第6話 1つの世界。
午後にミスコンの結果が発表される。ミスコンに出たというものの何故かパフォーマンスの後じめじめした目線で見られた。ああ、こういう所が苦手なんだよな。女子は。
「では!また午後5時に結果発表がありますのでぜひ皆さんご投票よろしくお願いします。」
司会がそう告げたので私はすぐさまこの場をさった。絶対面倒くさいだろうから。
「ねえ、江原さん?ちょっとお話があるんだけど。」
見知らぬ上級生の人が居た。この人隣に居たなと思い出した。絶対面倒だ。
「すみません、この後、店番と部活の友達と回る予定なので。」
そう告げるなり、前の学校では校内一の足で猛ダッシュした。流石に着いてこれないだろう。私はそのまま自分達の教室へ向かった。私にもやることはあるのだ。
「ごめん、遅くなった。」
「大丈夫、今んとこギリギリ回ってたから。」
「じゃあ、着替えてくる。」
うちのクラスはメイド喫茶をやるらしい。何故かうちのクラスには料理好きが集まっていたためだ。ぶっちゃけ、ふりふりのワンピースなんて着たくないけどなんだかんだこのクラスのみんなといるのは楽しいし、役に立ちたいと思う。でも、
「いらっしゃいませ、ご主人様。」
流石にこのセリフはきつい。何故か男子ではなく、女子にさえも言わされるという私からしたら修羅場だ。本当に無理。
みっちり3時間接客し、休憩が入った。颯爽とメイド服を脱ぐ様子を絵梨奈は「えー?もうちょっと着てても良いんだよ?後夜祭とかもそれで良いんだけどなー。」なんて恐ろしいことを言われたが、もちろん私は着なかった。今日は、いつものパーカーは着ずに、シャツにニットのセーターを着た。後夜祭はちゃんとした服じゃ無いとだめらしい。
「まあまあ、冗談は良しとして、あそこに藍姫を待っていらっしゃる遥斗王子がおまちでございますよ?」
なんてあゆみがそんな事を言ったので、「私どっちかというと王子ポジが良かったな。」なんて呟いた。それを聞いていたのか遥斗は怒り気味に「太陽が無くなっても俺が王子ポジですー!」なんて言っていたが、そもそも何を言ってるのかよく分からない。
「まあ、行くか。」
「藍スルーは酷くない?」
この何気ないやりとりが懐かしい。この心地良さが好きだ、と思った。
こんな時間が好きだ。
友達が好きだ。
部活の仲間もバレーも好きだ。
運動が好きだ。
この何気ない毎日が好きだ。
一つのこの世界は好きで満ち溢れている。
心からそう思った。
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