セフィロトの町
生命の樹は「契約者の一族」と呼ばれ、神と契約をしたと言われる者の子孫達に守られ祀られている。
一族は生命の樹を囲むように湖の上に作られた町セフィロトに住み、最古の森で採れる貴重な薬草や鉱物の行商、そして獣や魔物の狩りをして暮らしていた。
町に住む住民には、ドワーフやエルフ、獣人などの亜人と言われる種族の者もいる。神魔の大戦時からお互いを助け合い協力して暮らしている為、差別や偏見、争いも無くこの世界では極めて珍しい多種族共存型の町となっていた。
セフィロトの町では神樹たる生命の樹を厳しく管理しており、神事以外での生命の樹の恩恵の使用を禁じていて、葉や実などの貴重な素材は一切市場に出ることが無い。
そのため素材として貴重な生命の樹の葉や実は高額で売れるため盗みに入る賊や樹を狙う魔物も多く存在するため、「ガーディアンズ」と呼ばれる自衛治安維持組織の兵士達が生命の樹を守っている。
ガーディアンズには約1,000名の兵士が所属している。セフィロトの町で生まれた者であれば種族や男女も関係なく入団する資格があり、厳しい試験を乗り越えた者だけが見習いとして入団することができる。見習い団員は半年間に及ぶ厳しい実戦式指導訓練を受け、総仕上げとなる実戦試験、総合火力演習に合格することが出来れば晴れて一人前の兵士としてみなされ任務につくことが出来る。
ガーディアンズの兵士一人一人は戦闘や魔術に優れ、エデンの平均的な兵士に比べて驚異的な戦闘能力を持っている上に、皆ギフトと呼ばれる特殊な能力を身に宿している。
ギフトは一族が千年前に神から授けられ代々受け継がれてきた力で、身体や魔力の強化や補助、特殊技術、特殊能力や魔法の習得など多岐に渡る。ギフトは親から子へと受け継つがれて魂に宿ると言われており、両親が共にギフトを持っている場合に、父母のどちらかのギフトを継承することが多い。だが、まれに両親両方のギフトの継承やどちらのものでも無い新しいギフトの発現、両親の持つギフトが進化した形のギフトを獲得する場合もあり、未だに継承についての詳しい仕組みは解明されていない。
優れた力を持つ者が集まるガーディアンズの中でも別格とされる強さを持つ者達がいる。
大戦前から生きている半神ガーディアンズの団長「イズナ・シルバー・フォックス」とナンバーズと呼ばれる序列上位の達だ。
上級悪魔や災害級の魔物の討伐など、人の力では太刀打ちできないと思われる事態に即応、鎮圧や討伐を行う。その人とは思えないまさに一騎当千の実力は大陸中に轟いており、他国の騎士や兵士からも恐れ敬われている。
かつて、とある大国が生命の樹と豊な資源を持つセフィロトを奪うため、大軍を率いて町に進攻して来たことがあった。大国の万をも超える軍隊を、ガーディアンズ団長とナンバーズの兵士で迎え撃ち、その並外れた戦闘力をもって敵軍を
まさに個が千をも超える力を見せた戦いで、ナンバーズの持つ圧倒的な戦闘力が大陸中に轟き、以降は生命の樹や略奪を目的にセフィロトに戦争を挑んでくるような国は無くなった。
セフィロトの町の代表は代々「契約者」の直系子孫で、生命の樹の加護を受けるシラサキ家の当主が治めている。
現在の当主は18歳になったばかりの女子、サクヤ・セフィロト・シラサキ。昨年の春に両親が相次いで行方不明となり、一人っ子のサクヤが代理としてセフィロトの代表をとなった。
生命の樹に寄り添うように建てられている、生命の樹を祀る大社の屋敷でメイド達と暮らしている。
曲がったことが嫌いで可愛い物が大好き。誰にでも優しく接することができるので、一族の老若男女問わず人気が高い。容姿にも恵まれていて容姿端麗、羞月閉花。柔らかく温かい印象的な眼が特徴で、少し茶色がかった艶のあるきれいな腰まで届く黒髪は彼女の魅力を引き立てている。背も高く健康的な整った身体は女性の眼から見てもとても良いスタイルだ。
サクヤは幸運にも精霊魔法と召喚士のギフトに恵まれて、12歳の時には既に一族屈指の実力者に数えられるほどの力を持ち、他にも一族に伝えられている武術「合気」の研鑽も積んでいて、武道家としての実力もかなり高いものを持っている。
美しく、知性と才能、魅力に溢れるサクヤは、当然町の男性からの人気も非常に高いので、交際や結婚を申し込んでくる者も多い。しかし、今のところはサクヤは恋愛に全く興味は無いようで、町の仕事や魔法の研究にその青春を捧げている。
いつも明るく笑顔の絶えないサクヤは、セフィロトの町の多くの住民に慕われ助けられながら、町の代表として、生命の樹の管理者として日々多くの仕事をこなし、充実した生活を送っていた。
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