第30話 ハッピー村との同盟
俺たちは村長の家に集められた十数人のハーピーたちを順番に治療して回った。
ようやく全員の治療が終わったところで、俺たちは一息つくことが出来た。
「ママギくんにヨモヤくん! 本当にお疲れ様じゃ! 一度に全員倒せてしまうなんて、夢のようじゃ。今までは撃退するのが精いっぱいじゃったからのぉ……」
村長ジェフリーは羽をこすり合わせて感謝している。相変わらず名前は覚えてくれていないようだ。
恐らくこれでしばらくはオークの攻撃も止むだろう。
だが、もしいつか次が来た時の為に何か策を練らなければならないな……。
「いえいえ。この村を守ることが出来て良かったです」
俺たちはかなりの成果をあげられたはずだ。ここは是非ともジェフリーの方から同盟を結ぶことについて話を切り出してほしい。というか覚えているのだろうか。
「……そういえば、成果次第で同盟を結ぶという話じゃったな。ママギくんたちはとても活躍してくれた。是非とも、その同盟を結ばせてもらいたい。……むしろこちらから、お願いしたいくらいじゃ」
ジェフリーはにこやかにそう言った。
よし! これでハーピーたちと同盟を結ぶことができたぞ! 一歩進んだ。
「本当ですか! ありがとうございます!」
「やりましたね! アマギさん!」
「あぁ、本当によかった」
俺たちは村長の前だと言うのに、手を合わせて喜んだ。
「それで、確かそちらの村を発展させていくという話じゃったな。なら、この村との連絡網が欲しい。マリア、オルネ村へと行ってきなさい」
「え、え!? あたし!?」
「おまえは飛ぶことが得意だろう。この村の中でも一番森を飛ぶのが上手い。きっとオルネ村でも役に立てるじゃろうて」
「村長がそういうなら……あたしは行ってみたいな!」
「あぁ。行っておいで」
なんということだ。願ってもない、この村から一人こちらの村へと来てくれるようだ。
マリアの飛ぶ速度は戦闘の時に見ていた。匠の技だ。
これならば、俺が居ない間でもオルネ村とハッピー村で情報を共有することも簡単だろう。
「それはとても助かります。よろしくね、マリア」
「こんなに順調に事が進んでよろしいんでしょうか」
「ね。怖いくらいだ」
「よろしくね! アマギ! ヨミヤちゃん!」
俺たちは三人仲良く握手し、村長に別れの言葉告げた。
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「それでは、お世話になりました。また何かあったら言ってください」
「世話になったのはわしらじゃ。マリア、頑張るんじゃぞ」
「うん! すっごい楽しみ~!」
俺たちは村人に手を振りながら、この村を後にした。
「ねぇ。オルネ村ってどんなとこ?」
「う~ん、まだそんなに大きくない村だよ。これから発展させていこうと思ってるんだ。君たちハーピー族が最初の同盟相手さ」
ひとまずシャギーと同盟を組んでいるということは言わなくてもよさそうだ。
然るべき時に話そう。
「そうなんだ! あたしたちが初めてなんだね。なんだかうれしいなぁ」
森を機嫌よくパタパタと空を飛ぶマリアは、まるでダンスを踊っているかのようだ。
「そうだ! ここからどれくらいの時間でオルネ村に行けるか、競争しようよ!」
マリアはそう提案してきた。
面白そうだ。転移の魔法はあるが、それをここで言うのは興ざめという奴だな。
あとで村に着いたときに驚かせてやろう。
「よし! じゃあ競争だ! いくぞ! よーいどん!」
――ビュゴオオオ!
俺がそう言うや否や、マリアはとてつもないスピードで森の中を飛び回った。
「おっさき~!」
「はっや! あいつあんなに早く飛べたのか!?」
「これは村まで一時間もかからなさそうですね。私たちの苦労が嘘みたいです」
あの速度ならあっという間に村に着くだろう。
俺たちはマリアの姿が見えなくなると、転移の魔法を使ってオルネ村へと先に帰ることにした。
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――シュン!
俺たちはオルネ村近くの森の出口へと帰ってきていた。
まだマリアは到着していないようだ。ここでしばらく待つとしよう。
岩に腰掛けながらヨミヤと談笑しつつ待つことニ十分。森の奥から風の音が響いてきた。マリアだろう。
――ビュゴオオオオ!
「あれ!? 二人とももういるの!? なんで!?」
「はは、俺たちには転移の魔法があるからな。先に帰らせてもらった」
「ずるーい!」
俺たち三人は笑いながら村へと歩いて帰った。
「おぉ! アマギ殿! お帰りになられましたか。……こちらはハーピー族ですか!?」
村に入ると、作業をしていたヨアが早速俺たちに声をかけてきた。
マリアを見るや否や、魔族を見て驚いている。
「あたしはマリアだよ! アマギが村に攻めてきたでっかいオークを蹴散らしてくれたんだ! そして同盟を組みました!」
「そういうことだ。これからはこの村にマリアが滞在することになる。俺たちがいない間に何か起こったら、ハーピーの村との連絡を取ってくれる」
「おぉ! 素晴らしい。さすがはアマギ殿ですな。これならばあっという間にこの村が大国にでもなってしまうんではないですか?」
褒めすぎだ。褒めても何も出ないぞ。
さて、ひとまずはハーピーたちと同盟を結ぶことが出来たが、次にどうするかを考えていない。
というのも、魔族の村などこれ以上心当たりが無いのだ。
「なぁマリア。ハーピー以外に知性を持つ魔族が住んでいるところって何か知らないか?」
俺は魔族には魔族の情報網があることを信じ、マリアへと尋ねた。
「うーんそうだねぇ……。次に近いのは竜人の街アカトルムかなぁ。あたしたちの村よりもっと遠いと思うよ」
「竜人か……かなり強そうな種族だな」
「そうだね、かなりの戦闘民族だよ」
もしその竜人と同盟を結ぶことが出来ればかなりの戦闘力を確保できそうだな。
一度その街へ行ってみてみいいかもしれない。
マリアが言うには、アヴェロン王国の南にあるそうだ。
「よし、じゃあ俺たちはその竜人の街アカトルムに行ってみるか」
「そうですね。でも一度ここで休息を取りましょう。私はもう疲れました~」
眠たそうにしているヨミヤを見て、俺たちはオークとの戦闘から一回も休んでいないことに気が付いた。
ここで少し休息をとることにするか。
俺たちはマリアの歓迎会も込めて、宴を開催することとなった。
【あとがき】
これにて第二章ハーピー編終了です!
次回からは竜人編ということで、今までと違ったバトルや物語が展開される予定です!
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