第23話 美少女とイチャイチャする。そして真偽を確かめる

 そんな決意を抱いた俺だったが、その夜奇跡が起きた。


 まず舞さんと食事した後、俺が一番目、彼女が二番目に風呂に入った。

 この前は一緒に入ったりしたが、さすが連続は緊張するだろうと舞さんが俺を気遣ってそういう事にしたのだ。もちろん互いの同意があったらもう一回入るつもりだが。


 ともかく俺が部屋で待っていると、風呂上がりの舞さんが姿を現した。


「悠二君、どう……? 可愛い……かな?」


 舞さんは今、薄ピンク色のネグリジェを着ている。

 恥ずかしいからか耳まで真っ赤になって、上目遣いで俺に尋ねてくる。その姿は……美しいとしか言いようがない。


「に、似合ってるよ……すごく可愛い……」


 いわく、タンスに眠っていた代物というが、それでも舞さんにとても似合っている。


 スタイルがいいので薄いネグリジェがそれを強調してくれているし、なおかつ薄ピンクという色が絶妙にマッチしている。

 やはり美人は寝間着によって様になるのだと実感した。


 こんな姿を見せられたら、どんな男性もハートを射抜かれる。

 俺だって例外ではない。


「か、可愛いだなんて……。これ、初めて着たんだけど……」


「本当だよ、嘘じゃないって! 今の舞さん、すっごく魅力的だから!」


「悠二君……~~っ!」


「うわっ!」


 悶えるような表情をした後、舞さんが俺を抱いてベッドに寝転がった。

 ネグリジェが薄いせいで、身体の感触が前よりも分かりやすくなっている気がする。そこに追加攻撃するかのように漂うシャンプーのいい香り……。


「悠二君の方が可愛いよ……というかあなたに可愛いって言われて……嬉しくなっちゃう……」


「舞さん……」


 そんな綺麗な顔で愛でるように言われたら、暴走してしまう。

 しかしそこまでは舞さんも考えていないと思うので、俺は必死に留まった。というよりこのままで十分である。


「お願い……寝てるだけでいいから……抱かせて」


「…………」


 俺が無言で頷くと、舞さんが自分の身体へと引き寄せてくれた。ついでに頭も撫でてくれる。

 豊かな胸が気持ちいい。緊張するどころか、俺は安心して眠れる事が出来た。



 ********************************



「……よしっと」


 清々しい気分のまま、俺は朝日を浴びながら着替えを終わらせた。


 ベッドには未だ寝ている舞さんの姿。昨日してくれた行為のおかげで、何だが色々と元気が出てきた。

 ……なお別にそういうのをした訳ではない。あくまで一緒に寝ただけだ。


「これなら1人で行けるな。ありがとう舞さん……」


 舞さんが不在でも大丈夫だろう。俺は彼女に感謝の意を込める。


 そうして最後に手紙を書く事にした。さすがに何も伝えないまま外に出るのは失礼だからだ。

『これから戦闘の鍛錬しに行ってくる。昼には戻るから』。その紙を舞さんの近くに置いて、彼女が起きないようにそっと家を出る。


 それからは光さんが示した住所を頼りに、足を速めた。

 彼女が言うには噴水のある公園に行けば分かるとの事。


『誹謗中傷のクレームに晒される中、防衛軍は行方が分からない巨大怪獣2号の捜索に当たっており……』


 電気屋の前を通りかかった時、店前のテレビにニュースが報じられていた。

 かいつまんで説明すれば海龍型の怪獣2号が未だ発見できず、防衛軍が悪戦苦闘しているとか。なお2号と言えば、舞さんが『サーペント』と名付けた個体でもある。


 とにかく今は関係ないようなので、すぐに電気屋を後に。

 そして目の前にそれらしき公園と、1つの人影があった。


「光さん」


「あっ、悠二クン!」


 公園前に立っているのは光さんだ。


 休日という事もあって、彼女は私服を着ている。

 白い肩出しトップスにデニムショートパンツ。明るい彼女に似合った服装で、なおかつ魅力的だ。


「すいません、待たせてしまって……」


「ううん、大丈夫だよ。というか走ったから喉乾いてない? ジュースおごってあげるけど」


「いえいえそんな……というかこれからどこに?」


「ん? ああ……その話は公園の中でいいかな? うん、そうしよう。今なら人いないから」


 光さんが公園に指を差す。

 確かに早朝なので誰もいない。


「別にいいですけど」


 俺はそのお言葉に甘え、一緒に公園に入った。


 中は錆ついた遊具と砂遊び場、申し訳程度に1つ設置されたベンチというありふれた構造。

 それらを見回していると、前を歩いていた光さんが振り返る。


「……えっと、今日は暖かいね。日向ぼっこにもってこいかなーなんて」


「まぁ、そうですね。というか光さん、大丈夫ですか?」


「えっ、わたし? いやいや大丈夫だよ、すごく元気!」


 とびっきりの笑顔で答える光さん。なのだが俺はもう察していた。


 笑顔も言動もぎこちない。どこかそわそわしているし、目が常に泳いでいる。

 どうみても何かに対して緊張しているサインだ。


「ほら、自販機が見えてきたよ。何か買ってあげようか?」


「……いえ、大丈夫です。それよりも光さん、1つ尋ねてもいいですか?」


「質問? いいよ、何でも聞いて」


 本人がそう言っている。ただしこの質問を口にしたら最後、方向に変わってしまうかもしれない。


 かといってそれを見ない振りをして、なぁなぁで流してしまう事も出来ない。

 

 俺にも躊躇いの気持ちがあった。あったのだが、ここで言わないといけない気がしたのだ。




「光さんですよね? 2週間前、俺の前に現れた巨人は」

 

「…………」


 図星。

 光さんがそんな風な表情をして、俺を見つめていた。

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