第5話 Full-Thin伯爵

そうして意気盛んな我がFull-Thin伯爵は、その勢いも激しく、荒々しく書き出されたモンタギュ伯爵領の地図を持って、大胆不敵・超絶不可能な開発計画をぶち上げだした。城の大規模拡張工事、新たな商業都市、協会所領、男爵領の新設の4つを柱として、それぞれを早急に建設、拡張していき、この西フランク王国随一の都市へと成長させるというのだ。現在、この伯爵領の城は、ほぼ木造の砦に毛が生えたくらいの規模であるし、未開の空き地ばかりが広がり、天然の良港はあるにはあるが、とても発展する様子を想像できない。

要は、このド田舎伯爵領を1年の間に、わが国の首都たるパリ市をも凌ぎ、遠く音に聞くビザンティウム以上の街を作り上げるという、荒唐無稽もいいところな計画である。まず第一に資金が・・・と思いかけて、無限に噴き出す金貨を思い出して、資金の心配はブン投げることにした。しかし問題は山済みである。いや問題しかない。そんなこと、実際の建設工事を担う我らが家宰が許すはずが「閣下!!良いんでないかい!?十分に実現可能だと思います!」な・・い・・・?

あれ?なんで?フラヴナ壊れたん?

「閣下のお力があれば、一日で都市は大きくなっていく。奇跡のような力ですが、皆、その奇跡を目の当たりにしたくてうずうずしておりますぞ!」

チエオルノス先生の眼はありゃガチだ。狂信者みたいな目をしている。関わらない方が良い

シャルルもこぶしを突き上げてバーサククライをあげているし、ヴァランスはうっとりとクリスティアンの・・・どことは言わないが、見惚れている。

うん、私は「さんせい」と書いた札を立てて、その場をしのぐこととした。結局会議の終わりまで、クリスティアンの服は間に合うことがなかった。


昼食をとり、それでは我らが閣下の「奇跡の力」を目の当たりにしようと、城中の全員が外に出された。その場しのぎの服ゆえに、クリスティアンはぱっつんぱっつんだが、誰も文句は言わない。

「それでは皆の賛同が得られたところで、まずはこの城を少しずつ拡張する!フンッ!!」

なんとも言えない力の込めようであるが、クリスティアンはクソまじめな表情だ。後で壮大な私をハメるドッキリだったら、どうしてくれよう・・・と、思っていると・・・


そして奇跡は顕現した。


なんと、石造りの胸壁が出現、城外にいる我々すらも取り囲んで、三重の石垣が生えてきたのである!!!


領民狂喜乱舞、もちろん評議員たちも狂喜乱舞の上、皆がクリスティアンを神のように崇め始めたのである。

「いや、そんなんありえんでしょう・・・」私のつぶやきは、爽やかなイケメンムーヴを発するクリスティアンのイケメン笑いにかき消されたのであった・・・

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