パパとママ
アマテラスのメンバーはオークの討伐任務を完了したのに伴い、集落にあるオークキングを倒した倉庫の外へ全員で集まっていた。これから今までの報告と今後の役割分担(討伐部位の収集や遺体の焼却処分、被害者の遺品等の調査、周囲の警戒)を決めるためである。
イズナの胸には眠ったオークの少女が抱かれたままでいた。何度か引き離してゆっくり寝かせようと試みたが、イズナにしがみ付いた手足はしっかりとホールドされていて、無理にほどいてくことも忍びなく結局このまま連れて行こうということになった。イズナにしがみ付く少女を見た一同は、目を丸くして驚いていた。
「イズナ姉が、子供を抱いている? あの子供嫌いなイズナ姉が?」
「なんとなくイズナ様に似ているね。隠し子かな」
「私はそんな話を聞いたことはないけれど、でもそうすると直也さん以外の」
「お嬢様見て下さい、あの懐き方はどう考えても実母と実子の絆、と言うことは・・・」
「そんな、イズナさんが直也さん以外の子供の母親だったなんて。夫の居る身であったなんて!」
みんな集まってヒソヒソと好き勝手に話をしている。しかしイズナが怒ることは無く、逆に余裕の態度を見せている。何時ものイズナであれば、直也以外の男の子を生んだ何てこと言われたら、強力な物理の力を使い、メンヘラ確変モードへ突入、直也が甘々に甘やかすまでは止まることが無い幽鬼の鬼となるはずである。皆イズナの見せている余裕の態度に違和感を感じていると、当イズナ本人より余裕の正体が明かされた。
「ふふっ、この子は私の実子ではない。しかし私はこの子が一人前になるまではこの子のママになると、“さっき二人で”決めたのだ。ねぇ、直也パパ」
イズナは少女の頭を愛おしそうに撫でながら、直也の腕に組みついた。
「「「「「「直也パパ!×5」」」」」
「そうだよ、直也パパとイズナママの三人で家族になるんだ! そういう訳だからお前達は引いてくれ!」
一斉にイズナの煽りを受けた5人、
「旦那様どういうことだよ。どうしてパパで姉がママなんだよ」
「主様、主様、パパって何のパパ? エッチなパパ?」
「直也さん、何時の間にこんなに可愛い子のパパになったんですか!」
「直也、そこになおれ!修正してやる!」
「直也さん、どうしてですか。私がママで直也さんがパパじゃないですか」
レーヴァ、アス、サクヤ、マリー、そしてリーシェ。直也の周りを取り囲み、おしくらまんじゅうの様に体を密着させ直也を問い詰める。直也は押し寄せる柔らかい二つ物体に翻弄されながらも、まだ少女から了解を得ている訳ではないとの理を入れ、オークの少女を引き取ると決意をするに至った経緯を説明した。
「旦那様よ、話は分かった。あたいは反対しないよ。弱い者を見捨てることが出来ないのが旦那様の性分だからね」
(昔から変わんないね、旦那様は。あたいを拾った時と同じだよ)
レーヴァは昔の自分が助けられた時のことを考えて微笑んだ。
「そだね。それでこそ主様だね。何も変わってないや」
(時代は変われど、直也は変わらずだね)
アスは出会った時と変わらない直也を眩しそうに見た。
「私も良いと思います。反対は致しません。ですが、これは責めているのではありませんが、今回のように弱者救うのには限度があります。全員を救うことは出来ません。どうしても救いたいというのであれば、もっと大きな、例えば国や町の行政の力って・・・、私か? 私が組織を立ちあげて、直也さんと一緒にすれば良いのか」
(これって直也さんと一緒にデスクワーク、直也さんと一緒に改革会議、直也さんと一緒に現地の視察、直也さんと二人っきりで宿泊研修からの、うふふ、うふふふふふふ)
サクヤはここで直也と町を一緒に管理して愛を深めていく姿が見えた。
「弱者の救済か。夫となる直也がそれを望むのであれば、妻たる私は身命を賭して協力をしよう」
(誰がなんと言おうが私は直也を支えよう)
マリーは直也の妻として(まだ妻ではないけど)直也を死ぬまで添い遂げる覚悟を決めた。
「直也さん、私も妻として内助の功を心掛け、心もスッキリ、体もスッキリさせてみせます!」
(直也さんのあそこは私が管理します!)
リーシェは直也の下の一切の面倒を見る決意をする。
「お前らは大丈夫だ。心配をしなくて良いから! 直也パパはイズナママが生涯支えるから! この子の事を考えて引いてくれって!」
(ママは私一人で十分だ)
ママは私だ!。イズナは少女に他の5人が取り入ろうとするのを阻止することに決めた。
サクヤ達はイズナの胸で眠る少女の元へ集まり優しく、子供をあやすように話しかける。
「「「「「「ママですよ×5」」」」」」
「いや、お前達は要らないから!」
様々な意図、思惑が溢れる女の闘い。
直也は、みんなが自分の我がままで、無理なお願いをあっさりと受け入れて、認めて支えてくれるといったことに感謝し、集まり盛り上がっている自分の婚約者達に対して、深い感謝を込めた礼をし、心からの「ありがとう」を密かに伝えていた。
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