な空間にならないようわざわざ居住環境のグレードを落とした住まいから新米冒険者はスタートを始めることになり、そこに早くも嫌気がさしたなら活動を頑張り報酬を得てサヨナラとするのが当たり前な新米冒険者の目標となるのでした。そうしてカズも1LKで質素な浴槽つきのバスルームとトイレが同室ながらある間取りのプラットフォーム冒険者限定最底辺のアパートの一室から冒険者生活がスタートするのでした。
ベッドから起きたカズは部屋がとりあえず整理されており、あたかも自分で寝床を作って眠っていたようにベッドから起きたのでした。そうしてリビングは一人暮らしにしてはそこそこ広い空間なものの、これはダイニングにできるような空間がないからでもあり、さらに寝室でもあるからでした。収納スペースはあるもののあとの空間はキッチンとバスルームだとすぐに判別でき、なんとも見習い時代からは想像できないくらいの手狭でかくれんぼうの鬼が困らない住居でもありました。しかしこれからの冒険者生活を考えると今はこれでも十分な設備でもあり、加えて通常の異世界人とは賃金の稼ぎも違えば、それを消費する時のレートも違うために荒稼ぎしてしまえばすぐにでも贅沢な一人暮らしは可能であると、予備知識としてカズにもあらかじめ知らされていたことでした。
「ふぅ・・・まずは仕事案内所に行くか」
無事転生した安堵のため息と同時に独り言を呟いて隣に居たはずのアズキの返答がないことを実感してしまう。つい先程まで言葉も交わすことさえ忘れるくらいに愛しさを温もりで伝えるように触れ合っていた二人でしたが、カズは目新しいベッドを寂しそうに撫でてしばしのアズキとの別れを心細くもなっていました。そうしてアズキと落ち合うためにも冒険者などのマッチングを管理してもいる神の遣いが派遣されている仕事の案内所に向かい、そこで自分の身体に内臓されたデバイスの調整をしてもらうことにするのでした。
魂の情報に干渉するためには必要な人材や施設があり、冒険者に与えられた便利機能などを付与する概念であるデバイスを調整できるのは神もしくは神の遣いであり、原則としてプラットフォームの移動が楽な公共の施設と異世界での安全な大都市での同じ機能を有する施設に限りました。もしくは冒険者が死亡すると死に戻りまでの期間に神が直接干渉をしてくれます。カズは冒険者同士で条件さえ整えばメッセージを送りあえる機能を利用してアズキと場所と時間を伝えて落ち合うつもりでいたのでした。
この異世界では大部分の世界において通信手段が制限されており、冒険者に与えられたメッセージ機能もプラットフォーム内で規制にならないと判断されたメッセージならリアルタイムで指定した相手にメッセージを送れるのですが、異世界に転移すると試練の攻略に便利な使用ができてしまうために原則として使用が不可となります。このように異世界に転移すると不便になるチカラも沢山あり、基本的に神が無償で与えたチカラには制限がかけられてしまうのでした。しかしこの通信手段さえあれば広大なプラットフォームの世界でも簡単に落ち合うことができ、またギルド内でのやり取りなどにも使用して緊急性がある情報の通達がスムーズにもなるのでした。ただこの機能を使うにしても条件があり、冒険者は必ず対面で接触してデバイスを干渉しあって互いにメッセージを受信し合う合意をした者としかメッセージのやり取りはできなく、それ以外の方法は神の遣いに頼みマッチングをしてもらうしかないのでした。そのためカズはこの広大なプラットフォームでアズキを探すためにマッチングを利用してアズキにアプローチをして、アズキも同じくマッチングを利用してくれれば遠距離ながらもデバイスが反応してくれてメッセージが送れるようになる手筈となっていたのでした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(これであとはアズキからのアプローチがあれば・・・)
冒険者に必須となる能力や情報などを提供してくれる公共性が高い施設には転移の魔法が付与された設備から直接施設に出入りすることができます。このように転移装置となる設備はプラットフォームにならそこらじゅうにあり、ギルドが大部分を管轄している街並みにも神が特別に配置してくれて移動に時間を費やすことはまずない仕組みとなっていました。さらに公共の施設なら神の遣いが大半に勤務してくれて、人流によって人手不足にならないように神の遣いが十分に派遣されているのでした。これは神の遣いに基本的には給与を支払う必要性がまずない神が創造した世界の仕組みなために、余裕をもった人材と設備投資ができる理由でもありました。つまり神自体は資本を得る必要性がないので、そこからも面白い金の回り方を異世界はしているのが後々冒険者は知ってゆくことになるのでした。
そうしてカズは初期段階だと閉鎖的に設定されていた受諾設定をフリーにしてもらい、無事にアズキにマッチングするように施設で申し込みあとはアズキが同じことをしてくれれば、アズキがマッチングを打診する前にカズのアプローチが向かってくれるはずでした。そんな胸が高まりだした矢先にカズが聞き覚えがある声が届いてきてしまい、これは再会を喜ぶべきか空気を読んでくれと無視して立ち去るか迷うことになるのでした。
「おーい、カズだろう? ほら、やっぱりカズだったよ」
「チッ・・・逃げる間もなかったか・・・」
カズはアズキと再会しやすいために仕事案内所から場所を変えずに転移装置の付近で待機していました。ここでならアズキもすぐに駆けつけてくれるしカズが向かうこともできる。そうしていると無数にあるはずの施設を奇跡的に同じくした仲間が恥ずかしげもなく手を振って自分の存在を遠くからアピールするようにカズに近づいて来たのでした。
「この広大なプラットフォームでいきなり再会できるなんて夢みたいだ! ボクたちは運命で繋がっているんだよ。これはもうパートナーをボクに選ぶしかないよね」
「空気読めよ。百回ほど死に戻りしてコイ。キモチワルイからくたばれクソが」
「荒れてるなぁ・・・ボクがアズキに何かやらかしたの?」
「なんでハジメなんだよ・・・」
初めて出会う仲間はアズキであることを密かに想って楽しみにしていたカズはハジメとの意図しない奇跡的な再会に喜びよりも先に落胆してしまうのでした。別段ハジメに会いたくなかったわけでもなければ、ハジメは旅の同伴者なのでアズキの次に接触をしようとしていた相手なので手間は省けたことにもなりました。しかし物語りのような再会を期待していたわけではないが、アズキと真っ先に会い二人の絆を再確認してからのスタートにしたかったカズは、ハジメとのマッチングはまだ打診しておらずにアズキとの恋人の時間を優先してしまったのでした。ただそんな密かな計画を神の悪戯でカズとハジメは同じ地区に転生して、最も近い施設を利用した結果に二人は計画もなく再会してしまったのでした。
「なるほどね。アズキでなくてごめんよ」
「いいよ。オレこそわるい、大人げなかったよ」
「あはは、こう世界の広さを知ってしまうと不安にもなるよね。ボクもカズに会うまでは心細かったよ」
「うん、早速だけどマッチングしようか」
「オッケー、これでいつでも呼び合えるね」
ハジメも二人の絆を知っているためにカズがこの後アズキに会って二人きりでの時間を過ごしたいことを理解してあげました。そのため暴言も水に流してくれて、立ち去る前に二人はメッセージを交換できるようにデバイスを干渉させるのでした。これでカズがアズキを解放するはずの明日以降からは本格的な準備をするために三人で行動をすることになる。そのためのメッセージ交換ができるようになってくれた二人は、せっかくだからとハジメもアズキと再会することになり男二人で話しながら時間を潰してアズキを待つことにするのでした。
――
――
――
「アズキからの反応は遅いなぁ」
「女の子はいろいろと時間がかかるんだよ」
「経験者は語るか。アズキとはこれからどうするの?」
「お? 噂をすればアズキからだ」
アズキにマッチングを打診しても応答がなく時間が過ぎていくだけでした。転生のタイミングが同じ時間なのかも分からず、さらにアズキの現在の状況も分からないので応答がないのも理由がわからないことでした。ただ使用方法が分からないような難しい機能を授かったわけでもないので、マッチング自体を受信できるようにすれば必ず即時許可はしてくれるはずでした。つまりアズキはまだ施設を利用していない段階であり、カズよりも行動に遅れが出ていることだけは察することができたのでした。そうして女性だから気軽に出歩けない理由でもあったのか、プラットフォームでも慎重に動いていたのか、アズキは男友達での会話の最中にマッチングを許可してくれて、カズは会話を一時中断してアズキとのメッセージをするのでした。そこで別地区に転生していたアズキが二人の地区まで転移してくれることをメッセージで約束してカズはその場でハジメと待機することになりました。なので二人は中断した会話から話を続けることにするのでした。
「しばらくはそれぞれの部屋を行き来する間柄かな。一緒に住むにも手狭だし、愛の契りを得ていない今はかえって不都合ばかりだから別居するしかないよな」
「だろうね。でもいいな、恋人がいてさ。この冒険者生活にも癒しがないとやってらんないよ」
「月詠とのその後は?」
「あの娘は掴み所に困るんだよね。一応再会する約束はしているけど、ただ会って挨拶するだけだよ?」
「あんなにハジメにアプローチしてくれた女性だったのに可哀想に」
ハジメの世話係であったハウスメイドの月詠はハジメとの契約は断たれてしまい、またオトナの店で集中的に働くようになっていました。月詠はハジメをチェリーボーイとして可愛がってもいて、まるで特別な感情があるように誘惑してくる人間味のある神の遣いでもありました。そんな月詠はハジメにいずれは客として自分を指名しに来て欲しいと願いながらも、抱かれる以外にも再会して仕事を抜きに語り合いたいと約束もしてハジメと別れており、ただ人気の月詠には面会するにも一苦労があるようで、それを解消できる品をハジメは不正ギリギリのルートにて月詠の手引きで見習い時代最後の月詠との別れの時間に託されており、ハジメは月詠と再会することも計画していたのでした。そうは言ってもハジメは月詠とのラブロマンスは望んでいなく、確かに月詠は魅力的な女性にもなれるのでしょうがハジメは弄ばれる恋愛人生は御免だと月詠とはないものとしてきっぱりと拒絶している。ただオトナの店には興味はあるので月詠との縁はまだ切れなくもあり、好奇心によっては月詠を指名する日もあるかもとハジメは胸が高鳴ってもいたのでした。
「だからボクの前だけは男の娘だったんだよ!」
「それもまた・・・ん?」
「カズ?」
「アズキが近くに居るのを感じる」
「おお、探知魔法も完成したのかい?」
「いや、感覚的に・・・オレとアズキは魂で深く繋がった関係だからかな」
カズはパートナー契約をするまでもなくアズキとは特別な血を分けた絆を得ていて、彼女が近くに居れば血が騒ぎ出すように感覚でアズキの存在を感じてしまうくらい魂が深く繋がっている関係となっていました。それがどうこの先の冒険者生活で役立つのかも育つのかも分かりませんが、アズキが生きている証にはなるのでカズは無事が確認できたようにホッと胸を撫で下ろして顔が緩んでしまいました。そんなカズを横目に見たハジメは本当に二人は運命の絆で結ばれた愛し合う二人なんだなと友人なりに微笑ましく再会を祝ってあげることを約束するのでした。
「吸血鬼のパートナーだからか・・・運命の人と早くも会えたのも羨ましいよ」
「オレたちの旅はハジメのパートナー探しの旅にもしよう」
「よし、現地妻をいっぱい作るぞ!」
「浮気で刺されて死ねや」
「あはは、冗談だよ」
冗談を交えながら旅ができるくらいが今の三人の新米冒険者には丁度いい腕試しなのかもしれない。そんなことを考えていた二人の元に華奢な少女が愛する人に再会するとあってわざわざ粧し込んできてくれて、可愛い愛らしいアズキが身だしなみを注意しながらも駆け足でカズの元に近づいてきてくれました。それに気がついたカズも刹那の時間は待機できましたが、辛抱できずにカズからも歩みだして二人はすぐにでも触れ合って愛を確かめて再会を祝おうと距離をゼロ距離としたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます