不死のダンジョンへ
依頼請負判定会議から3日後、直也達アマテラスの面々はセフィラの町から北東20キロほどの離れた険しい山々に囲まれた峡谷にある不死のダンジョンの入口に立っていた。ダンジョンの壁からはあちらこちらから濁った水が浸み出していて、ダンジョン全体が凄くジメジメとしている。
下層階へと続く生臭い匂いが漂う階段の壁には
「ダンジョンを攻略せんとする者よ、汝ら一切の執着と希望とを捨てよ」
と、真っ赤な鮮血が滴っているかのように彫られて、ダンジョンから漂う匂いと相まり不気味な雰囲気を醸し出し、ここに立っているだけで、もう直ぐにお家に帰りたいという衝動に駆られてしまう。
「はうう、もう帰りましょうよ。ここは何か様子が変ですって。何だかおかしいですって!」
「旦那様、ここはジメジメしていてあたいも変な感じがする。とても嫌な感じがする。一度帰って体制を整えて、2度と来ない方が良い感じがするよう」
エルフのリーシェと火竜のレーヴァは半泣きなって帰ろう、帰ろうと、直也やアマテラスのメンバーに訴えかけている。
「 確かにとても嫌な感じがするけれども」
直也は偵察を兼ねて内部へと続く階段を一人で降り、第一層の様子を覗き込む。そこは薄暗いレンガで出来た迷路の様な作りになっていた。
直也は自身の霊気を高めて第1階層にむけて隅々にまで浸透するように放つ。すると放たれた霊気はアンデット達を倒しながら階層中に広がり下層ヘと繋がる階段を探しだした。
「大丈夫、もう何もいないから降りておいでよ」
そう手招きしながらみんなに伝える。
「空気が澄んで、嫌な匂いが消えています。直也さん、もしかして今何かしました?」
「恐らくですが、霊気を使って全体を浄化したのでしょう」
前回の地竜の討伐に不参加だったことが大層御気に召さなかったらしく、サクヤとマリーは何としてでも何があっても今回の仕事には着いていくと言い張り、ほぼ強制敵に町の仕事をアマテラスのメンバー全員に手伝わせ、今日のこの日に何とか間に合わせていた。
「えー、主様。そんなことをしたら面白くないじゃないですか。せっかくテーマパークに遊びに来たのだから楽しみましょうよ」
元大罪の魔王アスモデウスだけに、全くアンデットモンスターに動じないアスはまるで遊園地に遊びに来たカップルように直也の腕を抱いてピッタリを寄り添う。
「 ムムム、アーちゃん少しはしゃぎ過ぎよ。ここはダンジョン油断してはいけないわ」
「そうだぞ、アス。少しの油断が命取りになる。先陣は直也と私に任せて後ろに下がっていなさい」
サクヤとマリーは諭す様にして、力強く速やかに直也の腕からアスを引き離す。
「ブー、主様と一緒に色々周ってみようと思ったのに」
ダンジョン攻略の肝試しデートを楽しみにしていたアスは、直也から離されてぶつぶつ文句を言っている。
「ちょっと待って下さい。私達を置いていかないで下さい。どうしてスタスタと行っちゃうんですか!」
「旦那様、あたいを置いて行かないでおくれよ。動けなくなってしまうじゃないか」
リーシェとレーヴァはお互いに抱き合いながら真っ青な顔で唾を散らしながら訴えて来る。かなり切羽詰まった精神の状態の様だ。
「ごめん、ごめん、ここはもう大丈夫だから二人共降りておいでよ」
いつも元気な二人が、本気で幽霊を怖がっている姿を見て直也はふと魔が刺してしまい、2人を少し脅かすいたずらドッキリを思いついた。
「本当にもう大丈夫だから、うわっ!!」
怖がる二人に近づいて、彼女達の後ろの暗闇を指さし驚いた顔と声をあげる。
「後ろ!後ろ!」
「ギャーーー!!×2」
効果てきめん二人はパニックになってしまい、外にではなくダンジョンの奥に向かって走り逃げだしてしまった。
「ちょっと、待って。嘘だから。二人共ちょっと待ってよ」
「主様もなかなかの意地悪ですね」
「まああの二人ならば何があっても大丈夫でしょうしね」
「さあ、直也。我々もモタモタしていないで二人を追いかけるぞ」
直也達は、ギャーギャーと二人の悲鳴が聞こえて来るダンジョンの奥に向かい走りだした。
直也達がリーシェとレーヴァを追いかけてからもう数時間が経過していた。不死のダンジョンには断続的に爆音と悲鳴が鳴り響き二人の無事を教えてくれる。
どうやら二人はずっと休まずにアンデットを倒しながら逃げ続けているようで、より恐ろしくて怖いダンジョンの下層階へと確実に足を進めているようだった。
「一体どこまで逃げるのよ。あの子達は?」
リーシェとレーヴァはダンジョンの階層主をも秒で倒して攻略階層の記録をドンドンと塗り替えていく。
2人の快進撃は第10階層ボス「黒ピエロ鉤爪のフレディー」を倒し、階層間の安全エリアに足を踏み入れるまで続いたのであった。
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