第27話 超絶VIPなアルバイト
「では、こちらをご覧下さい」
シンディード代表の宇迦野さんは5枚の履歴書をカバンから取り出しテーブルの上に置いた。
私はいつの間にか隣のテーブルに座らされていて履歴書を見る事が出来ない。
そっとテーブルを覗こうする私を運命の女神フォルトゥーナことフォルさんが絶対に覗くなよ! これは、私の仕事!と、睨みを効かせて牽制をし、宇迦野さんは笑顔のままで履歴書が見えない様テーブルの上にカバンを置いて壁を作る。
この一連の虐めの動作は一呼吸の内に行われ、さっき会ったばかりのはずの二人が何故にこんなにも息があった連携プレイが出来るものなのかと、私を興奮させる。
いや少し落ち着こう。私は自分用のコーヒーカップに注がれたお湯を飲み、一息を入れる。
「今日の白湯も美味しいね」と、 私はお湯を入れてくれたフォルさんに感謝する。
談笑をしながら美味しそうにコーヒーを飲む2人を見て、私は落ち着くどころかソワソワしてしまう。
まだだ、まだ早い。そんなに急いて結論を出す必要はない無い。落ち着け私。落ち着け私。
私は再びコーヒーカップのお湯を飲む。
少し冷めて丁度良い水の風味になったな。
・・・ゾクゾク!「ううッ!」
何故か私は熱めの吐息を漏らしてしまう。
「商談中に変なキモイ息遣いは止めて欲しいの」
「失礼ですが私もそう思います。今は大事な仕事の話し中なので場を弁えていただきたい!と、思います」
まるで嫌いな虫を見る様な視線を受けて私は少し熱くなってしまう。
大事な仕事の話だと? さっきまで男性アイドルの推しの話をしていたじゃないか? よくもそんなことが言えるな!
私はグッと堪えて我慢する。そうしないと思わず言ってしまいそうになる。私は喉にまで出かかった声を何とか呑み込んだ。
「なんか言いたことでもあるのなら、言ったらどうなの」
「ふん、態度だけは一人前というところですか」
二人は椅子から立ち上がると大嫌いな虫の死骸を見る様な嫌悪感が多分に含まれた目で椅子に座る私を見下ろす。
クソ、こんな仕打ちなんか、仕打ちなんかに負けるか! 駄目だ、言っちゃ駄目だ、言っちゃ駄目だ、言っちゃ駄目だ、言っちゃ駄目だ、言ってしまえ!
「ご褒美ありがとうございました!」
私は立ち上がり二人に最敬礼をもって礼をする。礼をしながら思ってしまう。
癖になってしまったかも、と。
「では改めてご紹介をさせていただきます。まずはこちらの柱から」
宇迦野さんはフォルさんに履歴書を渡して紹介を始める。
「こちらはこの国で太古から太陽として崇められている方で名をアマテラ、いえ伊勢さんです。ご希望はウエイトレスで週7日で1日24時間の勤務を希望されています」
「うん、やる気がビンビン伝わってくるの」
「はい、とてもまじめで優しい方で太古から民達に愛され続ける、この国になくてはならない方ですから。志望動機は師匠に使えたいから。恐らくフォルテゥーナ様のことだと思われます」
「世間を良く分かっている、中々に見どころがありそうな子なの」
週7の24時間の勤務のウエイトレスって伊勢子君、君はここに住むつもりかなのかな?
「2柱目、この方もこの国に縁の柱さんで元武神さん、最近急な心境の変化があったらしく、本気でアイドルを目指す男の娘のスサノ、いえスノオさんです。志望の動機は監督の教えを受けるためとか。私が思うにこの監督というのはフォルトゥーナさんの事ではないかと。ご希望は看板娘で週7日で1日24時間の勤務、空いた時間にアイドル指導を希望されています」
「この子は逸材なの。でも私少しかぶっている所が気になるの。うん、看板娘とかアイドルとか。でも男の娘だから問題はないか?なの」
そうかスノオは本気でアイドルを目指しているのか。
「3柱目は女神です。この方ほ先のお二人とご縁のある方でツクヨ、いえダークネス・つくよん様。えーと今は他で働いておりますが、こちらで採用が決まった際には現職を辞めて勤めていただけるとのことです。ちなみに現在は、世界の深淵の底闇に住む魔物に感情を奪われた悲しき光の巫女アイドルことです。志望動機は取り戻すため、との事でご希望はお嫁さん兼厨房業務全般で週7日の24時間勤務を希望しております。私が思うに、このお嫁さんとはフォルさんが作るお店のお嫁さん的な何かだと思われます」
「外国の方みたいな名前なの。神職の巫女さん手作り料理か、ムム、ムムムッ、何かキそう。インスピレーションひらめきが来そうなの!」
確かにつくよんの作る料理名は興味があるな。闇に奪われた光のアイドル巫女妻を目指すか・・・、濃い目だけども是非頑張って欲しいと思う。
「4柱目も女神で、類い稀なる美貌の持ち主歌って踊れる天才ダンサー。アメノウズ、いえ、えーと嬢さん。志望動機は自分の限界を超えるため。希望はアイドルウエイトレス週7日1日24時間の勤務。教官の元で舞いの神髄が知りたいとのことです。私が思うにはフォルトゥーナ様の美しさの神髄が知りたい、そういう事だと思います」
「そんな止めて欲しいの。私の事を銀河の妖精なんて呼ばないで欲しいの。恥ずかしいから三千世界で1番の美少女って言って欲しいの」
嬢は元々が凄い真面目な柱だったからな。自分の限界を越えたいか。とても素晴らしじゃないか。
「5柱目は髭がダンディーな注目の若手のオオクニヌ、いや、出雲さん。えーと、国の運営や管理が得意です。何でもします。頑張って働きますので宜しくお願いします。志望動機は仕えたいため。希望は特になし。御社に全てお任せします。これは私が思うにフォルトゥーナ様の熱烈なファンなのではないでしょうか。全てを捧げるなんてなかなかできませんし」
「そう、気持ちは嬉しいけれど髭の親父は嫌なの」
安心してね、出雲君私は君の良い所は知っているよ。6個は直ぐに言えるからへこたれないでね。
「以上が今回お勧めさせていただく神材です。いかがでしょうか?」
「うむ、確かにとっても粒ぞろいで迷ってしまうの。それに今は少し人件費も節約したいの」
「勿論、今回ご紹介させていただいた神材は我が社始まって以来の超絶ビップな神材です。ですが本日は初めてのお取引となるため、初回限定の特別な割引を御用意しております。
「でも、お高いんでしょう社長さん、なの」
「今回は通常紹介料金5景円のところを!限定特別紹介料金でしかも5人全員を採用していただくと、料金はなんと、なんと、なんと0円でのご提供です!」
「安いの、本当に良いの」
「はい、今回はさらに生涯賃金無給の特約までサービスさせていただきます」
「本当に大丈夫なの?」
「はい、ここで何としてでも契約していただかないと、私は皆様に殺されてしまいますので」
「分かったの、だったら思い切って全員雇ってやるの」
「流石はフォルトゥーナです。ありがとうございます。ありがとうございます。では、早速皆様に入っていただきますね」
「皆さん、張り切ってどうぞ!」
「え?」
カランコロンカラン
宇迦野さんの声にお店のドアに付けられている鈴が鳴り響くと、大きなバックを背負った男女5人か入って来た。
「師匠・監督・あなた・教官・オタ王様・今日から宜しく願いします」
彼らは息を揃えて大きく頭を下げ、元気な声で私に向かって挨拶をするのであった。
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