お支払の方法

 冒険者パーティー アマテラス 代表タカスギ・ナオヤ様 


  平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとう御座います。下記の通りご請求申し上げます。


 商品名:太陽燦々! スイートフレッシュ!ダンジョン産高級大粒シャインマスカット 

約1,500キロ(推定120,000粒)  

金額:金貨120,000枚  

お値引き:金貨120枚 

ご請求金額:金貨111,880枚


  直也はそろばんを器用に弾くスケルトンから手渡された請求書をオズオズと見て金額を確認する。


「一、十、百、千、万、十万。分かりやすく円にすると、大体金貨一枚で1万円くらいだから11億1,880万円。そうか、そうか11億1,880万円か、・・・アババババ、バフン」


 バタン。


 「親子三代一生遊んで暮らせる額じゃん。戦車だって買える額じゃん」 


  そう呟くと直也はその場で卒倒して倒れてしまった。


 「直也さん、直也さん」 


「直也しっかりしろ」


 「ふぇー凄いですね。金貨118,880枚って私見たことないです」


 「主様、主様、私がガツンとタダにまけろと言ってやりましょうか?」


  サクヤ達は倒れた直也を心配して駆け寄り、ぶどうを食べた張本人のレーヴァはアスに通訳を頼んでスケルトンと支払いに話始めた。 


 

「金貨12万枚か。今持ち合わせが無いんだよな。お前らこれって金以外の物でも支払いは良いのか?」


  スケルトン達はレーヴァの提案を聞くとみんなで集まり話合いを始めた。カタカタ、ポキポキ、カタカタ、バキバキと話し合いは難航しているようだ。

 スケルトンがカタカタと結構な音を立てながら話し合いをしているが、傍でサクヤに膝枕をされている直也が目を覚ますような兆しは見られない。


 「MEGA BIG。もうMEGA BIGしか・・」


  と、意味の分からない事をうなされながらうわ言のように言っている。


 

 直也の苦しむ様子を見たレーヴァは流石に少し申し訳がないと思い反省をしたらしく、カタカタ話し合いをするスケルトン達に向かい、


 「ではブドウ以上に高価で、とても貴重な物ではどうだ。例えば・・・」 


 と、自分の本来の火竜の姿に変身した。


 「グルオオオー」と咆哮を上げ突如目の前に現れた死を運ぶ終焉の火竜レーヴァテインを前に、スケルトン達は驚き慌てふためく者や気絶する者、そして命乞いをする物まで現れた。混乱を極めたスケルトン一同は取り敢えずレーヴァに土下座をする形で落ち着いた。


 「これは私からの提案なのだが、支払いはこの火竜レーヴァテインの竜鱗でどうだ。自分で言うのもなんだが、これほど見事な赤竜の鱗はないぞ。これを逃せば一生手に入れる機会はないぞ」


  レーヴァは自分の立派な竜鱗を見せつける。重量も10、20キロほどは有りそうだ。


 「へい、火竜レーヴァテイン様。あなた様の伝説はここに居るすべてのスケルトンが生前に聞き及んでおりやす。火竜レーヴァテイン様の竜鱗は、同じ重さの金よりも何倍も価値があると聞いておりやす。竜鱗をいただけるのであれば我ら何の不満もありやせん」


 「では私の竜鱗で支払うと言う事で良いな」


 「へい、何の問題もありません」 


 「では今から竜鱗を一枚ずつ置いていく。金貨118,880枚の価値を越えたと思ったら言ってくれ」


  レーヴァは持っている4次元マジックバックから竜鱗を取り出していく。昔から成長と共に取れた竜鱗を自分の4次元マジックバックにしまっていたので、実は数えきれない程の竜鱗が入っていた。


 「まず1枚」 


 しーん。スケルトン達は微動だにしない。


 「2枚」


 しーん。スケルトン達は動かない。


 「3枚」


 しーん。スケルトン達はまだ動かない。


 「4枚」


 カタ、数体のスケルトンがカタついた。レーヴァは続けて竜鱗を取り出していく。


 「5枚」


 カタカタカタ、多くのスケルトン達が身じろぎを始めた。


 「6枚」


 ガタガタガタガタガタ、スケルトン達は骨の合唱を始め、スケルトンリーダ―は震える顎を必死に抑えて居る。レーヴァは目を細めてスケルトン達を見ていくと、一体のスケルトンが全く動じることなく背骨の伸ばして正座をしている。請求書を作ってきた、そろばんスケルトンのようだ。


 「7枚」


 ドーン。ぐしゃ。しーん。

 辺りは静けさを取り戻す。スケルトンリーダーとそろばんスケルトン以外のスケルトン達は、興奮のあまりだろうか全身の骨をバラバラにして、まるで敗北した戦闘の後の様にあたりに散らばっていた。スケルトンリーダーもこの7枚目の衝撃にただではすまなかったようで、土下座をしたまま魂が抜けているようで動かない。そう、ただの屍のように。

 そんな中息があるそろばんスケルトンは、レーヴァと目が合うと正座をしたままの姿勢から丁寧に三つ指をついて礼をした。


 「ありがとう御座います。もうお代は十分でございます」


 「うむ、お前達のぶどうは本当に美味であった。また来年も宜しく頼むぞ。ではさらばだ」


 「はい、来年もお待ちしております」


  スケルトンに背を向けながら人の姿に身をやつすと、レーヴァはまだ気を失っている直也達の元へ足を進めた。


 「ごめんなさい、レーヴァさん。私、あなたの事をただの変態エロのただ食い馬鹿火竜だとずっと誤解していました。レーヴァさんってお金はあったんですね」 


 「私もですお嬢様。これで毎月の食費には困らなくて済みそうですね」 


 「凄いです。レーヴァさんの体って高く売れるんですね」


 「起きて下さい。主様解決しましたよ。赤字借金はもう無いですよ」


 「変態エロ火竜って、お金だけって! お、お前たち、そんな目であたいを見ていたのか」


  そんな風に思われていたのかと思うとレーヴァは少し興奮してしまう。


 「主様も起きませんし、ヴァイオレットもここにはいない様なので、一度町まで戻りませんか?」


  アスの提案にみんなは顔を合わせながら


 「そうですね」


 「私もよろしいかと思います。お嬢様」


 「私早くお風呂に入りたいです」


  サクヤ達は倒れている直也をレーヴァに背をわせると上の階に続いている階段を目指して歩き出す。


  冒険者パーティー「アマテラス」の不死のダンジョン攻略戦の成果は、到達記録を更新し第11階層「スケルトン農場」へ到達するも、アイテムや金銭の成果は得られず、ヴァイオレットについての情報も大きな成果を上げることは出来なかった。


  赤字である。


  唯一成果と呼べるのはリーシェが暴れまわってアンデットを倒しまくり強くなったこと位か。

 それでも倒れた直也以外の女性メンバーは思いの他にダンジョンを楽しめたようで、満足げに帰路に向けて歩みを進めるのであった。


 


 


 


 


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