1話 プロローグ

 最終試験を合格し選定の儀式を終えた冒険者見習いはそれぞれの見習い時代に得てきた成果などを持ち、プラットフォームに転生しての一からの冒険者生活が始まるのでした。彼らは一度神から得ていた加護などが消失しているので、中にはすでに転生前から加護と初期報酬を交換して加護を取得している者もいるのでしたが、新米のスタートラインで強力な加護を複数所持出来る者は報酬が足らずにいない。戦地を覚悟する者なら痛覚遮断の加護を真っ先に取得してその他アイテムの購入にあてるのが基本となり、余裕があれば弱点を補えたり、私生活や冒険問わず便利となるが限定的で交換条件が緩く取得しやすいような加護を揃えるのが無難な選択となりました。あとは間接的に自分への投資にもなる他者の雇用などにも使えて、見習い時代には無償提供してくれた使用人を雇用したり、旅の同行者を募ったりと報酬は冒険者の資金力とそう代わりない代物となっています。もちろんこれは時間経過で増減するものではないために、転生前から計画を立てて準備を整えてスタートと同時に走り出すこともできれば、プラットフォームに転生してから入念に計画を立てるために報酬を貯蓄しておくことも一つの戦略でした。


 冒険者には寿命が約一ヶ月しか与えられていないのですが、そう焦らずとも冒険者を寿命で死なせないようなサポートは充実もしているために転生してからの数日間を様子見にまわろうとも遅くはない選択でもあります。そうしてカズは基本方針はアズキとの共通である愛の契りの解放のために奮闘することでしたが、命を削ってまで報酬を得ていくのかはまだ新米段階なために判断がつかなく、しばらくはアズキと共に冒険者生活に慣れるために優しい仕事をしていくつもりで転生の準備をしていました。カズは事前の報酬を沢山得ていましたがそれはアズキとの思い入れのある品と、今後の護身用にもなる一部のチカラを封じてくれる神特注の呪具だけを報酬と交換して転生していました。まだ激しい戦闘をするのかも決断できていないので加護までには手を伸ばさずに報酬は貯蓄に多く回すことになりました。


 そんな新米冒険者にはプラットフォームにて活動できるように最低限の居住環境が与えられており、見習い時代からは質素とはなりますが異世界人の平穏で緩やかな家庭くらいには設備が整った環境にてスタートできる贅沢な条件が与えられてもいました。さらに彼らには身体に概念としてのデバイスが内臓されており、これにて様々な情報伝達が行われて便利なサポートを受けられるようになっています。それが冒険者になったことで強化されて、プラットフォームの未知の地だろうと活動内容を提示すれば、必要となる公共性が高い施設になら案内してくれたりと、駆け出しの冒険者だからと困ることはない機能が精神に干渉してくれるのでした。もちろん便利な機能は沢山あれど穴はあるもので、冒険の攻略に必要となるヒントを全て貰えるわけでは当然なく、あくまで方向性が示された冒険者に限り少し手を添えてくれるだけであり、確実に活用できる便利機能の一つとしたら迷子にならないように施設への道案内といったものくらいでした。


 ただこれもないと不便なものでプラットフォームは神が特別に創造した世界であり、いくつもの都市がそれぞれが隔離された異世界でのみ存在していて惑星の一部の地域にあるわけではない特注な世界となっていました。この安全な世界が冒険者などに必要な分を創造されて無数に点在しており、その世界にも転移魔法にて移動が即時可能なためにプラットフォームは広大な活動拠点として様々な施設や交易が盛んに行われる無限大の都市である。ある程度の地区には転移できるがそこからは目的地にはアナログなために、地図も知らなければ目的地の詳細な情報も不確かであると都度道案内を求めなければならずに、その点では脳内に確実なプラットフォーム限定の地図があるのは便利となりました。


 プラットフォームの居住区はまた特別でありそれ自体が全て隔離されたような地区に指定されています。そこから活動拠点となる都市部に転移することになりますが、そこが各街並みでギルドの旗本ごとに街が分類されていて独自の仕事の依頼や交易が行われているので、自由に戦略的に街を選択する意味はありました。しかし冒険者全てが必要になる施設に限りは各街で差異はなく手続きにも支障がでないように配慮されて神の遣いがサポートしてくれるのでした。つまりどのギルドの旗本内で活動をしていくかも冒険者は重要でもあり、集中的に一部を活用して密となり果てはギルド自体に参加するもよし。ギルドを渡り街を変えてと世渡り上手を決め込んでもよし。冒険者の戦略はすでにプラットフォームから始まっていると言ってもいい仕組みができているのでした。


 そんなギルドごとの街でしたが、建造物を立てて設備を充実させるには報酬を対価にして条件をクリアしないと建設はできなく、街の機能を充実させて世界中の人を呼び込むためにも冒険者の知恵と工夫と労力に報酬にと必要なモノが当たり前にあり、神が無償で提供してくれるのは限られていました。しかし技術などの支援や資材などの補助は受けられることができ、それがチームとしてのギルド自体に報酬が与えられた権利となりました。異世界でギルドとして依頼を受けて冒険者が活躍して報酬を得ると、中にはその異世界での技術を別の異世界に渡せる権限が与えられて、人材派遣の費用も神が負担してくれて便利な技術をプラットフォームに持ち込むなり、別の異世界で活用してギルドのさらなる躍進のための拠点作りをすることも可能となっていました。


 ギルドに参加するしないにしても、冒険者であれば報酬は行き来するので未所属の冒険者はギルドがどんな目的で活動して仕事を発注しているのかも見極めながら活動範囲を選んでゆくことになります。そしてギルド以外の依頼も当然あり、それが神が自ら提示している試練である。そちらはギルドが条件を自由に決めれることを利用して緩く設定しているのと比べたら、神の試練は完璧に近い解答がないといけないために若干ハードルが高くなる傾向があるのでした。

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