プラットフォームギルドにようこそ

プロローグ 【カズ×アズキ】

 これから冒険者生活が本格的に始まってゆく前日。無事最終試験を合格して選定されたカズとアズキの二人は転生前の最終日にはしばらく愛し合えない制約の中にまた戻ってしまうために沢山充電してから旅立つ予定にしていました。すると最後の瞬間も寄り添いながら二人一緒に意識が薄れてしまい、目覚めると異世界のプラットフォームに旅だっていたなんてことになる予定もありましたが、後悔のないように最後に沢山しておきたいことは、愛し合うこと以外にもまだ残されてもいました。


「おいひぃ♡」


「リスかよ・・・アズキは甘味系が好きだね」


「うん、食べると幸せになれるの♡」


(オレはアズキが一番おいしいけどな)


アズキは一度味覚を失い飲食で幸せを感じられなくなる前に目一杯好きなものを食べとこうとスナック菓子とケーキを中心に買い込み、カズの部屋にてプチパーティーを始めていました。彼女はまだ吸血鬼としての目覚めは浅く血を摂取する悦びにはまだ到達していないようで、カズからの吸血を願うよりもありふれた食事の方が美味であり至福となっていました。そうして現在彼女は頬を膨らませる程にお菓子を口に沢山頬張り贅沢食いをして至福を感じていました。そんな恋人の無邪気な姿を側で見つめながらカズはお菓子よりも血が欲しいと吸血鬼としての食事を最後にもう一度しようと考えてもいました。しかし飲み過ぎてしまえばアズキがへばってしまうために摂取量には気を配り、それならいっそまぐあい合う最中でまた吸ってあげようと、無邪気に微笑む少女を見つめながら不敵な笑顔を浮かべてもいました。


 通常の異世界人では食生活に気を配る必要がありますが冒険者であれば身体の仕組み上、太るというリスクがなく好きなものを自由に栄養管理も考えることなく食せることが大きなメリットでありました。しかしそれを自由に活用できるためには彼らは厳しい試練をこれから乗り越えて報酬を得てゆかなければならない。そんなこんなでアズキは見習い生活で大好きになった甘味を中心に最後の晩餐とすることにしたのでした。


「お菓子は永遠の友達。ケーキは愛人。カズくんは夫です。今日は全部好きなだけ楽しもう♡」


「くそ、オレでさえそんな笑顔を見たことないのに」


「カズくんとお菓子はまた違う幸せだもの」


恋人と食事から得られる幸せには違いがあるのは当然でもあり、カズも変に対抗心を燃やすことはせずにアズキが食べきれるか怪しいくらいに用意したケーキの一つをいただくことにしました。カズも血を得てゆけるようになってからは食事で得られる満足感が戻ってきており、吸血以外での食事でも幸せを感じるようになったことでまた食事をするようになっていました。そうしてアズキに触発されて口が寂しくもなり、目についたケーキを食べたくなってしまったのでした。


「まあね・・・このケーキ貰ってもいい?」


「イチゴのはだめ!」


「なら栗のをもらう」


「よろしくてよ」


アズキはケーキの中でも苺がトッピングされたショートケーキが一番のお気に入りらしく、カズがそれを食べようものなら牙を剥き出しにして噛み付くことさえ意図はないくらいに苺のショートケーキ愛好家となっていました。カズとしても拘りはなくアズキが一番食べたい物を残すようにショートケーキは選択肢から外してモンブランを手に取り、彼はアズキとは違い一口を噛みしめながら味わって食事を楽しんでいました。

――

――

――


 アズキは冒険者の恩恵をそのまま適用していたので食べても食べても太ることはなく、胃袋が膨張して腹が膨れる体験をすることはありませんでした。しかし異世界の環境にも適応させるためにも、満腹感だけはしっかりと与えられる仕組みだけは残されており、冒険者の身体は異世界人からしたら変わった仕組みを形成していたのでした。そうして若干無理をするくらいにアズキは食事を堪能し尽くして最終日のプチパーティーは終わりを迎えることになりそうでした。


「ふぅ〜、流石に食べすぎたかな」


「腹が膨れないにしても満腹感はあるしな。しかしそうなると、加護を切ったらアズキのボテ腹が見れるのか。ふむ・・・」


「んっ!?」


「いやいや、その手があったかみたいな顔をするな。特殊なプレイはまだ早いだろう。ていうか満腹すぎてえっちどころではないから・・・」


話を切り出したのはカズにも関わらずに、アズキが新しいアプローチを見つけたように表情が明るくなると、すかさずそれを否定してくれました。しかし好奇心自体はある様子を見せてしまうと、何やらアズキは考え事をしだしてしまう。


「赤ちゃんができたら・・・」


「孕ませる前から孕んだ後のことを考えてどうする。またその時に考えよう」


「うん、赤ちゃんは元気に産んであげないとね」


「やっぱりコウノトリは使わないつもり?」


「わたしにとったら大事で特別なことだよ。絶対にお腹に命を宿してね♡」


「責任重大だな」


未来の娘たちのためにもカズは冒険者となり愛の契りを解放してゆく必要がありました。しかしそれにしても早くも父親の自覚を促すかのようなアズキの子作りアピールにはカズでもついて行くのは難しく、まずは二人きりでの愛をしっかりと育んでからでないと子育てにも集中できない。


(赤ん坊に会う機会がなかったのに、どうしてアズキはオレの子供がそこまで欲しいのだろうか)


カズは自分が男性だからアズキよりも子作りにまだ重点を置けないのかと考えてもいました。もしカズも生命が生まれる本来の営みの中で育ち赤ん坊や子供と触れ合う機会に恵まれていたのなら、また違った考え方に行きついていたのかもしれない。一方でアズキは実際に自分が身籠ることを願っているので、男性のカズよりも子育てについてや赤ん坊についての情報などを多く見聞きしていました。そうする中で赤ん坊への興味が膨らみ、果てにはカズとの子作りを強く希望するまでに二人の愛の結晶を産み出すことを夢見るのでした。


「そうかな? 簡単だと思うけど。元気な子種をいっぱい出してくれるだけでいいのに。赤ちゃんの部屋が予約されるまではいつでもカズくんだけに貸してあげるからね♡」


「アズキがエロいよ。毎夜絞られる未来しか浮かばない」


「大丈夫です! 妊活中は精液を濃くするためにえっち自体は控えます!」


「教育が行き届いていますね・・・」


アズキの性に対する好奇心も止まることを知らず、特に赤ん坊を元気に産むためならばできうることをするために情報をかき集めるつもりでもいました。現段階でも十分に情報は開示されていますが、異世界に転生した後にはまた新情報があるやもしれない。特に自分たちは特別な冒険者であるので、その利点や都合が悪い情報もあるやもしれない。それは何も子育て情報だけではなく、全てにも当てはまることでもあり、冒険者になればまずは知恵の泉から未解放であった真実を知り、そこから新生活の行く道を決めて行くことにもなります。


「異世界に転生したら赤ちゃんを見てみたいな。かわいいのかなぁ」


「赤ん坊だけでなく、いろいろな人たちがいるんだよな。世界はどれくらい広いのか。ハジメの気持ちも理解できる気がしてきた」


「ヨッ、冒険者さま!」


「オマエさんもな!」


アズキは愛しあえなくなる不安を抱えてもいましたが、どう足掻いても抜け道などないために頑張るだけしかできない。それに新生活がスタートしていない側から落ち込んでもいられないので、また新しい楽しみを見つけることも含めてカズとの二人三脚の冒険者生活を楽しもうとやる気を出してくれてもいました。そうしてカズも安心できるくらいにアズキは最終日を笑顔のままで過ごしていてくれた。これが愛の契りを獲得するまで続いてくれるように、カズも恋人に気を配りながらの冒険者生活が始まろうとしていました。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 味覚が消失する前に堪能しておきたい流れを見てきたカズは自分も血以外に惹かれていた、アズキが作ってくれた「御結び」をまた食べたくなってしまいました。アズキはまだ料理の勉強に集中できていないためにレパートリー以前の料理初心者でした。それはハウスメイドに家事を任せっきりであったカズもそうなのですが、以前アズキが作る機会があった御結びだけはカズでも高い評価をしていて、アズキは米だけは炊けるように勉強をしており、時折りカズに振る舞ってあげていたのでした。しかし毎日は面倒なのでアズキも愛妻弁当は断念しており、時間に余裕ができたら料理の勉強をしてカズに振る舞ってあげるつもりでもいました。そうして最終日のやり取りからカズは今一度アズキの唯一の自信作である御結びが食べたくなってしまったのでした。


「アズキの御結びがまた食べたいな」


「せっかくだから今から作りましょうかお兄さん?」


「今から米を買いに行くのか?」


本来なら食事を必要としない彼らは料理もしないとなると材料を保管しておくことも少なくなり、加えて明日には学舎とはさよならをする為に米の備蓄などありませんでした。もしあらかじめアズキに料理を頼むのなら菓子を調達する時に米も買うことができましたが、ふと考えついたことを実行に移すにしても買い物をしに行くのが億劫になるくらい腰が重くなり、足は部屋に根付いてしまいこのまま最終日はまったり過ごしながら、最後にはまたアズキを堪能してから愛を囁いて旅立つ予定にしていました。そのために外出はもう不要となっている。カズは惜しいですがアズキの血と愛というご馳走で我慢ができたので強請ることはしないつもりでいました。


「タスくんならもっているはず。分けてもらおう」


「うーん、タスも今頃は恋人とイチャイチャしているだろうし最終日は邪魔したくないんだよな」


「少しくらいなら大丈夫だよ」


アズキはせっかくだからとカズを説得するも、カズはタスにも最終日を楽しくしている事情があるはずだとして邪魔はせずにおとなしく二人で過ごすことを提案しました。そうしてアズキが聞き入れてくれたのか、一度お色直ししてからカズに愛されにくると言い残して準備のために一人で部屋に戻って行きました。

――

――

――


 着替えに手間取るにしては長く待ち、これは相当アズキの気合いが見込めるものだとカズは興奮しながら今か今かとアダルトに変貌した恋人の帰りを待ち侘びていました。そうして元気いっぱい明るい笑顔で帰ってきた通い妻は何故だか炊飯器を携えており、衣服は変わっていないのは換装魔法で見せてくれるにしても、どうしてここに調理器具を持参したのかが理解に苦しみました。こうして一気に熱が冷めてしまったカズは光を失った瞳でアズキの無邪気な笑顔を見つめることになりました。しかし残念なことに米は熱々なのが哀しい。


「お米をもらってきました! 炊いていたから時間がかかったの。待たせてごめんなさい」


「おいおい、まさかそれを貰うためだけに外出したのか?」


「だってカズくんに食べさせてあげたかったんだもん・・・」


「アズキ・・・ありがとう! こんなお嫁さんが欲しい!」


「にへへ、もうお嫁さんのつもりだけどね♡」


結局アズキはタスに突撃をして料理好きな彼を見込んだのが正解であり、必要な量だけ分けてもらい急いで仕込んでカズの部屋に舞い戻ってくれたのでした。そこまで献身的に恋人を喜ばせようとしてくれる妻にカズは幸せすぎてハグで応えてあげました。そうしてカズの嬉しそうな様子にアズキが満足して、二人は情熱的な時間だけでなくぽかぽかと温かな優しい時間も過ごして最終日を飾っていたのでした。


「タスのところはどんな感じだった?」


「うーん、たぶん・・・いや、あれはきっと事後だったと思う」


「なんだと・・・まさか行為中にでもお邪魔したのか・・・」


カズはどうしてもっとアズキを静止できなかったと悔やんでいました。彼にしてもお楽しみ中に邪魔をされたら不満に思うし、最悪気を削がれてしまえばタスの恋人にも悪いことをしたとも反省しました。これも全ては自分が御結びを食べたいと呟かなければと、カズは変に大事に捉えてもいました。それもこれも最終日であるからこその考え方でもある。さらに追い討ちとばかりにアズキは既成事実となる真実を教えてくれました。


「メイドの日向さんだけが対応してくれたけど、汗ばんでいて髪も少し乱れていたし、息もあがっていたから。もしかしたら真っ最中にお邪魔したのかも・・・?」


「それはお米が重かったわけではないんだよな? よく対応してくれたな。そういうプレイなのか・・・? 兎に角、タスには今度ヨロシクしてあげないとな。あと日向さんごめんなさい。アズキの代わりにオレを殴ってください」


タスが対応しなかった理由はなんとなく理解できてしまう。それなら居留守をしてくれてもよかったのに、もしものことを考えてアズキに応じてくれたのだろう。それなら至福の時間を邪魔した責任をカズは自分が背負うべきだと痛感しながら、ひとまずアズキが作ってくれた御結びを美味しく食べさせていただきました。




「やっぱり最終日のカップルはみんな一緒に居るのかな?」


「だろうな」


「御結び食べ終わったらまたえっちする?」


「したいです・・・」


「遠慮しなくてもいいのに、わたしもまだ足りないくらいだから、最後までいっぱいラブラブでいよう♡」


 散々自分を性に素直になる道に進ませておいて今更カズが遠慮するのはおかしい。アズキは遠慮することなく自分を最後まで堪能し尽くしてもいいと甘えた声で誘惑を始めてあげましたが、カズはさらにアズキを一歩も二歩も先へと染め上げることを計画していたのでした。しかしそれこそ中毒性が高い行為になるので、用法容量を間違えればアズキはカズの食事の度にエッチを求めたくなってしまう身体になってしまう。そうならないようにもアズキには事前に同意を得ておく必要がありました。


「またあのフルコースがしたいかなと・・・どうかな?」


「ええ!? あれは最終日の今日だけはだめだよ。中毒性が高すぎて身体も保たないし・・・」


選定終了後の猶予期間で一度これまでで一番の情熱的な愛し合い方をした日から二人は連戦連夜のまぐわいを繰り返して今日を迎えていた。中にはクタクタになるまで体力を消費して交わりあい、そのまま寝て起きる日もあったくらい。そうすれば身体にも睡眠をしたとて疲労が蓄積されてしまうので、翌日は軽めにしたりと連日の激務だけは避けてもいました。しかしそうはいっても時間と体力が許す限り二人は愛することで時間を消費してきたので、アズキも最終日にはゆったりと愛する人を感じて身体にしっかりと刻み込んでおこうと考えていたのに、カズは少しでも加減を間違えるとアズキを快楽で昇天させてしまう中毒性が高い吸血で性的興奮を最高点にしてからのラブラブエッチを再び実行しようとしていたのでした。


「しばらくできないから最後にもう一度だけ! お願いします!」


「わたしもしてあげたいけど・・・気絶するくらいきもちいいんだもん・・・まだ慣れていないし、そのまま途中で気絶して転生することになったら嫌だよ」


「無理矢理にでも起こすから。たのむ!」


「それって起こし方も中毒性があるやつでしょう! もう、これ以上快楽に依存させる身体にさせないでよ・・・今でさえセックスをしばらく我慢できるか怪しのに・・・」


すでにアズキはカズによって強烈な絶頂を何度も繰り返し身体に覚えさせられてしまい、その快感をしばらく感じれない切なさを嘆いてもいたくらいでした。その寂しさを埋めるために一人えっちすらまた繰り返す日々に戻ってしまうのかもと、快楽を教え込まれた後遺症も考えられました。それがいかほどに中毒性が高かったのかはこれから判明することでもありましたが、それをカズはさらに加速させてしまうようにアズキを求めてくれたのでした。


「我慢するだけ本番がより気持ちよくなれるはず!」


「いやだよぉ・・・我慢すらできなくなっちゃうよう・・・」


「そんなに快感が強かったの? それこそ欲しくならない?」


「全部あげる約束はしたよ。でも幼い妻に無茶ばかりさせるのは違うと思うの。また暴走しているのならアソコをもぐよ? 合法的にアソコを食べてあげましょうか?」


「うぐっ・・・失礼しました」


アズキは恋人の暴走にお怒りで興奮したのか紅い瞳になり牙を剥き出しにして不敵な笑みを浮かべながら恐ろしいことを言ってのけました。おそらくそれはしないのでしょうが、将来的に愛し合える限度が解放された後に口での奉仕をされた時に、ガブリとされないかと怖くもなりそうなのでカズは冷静になって反省しました。


「うふふ、この牙であむあむする日が楽しみだなぁ♡」


「恐ろしいこと考えてない!?」




 アズキも舵取りをしながら肉体の悦びを満たす行為を楽しむことを知ってゆき、しかし結局彼女もカズと変わらぬ好奇心が強くあるスケベ少女を自覚してもいるので、この最後となる交わりをカズの提案を受け入れてしまい必死に最後まで意識を覚醒し続けると、もう時間の感覚さえわからないくらいに溶け合ってしまい、最後の最後は泣き叫びながら果てて許しを願ってようやくカズに解放されて、足腰に力が入らないままベッドで拗ねながら語り合い旅立つ瞬間を迎えてくれたのでした。

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