状況開始

 オークの集落に気配を消しながら目視で確認できる山の麓の岩場へと移動した直也達は、

まず、実際の集落の規模と戦力を確認、そして捕らわれている者達が居るかどうかを確認することにした。


「サクヤさんとリーシェとアスで集落の探知と行方不明者の捜索と保護を、マリーさんとレーヴァでハイ・オーク達敵主戦力の討伐排除を、サクヤさん達は生存者の捜索と保護を。僕とイズナさんはそれぞれのバックアップをします」


「分かりました。私達はここから不可視の魔法と風魔法で姿と匂いを消しつつ、オーク集落の近くまで移動して、行方不明者の探索を開始します」


「レーヴァ殿は正面から、私は敵背後からハイ・オーク達を襲撃します。私達がオーク共に派手に陽動を仕掛けますから、私達が戦闘を始めたらサクヤ様達は集落への侵入をお願いします」


 直也の討伐作戦を聞いたサクヤとマリーは直ぐに戦術プランを立てた。


「概ねはそれでいいだろう。しかし、恐らくあの集落にはオーク以外の者はいないだろうな」


「うん。残念だけれど行方が分からなくなっている人達のなかで、もしオークに掴まっている人がいるというのならば、あそこには生きている人はいない、と思うよ」


 レーヴァとアスの言葉通りに、オークの集落からは人間が発する霊気は感じることが出来なかった。サクヤも重ねて探知魔法を使って人間の生存者を探してみるが反応はない。


「・・・わかっています。でも、万が一と言うことがあるかも知れません。ですから、しっかり調べておきたいと思います」


「うん、私もそれで良いと思います」


 サクヤの捜索を続けると言う言葉にその場にいる全員が納得し頷いた。


「それにしても中々に良い力を持った奴がいるようだ」


「あたいから言わせれば有象無象だけどな。でも、確かにただの人間には少し荷が重そうな奴らだな」


「ですが、私たちはただの人間ではありません。必ずこの任務を無事に達成して、みんなで家に帰りましょう」 



 サクヤがそう言葉を結ぶとアマテラスのメンバー達は、各々が受け持つ任務を遂行するために行動を開始した。





「レーヴァ、配置についたぜ」


「マリー、配置につきました」


「捜索班の準備出来ました」


 オークの集落を取り囲むように配置についたアマテラスのメンバーは、打ち合わせの通りの位置に着いたことを互いの霊気で感じ取り合いながら、イズナが持っている集団通信の魔法で伝え合う。


「了解だ、直也様準備完了です」

 

「状況開始!」



 直也の掛け声と共にオーク集落への討伐作戦の幕がおりた。


「オー! たのもー!」 


 レーヴァが叫びを挙げながらオークの集落に近づくと、直ぐに異変に気が付いたオークが集まりだした。オーク達は粗末な服でほぼ全裸の状態に、こん棒を持っただけというみすぼらしい姿だ。


 集まったオーク達が見た者は、赤毛の大きな胸を持った美しい人間だった。赤毛の人間の美しい女は武器も持っておらずたった一人で自分達の前に立っている。

 オーク達は「ブヒヒ」と下卑た笑いを見せながら、我先にと、赤毛の大きな胸を持った美しい人間を狙って駆けだしてきた。涎を垂らし、“ピー”を起立して走るオーク達はどう見てもロクなことは考えてはいないだろう。



「面白いな。アタイを犯そうってかい?」


 レーヴァは恐れることも慌てる事もなくただ立っている。オーク達はレーヴァを逃がさないように取り囲む気でいるらしく、四方から近づいて来ていた。


「ブッホッホーイ!」


 先頭にいたオークが興奮した様子でレーヴァに飛び掛かった。レーヴァの言葉通り、女を犯してやろうと考えていることが種族を越えてでもはっきりと分かる、“ピー”をビンとカチンコチンにさせたままの、見事なル〇ンダイブだった。


「ふん!」


 レーヴァが軽く拳を握り、腕を振ったように見えた。すると、ドガン! と大きな音と共に、〇パンダイブで飛び掛かってきた二百キロはありそうなオークが、土煙をあげて頭を地面に突き刺し、エム字開脚した姿勢のままただの屍のようになっていた。


「醜い粗末な“ピー”をブラブラさせてあたいの目と心を汚した挙句に、あたいが美人さんだからといって、お前達の薄汚れた欲情でもってあたいの純潔を奪おうとするとは」


 怒気を含んだ言葉を忌々しそうに話しながら、レーヴァは地面に頭を埋めてエム字開脚をしていて丁度良い高さにあったるただの屍のようなオークのピーを足で無意識で踏みつける。


グニクニ。


「・・・・・・グニグニ?」


 レーヴァはハッとして自分が踏んでいるグニグニした物の正体を確認し、顔を青くして、絶望した。

 オーク達は直ぐには目の前の光景が理解出来なかったようで、皆足を止めて、レーヴァとピーを踏みつけられてもまるで反応することがない仲間を見比べている。

 レーヴァはピーを踏みつけ顔を青くしたまま声を絞りだし苦悶の表情を浮かべて言った。


「クッ、計ったな。 あたいにこんなモノを踏ませて喜ぶなんて、この変態野郎どもめ。 あたいは、大切な物を、清き乙女のとても大切な物を、今、失ってしまった。・・・許せない、あたいは旦那様の“ピー”だってまだ触ったことは無かったというのに!」


 ゴゴゴゴゴ、レーヴァの体から闘気が溢れ、木々や大地を震わせる。ここに来てようやく目の前にいる女がオークである自分達以上の力を持っている存在で有ることに気がつき、レーヴァに対して、恐れながらも、全身から汗を噴き出しながらも武器を構えた。どうやら引く気はないようだ。


「良い度胸だ。このあたいの清い乙女の純潔を汚した責任、その命で償ってもらう」


 レーヴァは怒りや悲しみ、千年守った女の子の大切な何かを失った喪失感を胸に刻み込み、奪われた乙女の純真を私怨に変えて、当初の予定よりはるかに力のこもった天変地異クラスの陽動作戦を開始した。

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