第12話 神様 恩を仇で返す

 意識と取り戻した髭を、大きめの足ツボマッサージのマットの上に正座をさせて、理由を問い詰める。

 

 伊勢くんの件で連絡が取りたかったのですが、連絡が着か無く心配になって来てしまいました。失礼な事だと思いましたが、窓から覗いた所、倒れている御身を見つけましたので、医者を手配した上で、腹を切る覚悟でご自宅に上がらせていただき、処置をさせていただきました。


 訳を聞いて思い当たる節は無くもない。


 メイヤたんをメインヒロインに推した私はあれから三日三晩不眠不休で、彼女の、彼女達の生き様の一片に触れた。


 全てが終わった時、私は感動で泣いて鳴いていた。その後の記憶がない。



 彼は私を心配して来てくれたらしい。髭から貰ったスマホには、確かに何度もの着信があった。


 そうだったのか。ありがとう、髭。とても嬉しいよ。


 だが、私へのセクハラは別問題だ。髭、お前は容疑者ではない、現行犯だ。私がその髭でどんなに傷ついたか。どんな思いをしたのか分かるか、髭!


 私の心と記憶の傷はもう消えることは無い。だが髭。お前が誠意を見せてくれれば。誠意を、形ある誠意を見せてくれさえすれば、その形を見るたびに、私は今日のお前の謝罪を思い出し、乗り越えられる気がする。


 分かるか髭、形ある、誠意だ。分かるか、髭。



 直後に開かれた弁護士を挟むことのない慰謝料協議は被害者側の訴えを認めて、制作素材パーフェクト・グレード5個で決着、手打ちとなった。




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