第15話 神様 屋敷に到着
ようやく伊勢駅で到着し、酔っぱらいを結社高天原の若い衆に引き渡す。彼らは皆非常に緊張し本当に申し訳なさそうに頭を下げ謝罪をする。今にも土下座をしそうな勢いだ。私は彼らに言ってやる。
そんなに気にしなくても良い。私は非常に温厚な性格であり、ガンジーすら脱帽すること間違いない生きたオタケ、いや、ジャングルの方じゃなくてね、オタクと仏をかけてのオタケね。ちょっと分かりにくいギャグだったかな?緊張をほぐして、場を温めようとしたんだけどな。
彼らは秒で忖度する。
いや、そうではないかと思っていました。なあ、みんな。会長が尊敬され、取締役が自ら迎えに上がられましたので、どの様な方かと思っておりましたがユーモアに長けた、懐が深い方でありましたか、と。
うむ。そう言う君も中々良いものを持っているようだね、これから宜しく頼むよ。ところで会長って誰の事?えっ、伊勢君?伊勢君って偉かったんだ。その辺の話はちゃんと聞いていなかったから、知らなかったよ。
この後の予定はどうなっているのかを聞くと、先方としては一刻も早く私に来て欲しいとのことで、すぐに伊勢くんの自宅まで行くことになった。車で閑静な住宅街を抜けて少し走りると広大な敷地の中に、明らかにこの世の物ではない、神気を放つ門が現れる。
門は神や高天原の社員、もしくはそれに準じる神職に身を置く者にしか見えず、さらに門をくぐるためには一定上の魂の位階が必要になるそうだ。 私は門の前で車を降り、徒歩で難なく門をくぐる。実は少し不安だったのだ。人に身をやつしてから、年甲斐もなく少し過激な発言や行動を取っていたためだ。
門をくぐって少し歩くと大きな屋敷が見えてくる。その屋敷の玄関に続く道には、これからパレードでも行うのかと思わせるほどの大勢ギャラリーが溢れるほど集まっている。人の姿をしている物や動物の姿、どちらの括りにも当てはまらない姿の物達が、皆私に向かって最敬礼をしたままの姿で微動せずに立っている。その総数はおそらく軽く万を超えていて、空に近く天の川銀河のきれいな輝く星明りと相まって、荘厳な雰囲気を醸し出している。
伊勢くん来たよー、
などと軽く言ってしまった日には冷たい視線にさらされ凍死してしまうだろう。
出来るだけ威厳が出るようにと思うが、今の人間30代男性の姿では如何ともしがたい。これは仕方なく少しだけ神気の開放が必要かと考える。私は地球に降りるとき、人の身で勝負すると決め神の力に制限をかけている。だが、ここは厳密には地球ではないし、この国の神が一堂に集まっているのであれば、ここで礼に失することをしたくはない。私はすべての起源をとなる柱だ。
私は少しづつ力を開放していく、意識がどこまでも広がり、伊勢君が引きこもっている押し入れや持っている物、悩んでいる内容まで手に取るように理解した。さて解決には少し仕込みが必要だな。 そんなことを考えながら集まった者たちに一言声とかける。
みな、大儀であったと。
私の声はここにいるすべての者に届けた。見ると、震えている者や泣いているのもが大勢いた。皆に続けて声をかける、
今日ここに私は居なかった。今日のことは胸にしまい、他言しないようにと。
私は神気を消して人の身に戻ると屋敷に向かって歩み進める。今回はあくまで私は神としてではなく一オタクとして力を貸すために来たのだから。
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