ダンジョンからの帰路にて

 アマテラスのメンバーが、精神的なショックを受けて倒れた直也を背負って不死のダンジョンの外へ出た頃、バラバラになった体を元に戻して落ち着いたスケルトン達の許に一本の魔法通信が入った。


 「ジョン、ジョン聞こえる?」 


 「へい姉御、バッチリと聞こえやす」


  ジョンと呼ばれたリーダースケルトンが話を始めると、スケルトン達は一斉に動きを止めてリーダーがいる場所に円を描くように集まりだした。


 「アマテラスは、・・・タカスギ・ナオヤ達はどうなりました?」 


 「へい姉御、連中はダンジョンを出やした」


 「・・・姉御と呼ばないで下さいと言っているはずですが?」 


 「すいやせんCEO。それで報告ですが黒ピエロ鉤爪のフレディーの奴がやられちまいやした。他の奴らは無事に生き残っておりやす」


 「そうですか。フレディーには再生の血の使用を許可します。復活させて上げて下さい」


 「ありがとうございます、CEO。後、申し訳ありやせんが収穫前の大事なシャインマスカットを全部奴らに食われちまいやした」


 「えっ、全部って?」 


 「畑の実りを全部いかれやした」


 「噓でしょ? 畑全部って? かなりの量があったと思うのだけど?」 


 「へい、連中の中にタチの悪いドラゴンがいやして」 


 「終焉のレーヴァテインか」


 「へい。あいつ一人で全部食べやがりやした。でも代金は何とか取る事は出来やしたので」


 「あのぶどう、シャインマスカットは私が研究に研究を重ねて復活させた、千年前に失われたの最高級品種のぶどうよ。一粒金貨1枚で貴族達に売れるわ。あの面積ね畑になっていたのを全部となると、金貨10万枚でも足りないわ。一体どうやって支払わせたの?」


 「へい、姉御の言う通り奴ら金は持っておりやせんでした。なので代わりに物で払っていただきやした」


 「物?」 


 「へい、あの火竜レーヴァテインの竜鱗でやす」


 「竜鱗ですって!」 


 「竜鱗7枚でおそらく200キロ以上はありそうです」


 「金以上の価値を持つ竜鱗が200キロ以上・・だいたい金はグラムで約銀貨7枚で取り引きされている。と、言う事は銀貨で140万枚で、金貨14万枚。円にすると14億円。最低でも・・・14億円」


 「へい、姉御。あの火竜の竜鱗ならばそれ以上の銭に化けますぜ」 


 「ふふふ、よくやったわね。ジョン・スケルトン。素晴らしい成果だわ。・・・でも姉御も親分も禁止です。いまの私は青空農場のCEOです」


 「申し訳ありやせん、CEO」


 「以後気を付けて下さい。それじゃ通信を終わります。みなさんにも体に気をつけて仕事をする様に伝えて下さい」


 「へいCEO。お戻りは何時の予定になりやす

か?」


 「まだ、何とも言えないわ。私はセフィロトの町でやらなければならないことがあるの。それが叶うまでは」 


 「分かりやした。CEOが戻る迄はわしらが農場を守りやすのでご安心を」 


 「宜しく頼みます」 


 「仰せのままに。マイマスター・かすみ様」


  魔法通信が終わると、スケルトン達はいそいそと畑の片づけを始めた。


 


 


 アマテラスの一行が不死のダンジョンの外に出たのは大きく夕日が傾き夜の帳が降り始め、星達が少しずつ顔を出し始める頃だった。


 「えー。もうすぐ夜になるじゃない。どうするみんなダンジョンに泊まる? それともどこか探して野宿する?」 


 「そうですね、どちらかと言うと四方を壁で囲まれたダンジョンの方が安全で良いのではないですか」


 サクヤとマリーが今後の相談を始めると、


 「イヤです。絶対にイヤです。不死のダンジョンの寝るなんて絶対にイヤです。考えられません。もう絶対に出ちゃうやつじゃないですか! もう絶対に邂逅してしまうやつじゃないですか! レーヴァさんもそう思いますよね」 


 「一度、主様が浄化しているけど安心は出来ませんね。気合が入ったゴーストだったら出そうですし」 


  幽霊が苦手なリーシェが身振り手振りをしながら、必死にダンジョン内お泊まりに反対する。リーシェは同じく幽霊が苦手なレーヴァに同意を求めて振り向くと、


 「温かい。眠っている旦那様の身体が温かいよ。ああ、心臓の鼓動が聞こえる。旦那様の熱い吐息があたいを天へと昇らせてイクよ!」


  誰の話しも聞かないで、背負った直也の身体の感触を幸せいっぱいに楽しむレーヴァの姿が見えた。


 その姿を見たサクヤとマリー、リーシェはムッとしてしまう。


 「レーヴァさん直也さんを背負うのも疲れて来たでしょう。私が変わりますから直也さんをこちらに」


「いえお嬢様。御身はシラサキ家の至宝、大切な体です。夜の直也のことは私に任せて、今日は早く眠って休んで下さい」 


 「夜の直也って、マリーあなたは一体何をする気なのよ?」 


  サクヤとマリーが言い合いをしている隙をついたように、


 「レーヴァさんずるいです。私だって温めて欲しいです。幽霊は怖いけど、直也さんが温めてくれたら怖くなくなるかもしれません」


  リーシェは顔を赤らめ恥じらう様な仕草を見せると、レーヴァに背負われている直也の背に飛びつくと大胆に自分の胸を押し付けた。


 「あー! リーシェさん、直也さんから離れなさい」


 「そうだ離れろリーシェ。それはメイドの仕事だ」 


 「ああ、温かいです。直也さんの身体とても温かいです」


 「うるさいぞ、お前達!静かにしないと旦那様が起きてしまうだろうが! 起きてしまったら、あたいの素敵な密時間が終わってしまうじゃないか!」


 ギャーギャー!


 「ふふ、みんな、まだまだお子ちゃまだね」


  色欲を司る元魔王のアスは、ギャーギャーと直也を取り合う4人の姿を微笑みながら見つめると、やれやれと肩をすくめて溜め息をつきながら、飛び込むようにその輪の中に加わった。


 


 


 


 


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