第18話 神様 計画する

 朝目覚めると「岩戸」の襖は閉じている。伊勢くんはまだ眠っているみたいだ。私は居間から伊勢くんを起こさない様にでると、御付きの人に風呂に案内してもらう。昨夜は伊勢くんに止められて風呂に入ることが出来なかった。一刻も早くスッキリしたかった。


 伊勢くんの家の風呂は総檜でとても広い。


 いや、ちと広すぎるな。


 かけ湯して体を洗い湯船に浸かる。


はぁー、えー。


 とてもいい湯だ。気持ちがいい。手足を伸ばすどころか、泳ぐこともできる。建物の中なのに檜や松の木が浴槽の傍に植えられ、大きな庭石というか岩と言えばいいのか、それらが綺麗に重ねられ、その間から温泉の源泉が流れ出している。これが、噂の源泉かけ流しの湯。なかなかにというか、かなりいい。一人ゆっくり湯船にはいっていると、ガラガラと入り口の戸が開く音が、聞こえる。


 湯が少し熱めの湯になっているので、湯気がもうもうとしていて、入ってくる者の姿がわからない。これは、どちらのお約束だ?


 温泉、湯気とくれば、えっちな方か?それともがっかりの方か?


・・・入ってきたのは


 

 がっかり。金髪のスノオと髭の出雲さん。


「あっ、先公がいる」


「おはようございます。オタマイスター様」


  流石は出雲さん。中間管理職なだけあって、よく人をみている。オタマイスターとは、まんま私のことの様ではないか。いいぞ、いいぞ。


「ヲタスター、昨日は申し訳ありませんでした、少し飲み過ぎたようで、ご迷惑をお掛け致しました」


 出雲さんをもう怒ることなどもう出来ないな。ヲタスターこんな素晴らしい称号。まさに私のことだ。


「さっきから何の話をしてやがるんだ?」


 スノオは首をかしげながら訪ねてくる。


「専務は気になさらないで下さい。こちらの話ですから」


「まぁ、いいや、それより先公、勝負だ!昨日は、はぐらかされちまったが、今日は逃がさない!勝負だ!」


朝からウザイほど元気な奴だ。


 少し我慢しろ。今は、伊勢くんが先だ。



スノオは伊勢くんと聞いた瞬間に暗くなる。


「兄貴か。兄貴は大丈夫なのか?」


 そういえば、前に閉じ籠った時は、スノオが原因だったな。心配は無用だ。私に任せておけ。だが、お前にも協力して貰うからな。


「分かったよ。兄貴のためなら、俺はなんだってする!」


ふふっ、言質はとったよ。スノオくん!


 私は出雲さんに、準備して貰いたい物と集めて欲しい人がいることを伝える。


「分かりました。直ぐ手配します」


 ああ、宜しく。でも風呂で、もう少しゆっくりしてからにしよう。風呂から上がってしまったら私は、ヲタスターとして彼らにも厳しい試練を与えねばならない。


 デビューメンバーの選考。始めは3人位でいいだろう。


 私はヲタスターの力をフルに使って伊勢くんの襖の岩戸を開けてやる。恐らくその余波で幾人かの者にも影響が出るだろう。


 でも、私は立ち止まる訳には行かない。


 どんな犠牲が出ようともやり遂げる。


 


 だって、面白そうなんだもん!


 


 


 


 


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