第17話 神様 カリカリの襖
いや、本日も良かった。まさかあそこで、あの展開が待っていたとは。私もまだまだということだ。
深夜アニメをよそ様のお宅の居間で、立ち入り禁止の厳戒体制をしいて深夜にもかかわらず大声で歌い舞いながら見た私は、非常に良い汗をかいて満足していた。
伊勢くんの家では、VIP待遇で迎えられていて部屋の外には御付きの方がついていた。私はかいた汗を風呂に入って流して眠ろうと思い、部屋を出て御付きの方に案内をお願いしようと、部屋の襖に手をかけた時のことだった。
突然カリカリカリカリ、と何かを引っ掻く音が聞こえてくる。だか、部屋中見ても誰もいないし、音がでそうな物は何もない。気のせいかと、また襖に手をかけると、カリカリカリカリと、また音が聞こえてくる。部屋中を再度確認するが、やっぱり異常は見つからない。
ネズミかなんかか?建物は古そうだからな。
私は一人納得し、三度襖に手をかける。するとドンドンドンドンと、今度は分かる。これは襖を叩く音だ。私は注意深く、広い居間にある押し入れの襖を一つ一つ見ていく。すると部屋の右奥にある押し入れの襖に、一枚の半紙が貼ってあることに気が付いた。もしやと思い近付いて半紙をみると「岩戸」書かれている。先ほど力を使った時は伊勢くんの状態以外はあまり気にしてはいなかったため、引きこもっている場所までは気にしなかったのだが、まさか居間で引き込もっていたとは。
やはり彼は、何かを持っている。とりあえず、彼の属性に、かまってちゃんと加えておいた。
私は押し入れのに向かってこえをかける。
「伊勢くん、君はそこに居るのか」
少しすると、カリっと一回音がする。
「伊勢くん、押し入れから出て来てはくれまいか?」
少しすると今度はカリカリっと二回音がした。
ふむ。では
「伊勢くん、押し入れから出たくないのか?」
・・・カリ。
「伊勢くん、どうしても出て来てはくれないのか」
・・・カリ。
「君の固い決意は分かった。では、眠いのでまた明日。じゃあ」っと手をあげ軽く挨拶をしてその場を去ろうとすると、
カリカリカリカリカリカリカリカリカリと、カリカリ私を引き留める。
襖が、ほんの少しだけ開いて伊勢くんが片目だけを見せる。その目をうるうるとさせて、行かないでと訴えかけている。かなりメンドクサイ。
「伊勢くん、君は私に行かないで、そう言っているのかい?」・・・カリ。
「でも、私はもう眠い。明日にしてはもらえないかな?」・・・カリカリ。
円らな瞳で私を見ている。
「・・・伊勢くん君は寂しいのか?」
・・・カリ。
私は、大きくため息をつくと、御付きの方を呼んで居間の畳に布団を敷いて貰い、伊勢くんと一緒に眠ることにした。
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