第13話 神様 よいしょをされる

 髭に一筆書いて貰って示談は成立。私は書類を懐にしまう。


 それでこの騒ぎの発端となった、伊勢くんの話を詳しく聞いてみることにした。


 ロックオン事件の3日後の朝に半裸で自宅に帰り引きこもった話は聞いている。彼の身に何が起こっているのか、とても心配だ。

 髭の話では、伊勢くんが岩戸の押し入れに引きこもってから早1週間。彼は少し態度を軟化させ、回復の兆しが見えてきているのだが、押し入れの戸を3センチほど開けてその僅かな隙間から、外の様子を窺う状態が何日も続いているらしい。

 会話は出来ないが彼は目で何かを訴えているらしく、その件について相談したいとのことがあるとのことだ。


 相談とはどういうことかと詳しく聞くと、伊勢くんはどうやら私が来るのを待っているらしい。


 以前はアメノウズメさんと言う嬢が、引き籠った伊勢くんに、ハニートラップを仕掛けて外へ連れ出すのに成功したらしいが、伊勢くんもさすがに2度は同じ手に引っ掛からないらしく、今回は既にそのミッションは失敗しているそうだ。


 彼には弟がいるそうなのだが、その弟の証言から伊勢くんは何かに怯えているらしい。

 押し入れの中に何かを持ち込でいるらしいが、何をしているかは分からない。が、時折、


 少女の叫び声にも似た、悲鳴のような叫び〇が聞こえるとか、聞こえないとか。



最後に髭は言った。


 このまま伊勢くんが引き込もっていれば、この国には、夜明けが訪れることが無くなり、永遠の闇が訪れてしまいます。メイド喫茶「ロックオン〇トラトス」で何があったのか、一緒にあの場へ行った御身なら、オタ道に精通し、その道のプロである御身にしか、この解決することが出来ないと思い、奏聞させていただきましたと。


 そうか、わかる、わかるよ。出雲さん。そうだ伊勢君もこの国も心配だな。一刻も早く彼の力になってあげるべきだ。


 ところで、さっき君が言った言葉の最後ら辺が、その、良く聞こえなかったので、悪いけれども、もう一度、聞かせてはくれないだろうか。・・・奏聞させて、いや、もう少し前だよ、出雲さん。


そう、そこだよ、そこ。オタ道の件(くだり)。


・・・・・・


 やはりそう思うか、出雲さん。だが私は、まだまだオタ道の神髄には程遠い若輩、修行中の身だ。だが、いずれはその神髄、頂を目指す者としてはこれ以上ない励みの言葉だ。


 私の神としての力では無く、オタクとしての私の力が必要だというのなら、私は喜んで力を貸そう。


 そうと決まれば今から行くぞ、出雲君。急げ、出雲君。

 

 私は君たちのためになら、オタクの全能力を持って力になろう。




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