ギルドの初級者講習

 直也とリーシェは「歓迎!冒険者ギルドへ、ようこそ」と書かれた大きな看板がある建物の前に立っていた。木造の二階建てで広さは建坪で300坪くらい、一般の住宅8軒ほどの大きさだろうか、左右対称の建屋の真ん中には大きく重厚な扉がついていて大人の男性が、4,5人ほどなら同時に通る事が出来そうだ。


 「ここが冒険者ギルドか」「ここが冒険者ギルドですね」


  ふたりの息はぴったりで仲良く声をハモらせた。笑顔で見つめ合う。そして二人で一緒にギルドの中に入ろうと、大きなドアに手を掛けようとした時に声を掛けられた。


 「あら、貴方達見かけないお顔ね?お初の方々かしら?」


  声をかけてきたのは、中性的な30代くらいの男性。甘く整った美しい顔つきの茶色い髪の毛の男性。長髪を後ろで縛って纏めている。


 

「はい、冒険者についての詳しい話を聞きたくて」


 「そうなの、私はここで一応責任者をしている、ジョニー・デックよ」


 

「高杉直也、ナオヤ・タカスギです」


 

「リーシェです」


 

 「ふーん、貴方が例のね。まぁ、いいわ、ヨロイクね」


「?」


  直也は少し引っ掛かるものを感じたのだが、ジョニーが握手を求めてきたので2人は素直に応じる。ジョニーは握った直也の手を中々放そうとせず、何かを確認しているような感じで「いいわ、いいわよ」と、小さな声で言っている。 若干だが、引き始めている直也の手をようやく離したジョニーは、息がかかるほどの距離まで近づいて、


「貴方達は運が良いわよ。今日の初心者講習の講師は、町の有名人なのよ!お代は取らないから話を聞いていきなさいな。為になっても損することは無いはずよ」


 「まだ登録するかも分からない僕たちが、講習を受けても良いのですか?」


 「いいの、いいのよ。こんな機会滅多にないんだからね、さぁ、入って」


 

 二人は進められるがままギルドの中に足を踏み入れた。現在の時間は10:00を少し過ぎた頃で、冒険者ギルドの中は閑散としていた。登録している冒険者達は早くからギルドを訪れて依頼を受けて出ていくため、これくらいの時間はいつも職員しかいないと言う事だ。


 「ギルマスおはようございます」


「はい、おはよう」


  受付で仕事をしいる職員の女性達が一斉にジョニーに挨拶をしている。


 「え!ギルマスって、ジョニーさんはギルドマスターなのですか?」


 

「そうよ、さっき責任者をしているって言ったじゃない、もう直也ったら」


  ジョニーは片目を閉じてウインクすると、「もう、メッ」と右手の人差し指で直也の鼻先に触れてくる。リーシェはスッと2人の間に入り込み、両手を広げて直也を守りるように、何やらジョニーを警戒した視線を送っている。


  「あらあら嫌われちゃったかしら。まあいいわ、講習まではまだ時間があるから特別に私がギルドの簡単な説明をしてあげるわ」


  ジョニーが二人をギルドに併設してある酒場の席に案内をしてくれる。席に着くとリーシェは素早く直也を守る様に隣の席に着き、ピタッとくっついた。その様子にほほ笑みを見せながらジョニーは話を始めた。


 「冒険者ギルドは様々な経由で入ってきた依頼を、冒険者の皆様に紹介するのがお仕事よ。簡単で安い報酬の仕事から、命がけですんごい報酬の高い仕事までなんでもあるわ。勿論、誰でも好きな仕事を選べるわけじゃないわよ。甘ちゃんが、高額依頼なんかに手を出したら直ぐに死んじゃうもの」


  おどけた様子のジョニーは自分の首とトントンと開いた手で叩くと話を続ける。


  「だから、冒険者にはランクと言うものがあるの。駆け出し冒険者はE級、可も無く不可も無く、普通の冒険者はD級、ベテラン冒険者のC級、知る人ぞ知る冒険者のB級、誰もが力量を認めるエリート冒険者のA級、そして生きる伝説のS級冒険者」


 「ランクは、達成した依頼や貢献度の他、条件をクリアすることで上がるのだけど、まぁ一生をかけてもB級にまでの到達がほとんどね。A級から上になるには持って生まれた才能やギフトがものを言うわ。言わば天賦の才能が必要ね。普通の人じゃ絶対に越えられない壁があるもの」


 「さっきも言ったけれども無理して格が上の依頼を受ければ死んじゃうから、冒険者は自分のランクに見合った仕事までしか受けられない。そう言うことになっている訳。何か質問ある?」


  簡単な説明を終えたジョニーに直也は少し手をあげてジョニーに質問をする。


 「依頼というのはどのような種類のものがあるのですか?」


 「色々よ、町のお掃除から薬草探し、護衛依頼に魔物の討伐依頼なんかが多いわね。時期やタイミングなんかもあるけれどね」


 「そうですか、分かりました。リーシェは何かある?」


 隣のリーシェに尋ねると小さく首を振った。


 「まあ後は実際に冒険者になってからね。ほら、習うより慣れよって言うじゃない」


  ジョニーの説明会が一段落し、直也が周囲を様子を確認して見ると、いつの間にかギルドに少年や少女の姿がちらほらと見え始めていた。既に20人位はいるように見える。

 ジョニーはギルドの壁にかけている時計を見ると「そろそろね」と呟いて、ギルドの受付の前まで歩いてこちらに振り向き、集まっている冒険者の卵達に声をかけた。


 「みんな集まっているわね。そろそろ、お待ちかねの初級冒険者の講習の時間よ。さぁ早く2階にある会議室に移動して頂戴、今日の講師は凄いわよ」


  直也とリーシェは少年少女達の後ろ、最後尾について2階の会議室に向かって歩く。卵達はみんな緊張しているのか表情が硬い。みなに続いた直也が最後に会議室に入ると、女性ね怒声が響いた。


 「遅いわよ!そこのあなた!そう、女と、二人組で、最後に入って来た、あなたよ!貴方はやる気があるのかしら!早く席に着きなさい!そうね、一番前の、私の目の前!この席に!あなたは!座りない!」


  怒りを露に、直也に自分の目の前席に座れと指示をするは、若干18歳の若さで天才の名をほしいままにする、天才精霊魔術士で天才召喚術士の臨時講師サクヤ・シラサキ。ばっちりとレディース用のパンツスーツを着こなし、伊達の眼鏡をクイクイしながら腕を組み、見事な位にキレていた。


 


 


 


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