パーティメンバーの候補者

 エルフの女と手を繋いでいる直也をみた時、サクヤは思わず怒ってしまった。


(直也さん、貴方は目を離すと直ぐに女性と仲良くなってしましますね。仲良くエルフの女と腕を組んで現れた時には、流石の私でもイラってしました。恋人同士みたいに手を繋いで、腕を組んで。私だってまだしたこと無いのに!)


 怒りに支配されつつも、目の前に座る直也を見ていると、次第と怒りが薄れて恋しさが募ってくる。


 (私の目の前で、女と仲良くして嫉妬をさせるなんて)


 「本当にいけない人」


  サクヤは一人セルフで、恋の駆け引きで直也に敗北し、愛しさを募らせていった。


 


  どうしてサクヤが冒険者ギルドの特別講師なのか?という直也の疑問はさておき、講義は思ったよりもスムーズに進んでいる。やはり天才と言うだけあって、全くの素人が聞いても、しっかりと理解することが出来る内容となっている。


 簡単な出席者同士の自己紹介をした後、講習は冒険者の社会での役割から入って、冒険者としての心構え、基礎知識、専用装備品からアイテムの必要性までを説明し、現在はパーティーの重要性を熱く語っている。

 座学講習の時間も残り後少し、話への熱の入れようを見ると、恐らくサクヤが本日で一番話をしたかったのは、このパーティーについてのことなのだろうと推測できた。


 「・・・と言う事で、冒険者はパーティーを組んで助け合って行動するのが重要です。直也さんのあなたの職業と得意な戦闘スタイルはなんですか?」


  サクヤが直也を指名し問い掛ける。


 

「一応剣士だけど、近接格闘戦の方が得意かな」


 

「近接戦アタッカーですか。と、なればやはり魔法による支援がとても必要になりますね。私の様に優秀な精霊魔法使いの回復と攻撃、バフとデバフが絶対に確実に必要となりますね。逆に私以外の仲間は要らないといえるほどに、私が必要だと思います」


(私がパートナーです。それ以外は認めません。二人で恋の冒険に、愛の冒険者登録を・・・ウフフ)


 

「誰だよあいつ、気に入らないな。さっきから、サクヤ様と馴れ馴れしく話やがって」


「何でサクヤ様があんな奴に」


  同じ講習に出ている、主に男の冒険者見習い達から嫉妬の声が上がっている。本人達は、こそこそ小声で話をしているつもりなのだろうが、しっかりと部屋中に聞こえている。聞こえていないのは、妄想に耽っているサクヤ位だろう。


 (なんか、面倒くさくなりそうな予感がする。サクヤさんあまり余計なこと言わないでよ)

直也はため息をついてしまう。


  講習が終了時間になったため、トリップしているサクヤをそのまま、ジョニーが立ち上がり締める。


 「サクヤさん、ありがとうね。良かったわよ。そうね、冒険者として色々な依頼をこなすには、信頼出来る仲間が必ず必要よ。一人では出ないことも、仲間となら出来るわ。助け合い支え会わなくちゃだめ、死んでしまったらつまらないもの。」


  パンパンとてを叩き講習の終了をつげながら、「午後は戦闘訓練よ、楽しみにね!」と言い終えると直也に近づいときた。


 

「午後の戦闘訓練も出て頂戴ね。面白くなりそうだし。直也、あなたサクヤさんとどういう関係なのよ、随分仲が良いみたいじゃない?」


 

「少し前に色々あって、お世話になっているんですよ」


 「そうなの、色々ねー」


  

 リーシェは 講習が終わって、参加者に囲まれているサクヤとジョニーと話す直也を見る。

 サクヤは直也と、何か関係があるのだろう。このまま自分が何の行動もしないままで終わってしまえば、多分もう直也とはただの知り合いで終わってしまう。それは嫌だ。私は直也さんに強い興味を持っている。彼が持つ何かにすごく惹かれている。リーシェは何としてでも、ここで直也との自分の縁を強いものにしたいと思った。

 勇気を出してリーシェは直也の席の前まで歩いていくと、


 「直也さん、お願いがあります。さっきも話ましたけど、私は精霊魔法と回復魔法も少し使えます。直也さん、私のパートナーになってもらえませんか?私、頑張ります。魔法も家事も頑張ります。ですから直也さん、私の冒険のパートナーになってくれませんか?」


 「なかなかに良い組み合わせじゃない、ねえ直也。剣士と精霊魔術士は相性良いわよ。貴方達はプライベートも仲が良さそうだし、どう一緒にやってみたら?」


 ジョニーの意見を直也は少し考える。


 (冒険者になって仕事をするのは問題ないな。パーティーを組むのも、別に良い。けど、もう少しお互いを良く知ってからのほうが良いよな。取り敢えず仮と言うことで)


 「そうですね、まずは仮とい「直也さん、待って下さい!直也さんのパートナーは私です」


  サクヤが人混みを掻き分け叫ぶように、訴えながら近づき、


 「直也さんは私のパートナーです。あなたは、他を当たって下さい」


 「嫌です。私も直也さんのパートナーになりたいんです」


 「無理ね。直也さんのことは私が一番良く知っている。直也さんには私一人で十分なの」


 「会ったばっかりですけれど、私だって直也さんのこと一杯知っています。直也さんは優しくて、強くて、手を握りしめると嬉しそうにして抱きつくと喜びます!」


 (リーシェさん確かに嬉しくて、喜んだけど、人前であまり言わないで!)


 「な、な、そ、そんなの私だって知ってるわ。直也さんは私のお尻が大好きなの。一緒に家にいる時に、わざとショーパン姿でいると、ずっとチラチラお尻を見てるもの」


 (あれは罠だったのか!でも、確かに僕は可愛いお尻から目が離せなくなってしまう。ってかサクヤさん、一緒に家にいる時にとかなんで、こんな場所で言っちゃダメだって)


  直也が周りをそっと確認すると、まだ室内にいた見習いさん達がヒソヒソと三人を見て話をしている。サクヤは町で有名な美少女だし、リーシェもエルフの美少女だ。そんな二人に慕われる直也にジョニー以外の男達は殺意をも孕んだ嫉妬の視線を送っている。


 (サクヤさんとリーシェさんの話は、私が一番とか私が尽くすとか、論点がずれ違う話になっているような気がするし、ギャラリーの嫉妬の感情がどんどん強くなっている気がする)


 悪化の一途を辿るこの現場を収めようと直也は二人の間に入り込み、まぁまぁと二人を宥めながら話した?


  「二人共に落ちて、パートナーて言うかパーティメンバーの話だよね?僕は必ず二人じゃないといけないとかは思ってないから、取り敢えず三人でやってみない?どうかな」


 「さ、三人でやるって、直也さん本気ですか!?私、今まで付き合ったことも無いのに、いきなり三人でですか!?」


 「直也さんがそう言うのなら、直也さんの傍にいれるのだったら私は構いません。けど、ちゃんと貰って欲しいな」


  サクヤは混乱し、リーシェは覚悟を決める。


「あいつ最低。なに三人でって。しかも、こんな人前で言う?」


「サクヤ様は絶対にあいつに騙されているんだ、俺が助けてあげないと」


「エルフっ子は僕が」


「次の戦闘訓練で、殺っちまおうぜ」


  ギャラリーの皆は、直也を睨み付けて悪口を言う。


 

「あれ、さっきより悪くなったぞ?」


(なにがいけなかったのだろうか、僕は三人でパーティを組んでみようと提案したつもりだったのだけど)


 直也は自分で自分の首を絞めてしまったようだ。


  一段と騒がしくなった現場、直也は、サクヤとリーシェに問い詰められ、ギャラリー達は(特に男)嫉妬の感情を隠そうともしなくなり、次の戦闘訓練で直也を亡き者にしようと企む始末。荒れに荒れた現場に声が響いた。


  「みんなそこまでよ!此処は私に預からせて頂戴。誰が直也に相応しいか、私が判断してあげる。午後の訓練で直也をかけた勝負をしましょう」


  ギルマスのジョニーが間に入ったおかげで、この場は取り敢えずの何とか収まった。


  だが、この時はまだ誰も気が付かなかった。ジョニーの提案は、どちらが、ではなく、誰がと言っていたということに。


 


 


 


 


 


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