酔っぱらいの人間観察
直也達が最後にパーティー名を告げて登録が無事全て完了すると、一行は今後の活動について簡単な打ち合わせと称したシャロンの主催の昼食会(ギルドに併設されている酒場の個室で)が行われた。
S級A級の冒険者が3人所属、C級冒険者として登録をしたが実力はB級以上でA級並と思われる4人。冒険者ギルド史上他に類を見ない超々大型ルーキーパーティーと強い繋がりを持つために、シャロンが個人的に用意した歓迎の席だった。
リーシェとレーヴァはテーブルの上に処狭しと、並べられている豪華な酒と料理を見てからというもの、どうやら人の声や周りの音が聞こえなくなった様で、涎を垂らしたまま美味しそうな料理から視線を外そうとしない。
そんな二人に苦笑しつつ、みんなに飲み物がいき渡ったことを確認したシャロンは乾杯の挨拶を始めた。
「私はあまり堅苦しいことは嫌いなので、本当に簡単な挨拶をさせていただきます。では、ゴホン、冒険者パーティー”アマテラス”の皆さまの輝かしい前途を祝して乾杯!」
「乾杯」×7
高らかな乾杯と共にグッと一気に杯に注がれた果実酒を飲み干したリーシェとレーヴァは、我先にと料理に貪りついた。リーシェはサラダや高級果物をレーヴァはとにかく肉料理を、次から次へと口へ運んでいく。
「今日はみなさん、好きな物を好きなだけ食べて飲んで下さいね。あ、店員さんお代は全部テックギルマスにツケておいて下さいね」
「この料理とても美味しいですね」
「直也、好みの料理があったら教えてくれ。今度私が作ってやろう」
「トリュフうま、フルーツうま」
「主様、このお酒美味しいですよ、ささ、グイッとどうぞ」
「肉うま、オーク肉うま、ワイバーン肉うま、肉のまるかじり一番うま」
「直也様このお料理美味しいですよ、一口いかがですか? はい、アーン」
「イズナさん、気持ちは嬉しいけど自分で食べられますから。ほら、シャロンさんもいる事ですし。今日のところはその気持ちだけで十分ですから」
静かに様子を窺うシャロンは驚きを隠せない。
(あのイズナ様がデレている?大陸でも間違いなくトップクラスの実力者で悪魔やS級魔獣の討伐は数知れず。伝説の武神イズナ様が?少女みたいな顔でアーンしてるし。信じられないけどもデレデレのチョロインとの報告もあったわね)
シャロンはアルコール濃いめキャロット・カクテルを飲みながらジョニーの報告書の内容を思い出す。
「直也さん、こっちのも美味しいですよ。どうぞ遠慮しないで下さい。はい、アーン」
(なに?サクヤ様もこの男に?精霊魔法と召喚魔法を操る天才美少女魔導士。あのフェンリルを召喚してお手をさせていたとの証言もある。今S級に最も近いA級というところかしら。
ええと、確か現在あの男を自宅の離れに無料で住まわせていると。メイド達の証言ではあの男はヒモで生活費は一切払っていないとか)
グビグビ。
「ふー、お酒美味しい。これおかわりお願いします」
「イズナ様、お嬢様、私の直也が嫌がっているじゃないですか。私が直也を全部お世話しますから、お二人とも直也から離れていて下さい」
(シラサキ家のメイドのマリーさんでしたね。彼女は忍びでおそらくマスタークラスの実力者。他には確か、彼女はあの男を囲うための自宅購入を検討中との報告があったわね。私が直也を養いますだったかしら。あの男最低よね!)
グビグビグビ、ぷはー。
「ふー、店員さんおかわりーお願いします」
「直也さん、これ美味しいです。一緒に食べましょう」
(彼女はエルフのリーシェさん。エルフだけあって魔力はなかなかの精霊魔法使い。町のゴロツキに絡まれていた所をあの男に助けられて、そのままなし崩しにお持ち帰られてしまった。
その後にナニがあったのかは分らないが、あの男の傍から離れられないほどにのめり込んでしまったそうだとか。許せないわれ、ヒモのくせにあんな可愛い子連れ込むなんて!
グビグビグビグビ、はー美味しい)
「ぷはー、店員さんおかわり頂戴」
「主様、このお酒とても美味しいよ。一緒に飲みましょうよ」
(なんて可愛いいの、まだ幼さ残る従者のアスちゃん。生き倒れていた所を拾われたそうだけろ。出自は謎だけろ魔法少女というのに超変身。ヒック、変身後には各種能力が大幅には強化されるがその力は未知数でふ。報告ではあの男には幼女趣味があり、俺は幼女が大好きだ、彼女のことが一番好きだとの発言があったようだとある。まだ、年端も行かないあらしの美少女を騙して自分の従者にするとは、くされ外道のちくしょーめ!)
ヒック、グビグビ。グビグビ。
「おはわり頂戴!」
「旦那様、あたいも、肉うまうま、かまって、うま、おくれよう」
(口ろお肉で一杯にして、旦那しゅまかまってと言っているのは、一見普通の人間にしら見えない終焉の火竜レーヴァテイン。ドラコンの中のドワゴン。つーか、しゃべるか、たべるかどっちかにしろよな。ヒック。あらしはのみますけど!
えー、たしかドラホンのなかまでも絶対に彼女とは目を合わしぇないと言ふし。全くどうやって人間があんにぁのを手なずけたのよ。グビグビぷはー。報告によれば、あの男を旦那様と慕いどうやら既に全身をくまなく弄ばれぇているとか。もうあたいの体で旦那様の唇が触れていない場所なんて何処にもないの、ドラオンの発言もあり。・・・どうやってあの、ヒック、終焉のドラロンを手籠めにしたにょだろうか? ヒック。さけうめーな)
グビグビグビグビ!
「おかはり!」
シャロン報告書に書いてあった直也の所業を思い出しながら、濃い目のキャロット・カクテルをグビグビと飲みまくりながら、女性陣に好き放題にされている直也をモニタリングする。
(ジョニー・セクハラ・テックギルマシュは、恐りゃくあの男の実力は、イズナしゃまや、レーヴァテイン級ではないかと。だがしかし!あの男についての報告や姿を見るかぎりては、とれもとれも信じることはできませーんからー)
グビグビグビグビ。
「おはわり!」
(何とかしぇてあの鬼畜男のつゅからをヒック、力を確かはめてみたい。ヒック。グビグビ、ふー。そぉれにあの男の所業が本当でぇあれば、私がアスちゃんを救い出してあげなければ。ヒック。グふふ、これは私にとってもとても大事なこと)
「ヒヒヒ、ウマクいけばあすしゃんはウィー、ヒック。わらしのもの。ヒャヒャヒャ!、店員さん、こえもうひっぱいおかわり」
シャロンはベロンベロンに酔いながら、7杯目のアルコール濃いめキャロット・カクテルを御替わりする。
(わらしがぜったいにあいつろしょうたいろあばいてやう)
シャロンは完全に目が座った真っ赤な顔で直也を捉える。ニヤッと笑い服の胸元を少しはだけさせるとフラフラと立ち上がり、直也ね正体をさぐる作戦の状況を開始した。
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