第32話 岩山地帯
夜の岩山地帯を目の前にして、あれから俺たちは数回交代しながら見張りをした。
かなり夜も更けて、冷えてきた。今は時間で言うと深夜の四時くらいだろうか。時計が無いから分からないが、月の位置でなんとなくそのくらいの時間だということがわかる。
「はぁ。二時間交代だとあんまり寝た気がしないなぁ。こんなことならちゃんと寝ておくんだった」
ヨミヤは相変わらず影の中でお休み中だ。俺も光の中にでも入ることが出来たらいいんだが、生憎光の中というのはイマイチよくわからない。俺は夜空に浮かぶ星を適当に線で結びながら、オリジナルの星座を作って時間をつぶしていたその時だった。
「深夜に失礼します。ちょっとお時間よろしいですか」
寝ているはずのヨミヤが俺の後ろに立っていた。人気のないこの場所でいきなり声をかけられたので俺は驚いて飛び跳ねてしまった。
「おわ! ……なんだヨミヤか。まだ交代の時間には早いぞ。何か急用か?」
「あ、そうですね……。アマギさんは、どうしてアヴェロン王国に帰ろうとするのですか? もう、私たちの村で過ごすという選択はないのでしょうか」
何をいまさら言い出すんだ。なぜアヴェロン王国へ帰ろうとするのか? それはもちろん、俺が今までお世話になってきた人たちや、仲の良い人もたくさんいるからだ。そして何より、俺が勇者ギルドに登録してそこで活動するのが楽しかったからだ。人の役に立つというのはとても気持ちがいいものだ。
……といっても、アレクパーティに入ってからはあまり楽しくはなかったけど、街の人はみんないい人なんだ。
「……なんでそんなこと聞くんだ? ヨミヤらしくないな。街の人々の役に立てるのが楽しいし、あの街が好きだからだよ」
「そうですか……諦めれば楽になれると思うのですが、私は間違っているのでしょうか」
「俺は諦めたくないよ。この件もアレク達が仕組んだ罠なんだとしたら、俺はそれを跳ね返してやるさ」
「……そうですか。見当違いの事を聞いてしまいましたね。私はもう少し寝るとします」
そう言うとヨミヤは歩いて茂みの中へと帰っていった。
どうしたんだろう、何か様子が変だったな。疲れて頭がどうかしちまったんだろうか。
不思議なヨミヤの態度に疑問を抱きつつも、俺は時間まで再び星を線でつなぎ始めた。
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あれから何度か交代を重ね、ようやく太陽が昇りあたりが明るくなってきた。
最初は疲れが取れるか心配だったが、意外とどうにかなるもんだ。体調はバッチシである。
「おはよう。じゃあ、あの岩山地帯を登っていくか」
「おはようございます。そうですね、気合を入れてまいりましょう」
昨夜のことはもういいのだろうか。昨日のネガティブな様子はなく、いつも通りやる気に満ち溢れている。
俺たちは身支度を整え、岩山地帯へと足を運んだ。
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「結構登ってるけど、まだ見えないなぁ」
「地図によるとそろそろ見えてきてもおかしくないと思うのですが……」
あれから岩山を登り続け、中腹くらいのところまでやってきていた。
頂上まで登れば何か手がかりがあるだろうか。そう思っていた矢先、俺たちに向けられた視線がある事に気が付いた。
「ヨミヤ、俺たち何かに付けられてると思わないか?」
「アマギさんもそう思いますか? 私も少し前から視線を感じます」
俺の背中から何か殺気のようなものを感じる。もうアカトルムの領地に入っているのか、それともただの野生動物化はわからない。
「気を引き締めていくぞ」
俺は一切気を抜かないまま、再び足を進めた。
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「もうすぐ頂上だな!」
「長かったですねぇ!」
あれから八割ほど登ったあたりで殺気を帯びた視線は感じなくなり、俺たちは頂上の手前まで登ってくることが出来た。ゴツゴツと岩山でかなり足に疲労がたまっている。とりあえず一旦頂上まで行ったら休憩しようと考えていた。
――ドシャァァァン!
「な、なんだ!?」
あと少しで頂上という所で、俺たちの進む方向に土煙を上げながら何かが落ちてきた。
迂回する道はなく、その土煙の正体を探るしかない
「おい! 何者だ! 言葉は通じるのか!」
土煙がまだ晴れることはなく、うっすらとシルエットが見えるだけだ。
そのシルエットは尻尾が生えているように見え、二足歩行だ。
ようやく土煙が晴れたかと思うと、そこにはリザードマンのような手と足が緑色のウロコで覆われており、爪が鋭く尖っている。緑色の尻尾も生えており顔はドラゴンのようだ。手には長い鉄製の槍を持っている。
「もしかして、竜人か! 俺は敵じゃない! 竜人の街アカトルムにようがある、話をすることは可能か!」
――ドシュン!
俺の言葉を聞き終えると、竜人は無言でそのたくましい足の爪を地面にめり込ませ、ものすごい瞬発力で俺たちの方へと突っ込んできた。
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