第6話 その頃神(35歳フリーター)は…①

「ブェ〜〜ックシイイィッ!!のわぁ⁉︎画面がハナまみれに!!ティッシュ⁉︎」

私はオオヤマ。今日もクールにホットな農作業を終えて、僅かな余暇をゲームに勤しむナイスガイだ。

12代続いた我が家の水田は、今年も安定した生育を示している。人も雇い、完璧超人な叔父にほとんどの仕事を任せてしまっているため、今では畦畔管理のみが私の仕事になってしまっている。そのため、膨大な余暇が生まれるわけだが、その殆どをゲームに捧げてきた、敬虔なゲーム信者である。

今日は、我が幅広いゲーム人脈を駆使して、究極の中世歴史シミュレーションゲーム、「ザ・グレート・ダイナスティー」というゲームの初プレイがメインイベントである。

このゲームは、精巧に再現された箱庭中世世界で、数ある国の、無数の伯爵家の中から一つの家を選び、その家系を絶やさずに維持する、というのが目標のゲームだ。

プレイヤーはその伯爵家の当主個人を担当して、内政・軍事・諸侯との外交関係などを操作する。

家臣やその他の諸侯、もちろん自分のキャラクターにも、能力値やスキル、特性などが無数に設定されており、誰一人同じ能力や性格をしていない。

勢力図や地形なども細かくカスタム出来る仕様であるため、無限に遊べる、時間泥棒の呼び名も高い、そんなゲームである。

さらにもう一つの特徴として、公式説明書には、このゲームで使えるあらゆるチートコードを網羅した一覧表が添付されている…つまりは、公式公認チート無限のゲームなのだ。

もちろん、ネット対戦ともなると一切のチートは禁止されるが、シングルプレイの場合は、理想の国づくりが簡単に、容易に出来てしまう。

しかし、あらゆるチートが許されているからこそ、最高に面白く、最高に虚しくなってしまう…玄人向きのゲームと言える。


初起動、初期設定を終了。世界観は、現実の歴史に即した配置とし、ランダムにプレイアブルキャラ、もといプレイアブルダイナスティーを決定。いよいよゲームが動き出す。

久々に心躍る名作に出会えた予感に、オオヤマの顔面にはちょっと公共の電波には載せられないスマイルが浮かんだ。

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