働くスケルトン
「?!」
直也達はあまりの美しさに心を奪われ、少しの間立ち尽くしていた。
そこは光に溢れた場所であった。青く空が晴れ、緑の優しい森があり、透明な澄んだ水が流れる川がある。森の木には様々な果実が実り、それを美味しそうに頬張る小動物や野鳥達多く見る事が出来、川には元気に沢山の魚達が群れを作り楽しそうに泳いでいる。
「!!」
動植物がのびのびと元気に育ち生命力に満ち溢れている場所、それが不死のダンジョンの地下11階層の姿だった。
「めっちゃ、マイナスイオン!」
「マイナ、え?」
「直也お前は何を言っている?」
「ここはとても良いです。エルフ的にとても良い所です」
「旦那様、あれ食べても良いよな。大丈夫だよな」
「間伐、手が入っている。ここは、誰かが管理している様ですね主様」
何故ダンジョンにこんな場所があるのかと疑問に思いながらも、あちらこちらに興味を惹かれているようだった。
「あ、リスだ!あそこにリスがいる」
「この果物はなんだろう。真っ赤な色でとても甘い匂いがするわ。マリー知っている?」
「多分これはリンゴではないでしょうか」
「リンゴ?こんなに真っ赤で香り良いリンゴなんて見たことがないわ」
「はい、私もここまで見事な物は見たことがありません」
サクヤとマリーはリ見事なンゴの品評会、
「良いです。ここはとても和みます。さっきまでのクソ見たいな暗くて湿った場所とは大違いです」
リーシェはとても嬉しそうに、
「うま、これ、うまうま」
レーヴァは既に何かを食べて、
「ダンジョンの地下に果樹園って、確実に誰かが栽培していますね」
アスは付近を調べている。
思い思いに森の中を散策していると桑や草刈り鎌を持って農作業をしている20体ほどのスケルトン達が目に飛び込んで来た。2体1組でペアを作っているようで、1体のスケルトンが畑の草取りをしてもう一体のスケルトンが畑を耕し畝を作っていく。
直也達が唖然として森の陰から様子を窺っている間にも、スケルトン達は休むことなく作業を続けてどんどん畑を耕していく。
「凄い光景だな」
「手際が良いですね。まるで熟練の方の仕事様のです」
「そうですね、しっかりと役割の分担も出来ているようです」
「働き者さんのスケルトンさん達ですね。全然休まずサボらずに働いています。きっと畑の仕事が好きなんですね」
「主様いってくる」
スケルトンの働く姿に軽い感動を覚えていると、アスが1人でスタスタとスケルトン達の前に行こうしているのに気が付いた。
「ちょっと待った、アス。君は一体なにをしようとしているの?」
「ちょっとあの人達の話を聞きに行こうかと」
「話って、スケルトンと?」
「勿論です主様。今まで隠していた、訳でもないですけど私魔物と会話が出来るんです」
真剣に話すアスに不安を感じたのか、
「アス、あなたは何を言っているの?」
「アスちょっとこっちへ、・・・熱は無いようですね」
「アスちゃん凄い。私にも教えて欲しい。私もお話してみたい!」
サクヤとマリーが心配をして声をかけ、リーシェは拳を握り称賛する
「私は正気ですよ。魔物と話が出来るのは昔取った杵柄という奴です」
「昔って、話辛いことを聞くのかもしれないけど、直也さんに会うまであなたはどうやって、その、暮らしていたの?」
「私は親と大喧嘩して兄弟と共に捨てられたんですよ。それで主様に会うまでの結構長いは生きるために何でもしてきました。そんな生活の中で私は魔族と一緒に生活をしていたことがあるんです」
アスの生い立ちを初めて聞いた直也を除く一同は、想像をしていたものよりも重めの返答を聞いて言葉を失ってしまう。
「ごめんなさい、辛いことを思い出させてしまったわね」
「あっ皆さん気にしなくても大丈夫ですよ。辛いこともありましたけど何とか死なずにやって来れましたし、今は主様が居てくれるから毎日が楽しくて幸せですし」
大天使から堕天して悪魔になり、神を呪って魔王にまで上り詰めたアスモデウスの過去をかなり薄めてソフトに言えば確かにそう言う感じになるのかもしれない。直也はそう思って話を聞いていた。
「多分魔法少女の姿の方がスケルトン達にも受け入れられやすいと思うので変身しちゃいます」
魔法少女の姿とは人間から魔王アスモデウスの姿になるということ。なので魔物達から見れば、現場にいきなり大親分が顔を出しようなものになるのだろうか。
「では、とう、変身!」
アスは簡単にテンポ良く黒いウエディングドレス姿の魔法少女カオティックブラックに変身すると、働くスケルトンの元へ走っていってしまった。
みんながアスの過去を知り悲しそうに後ろ姿を見守る中、
「変身ってセリフなしでもいけるんだ」
直也はふとそんなことを考えていた。
魔法少女カオティックブラックの姿に気が付いたスケルトン達は持っていた農機具を投げ出して集まって来た。
「直也さん、アスが囲まれてしまいます」
「お嬢様心配は無用です。スケルトン程度では毛ほどの傷もアスに付けることは出来ないでしょう」
「見て下さい。スケルトンさん達がアスちゃんの周りに集まって、集まって?」
「みんな土下座しているな?」
そこには数10体にも上るスケルトン達がわらわらと姿を現し、カオティックブラックとなったアスの前で土下座を始めるという奇妙で不思議な現象が起きていた。よく見ると先頭のスケルトンの顎がカタカタと揺れている。
「ようこそ、魔王様」
「お前たちはここで何をしているのだ」
「へい、魔王様。わしらもうずっと前からここで野菜や果物をこさえています」
「一体なんのためだ。誰の指示で農作業をしている」
「へい、魔王様。これは姉御のために、姉御の指示でこさえておりやす」
「姉御とは誰の事だ」
「へい、魔王様。姉御とはこのダンジョンに住むわしらの主バイオレット・ブラックブルーム様です」
「それは真祖の吸血鬼のことか?」
「へい、魔王様、その通りです」
「そうか国労少しそのまま待っていろ」
「へい、魔王様」「とう!」
アスはその場で大ジャンプをすると、100mは離れているであろう直也の眼の前に誤差5センチ以下の精度で抱きつく様に降り立った。
「主様、あのスケルトン達はバイオレット・ブラックブルームの手下達で、バイオレットの指示で畑を耕しているそうだよ」
「そう、じゃあターゲットは」
「間違いなく、ここにいるね」
淡々と何の疑問も抱かずに報告を受ける直也をよそに、
「ねえ、マリー。私の眼悪くなっちゃったのかしら? 今、無詠唱魔法で飛んだように見えたけど?」
「ええ、無詠唱で魔法を使っておもいっきりスンゴイスピードで飛んでいましたね」
「凄い凄い! 本当にお話できたんだ!」
「旦那様、こっちのいちごも超旨いぞ」
驚きを通り越して驚愕しているサクヤにマリー、両手を叩いて凄い凄いと言い続けるリーシェ、ずいぶんと静かだと思っていたら畑の野菜や果実をずっと食べあさっているレーヴァ。なんだかんだで、まだまだ余裕のあるアマテラスのメンバーだった。
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