第3話 激変

クリスティアンに落雷した後も、雷鳴は一向に落ち着かず、評議員も領民も関係なく頭を押さえて逃げ惑う。私も大混乱の極みにあったが、とっさにうつぶせに寝転がり、必死に周囲の状況を把握する。

週末の日じゃ、審判の日じゃ~!!!とチエオルノス先生は叫びのたうちまわっているが、超常現象を前に少しサディスティックに笑っているし、シャルルは混乱して抜き放った剣に落雷し、気絶したようだ。フラヴナは窪みで体を震わせているし、ヴァランスはクリスティアンに駆け寄り、必死に揺さぶっている。

こんな超常現象に伴う大混乱がしばし続き、やがて曇天を切り裂く一筋の光がクリスティアンとヴァランスに降り注いだ。ピタリと雷鳴は止み、何か荘厳な音楽が遠く聞こえる気がする。

そして、全員の意識を奪う光の奔流が走り、全員の意識は真白に染まった・・・


「・・ャー、・ジャー・・・・ロジャー!!」

飛び起きた。知っている円卓に知っている顔の同僚、ここは・・・評議場?

「お前さんが居眠りなど、私の授業がクソつまらなかった時でもなかったじゃろうに・・・疲れておるのか?」

先生が心配してくれる。ウトウトしていたらいつも無言+笑顔で聖書をぶん投げてくる先生が、だ。しかも・・・なんか若返ってないか?どう見ても40代のチョイワルオヤジ司教にしか見えない!?・・・違和感しかない。

「お前さんは最近、アキテーヌ公との難しい折衝ばっかりしてたからさ、休みでも取った方が良いんでないかい?」

フラヴナも心配そうに顔を覗き込んでくる。いつも疲れている私を見て、男前な笑顔を浮かべながら「実はこんな問題が発生して・・・」と、さらに疲れる難題を押し込んでくる人間だったはずなのに・・・おかしい・・・

「・・・zzz」シャルルは寝ていた。うん、いつも通り。後で殴ろう。ダメージ通らないけど。

「・・・ロジャー・・・無茶・・・しないで・・・?」

深窓の令嬢然とした出で立ちで、鈴の転がるような声色・・・え?誰?・・・ヴァランス!?なんかチョー美人になってる!?元々美人だったのに!!?何事!?

評議員仲間のあまりの変貌ぶりに大混乱をきたしてしまい、私は救いを求めるように勢いよくのっぺり伯爵が座っている上座を見た。

そこには、ギリシャの彫像のような完璧な男性美と、恐ろしいまでの知性を隠し切れていない金色の瞳、そしてその肉体美を惜しげもなく公衆の面前に晒した、神が座ってましました。

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