第27話 やっかいごと

「それで、この村に用とは?」


 ハーピーのジェフリー村長が俺に問いかけてくる。


 そう、俺はハーピーが魔王軍との戦いに参加してくれないかを頼みに来たのだ。

 シャギーは名前を出していいと言っていたが、開幕早々出すのは失礼だろう。

 武力や権力でねじ伏せるというような支配は出来ればしたくない。


「はい。それがですね……俺はアヴェロン王国で冤罪により犯罪者に仕立て上げられてしまいました。その真犯人は分かっているのですが、そいつは憤怒の魔王の力を借りて王国を乗っ取り、支配しようと企んでします。もし支配されてしまえば、近隣の村や街も同様に襲われ、勢力を増そうとするでしょう」


 俺は今まで起こったことを事細かく話した。


 もし王国を乗っ取られてしまえば、間違いなくアレクや憤怒の魔王は他の街にも手を出すだろう。

 この世界すべてを支配したがるに違いない。

 初めは俺だけがターゲットだったのに、なぜこんなことになってしまったんだろう。

 何か魔王軍にそそのかされているのかもしれない。


「なるほどな。つまりこのハッピー村も例外ではないと……」


「そこまではまだ予測の段階ですが、恐らく。なのでその戦いに是非、力を貸していただけないかと」


「ふむ……」


 赤い羽根を顎に当て、ジェフリーは悩みこんだ。

 少し間をおいて、ジェフリーは話し出した。




「実はこの村は、そのいつか起こるであろう魔王軍との戦いよりも今、危機に瀕しておるのじゃ」


「危機、ですか」


「うむ。最近ポイズンスネークがあたりに居なくなってからじゃ。オークどもが我々の村を襲ってくるようになった。恐らく、食べ物であるポイズンスネークが居なくなったからであろう。我々は木の上へと村を移動させなんとか凌いでおるが、いったい何個の卵を奪われた事か……」


 俺は胸が痛くなってしまった。

 そうか、俺たちはオルネ村でポイズンスネークを一掃してしまった。

 それで森のポイズンスネークの数が激減し、オークたちが食べ物である標的をハーピーへと切り替えたのだ。


 卵は完全栄養食と言われるほどに栄養がある。きっとそれに気づいたオークたちはもう、ポイズンスネークを食べようとは思わないだろう。


 ジェフリーは羽で顔を覆っていた。



「そうですか……実は、ポイズンスネークの数が減ったのは俺たちのせいでもあります。森の外にあるオルネ村に大蛇ヴリトラとその手下の大量のポイズンスネークが攻めてきて、それを撃退してしまいました」


「大蛇ヴリトラもか!?」


 実際はシャギーが倒したのだが、まぁあと少しで俺も倒せていたことだし、俺が倒したということにしておこう。


「なので、オークの撃退に俺たちも協力します。もしその撃退が上手くいったら、オルネ村とハッピー村で同盟を結んではいただけないでしょうか」


 俺は上手く提案出来たと思った。

 もしこれでダメなら、シャギーの名前を出してみようと考えていた。



「ふむ……ヴリトラを倒せるくらいじゃ。きっとオークどもも蹴散らしてくれるであろう。成果次第ではあるが、ひとまずはその要求を飲もう」


「ありがとうございます!」


「やりましたね、アマギさん」


 俺とヨミヤは顔を合わせ喜んだ。


 ひとまずは第一段階はクリアだ。

 あとはそのオークの戦闘力次第だろう。だがオークはそこまで強い魔物でもない。きっと大丈夫だ。



「マリア、この二人に家を一つ貸してあげなさい。次の防衛線で張り切ってもらわねばならんからの」


 お、今度は名前を間違わずに言えているじゃないか。

 なぜ名前を呼べたくらいで感動しているのかはわからないが、俺はなぜか安心感に包まれた。


「はーい! じゃあアマギとヨミヤちゃんこっちに来て~」


 俺たちは村長の家を出て、マリアの後ろを着いていった。





 外にはたくさんのハーピーが飛び回っている。

 卵を温めるものや、弓を手入れするもの。

 だが基本的に皆オレンジ色の羽をしており、村長とマリアだけ色が違っていた。


「なぁ。聞いていいのかわからないけど、なんでマリアだけ青色なんだ?」


「あぁこれ? なんでかはわからないんだけど、卵の時から色が違ったんだって。極たまーに違う色が生まれるらしいよ。そして違う色のハーピーが縁起がいいとして、おじいちゃんみたいに村長になるんだ」


「へ~そうなんですね」


 ハーピーにはハーピーなりの文化があるらしい。

 そんな世間話をしながら、俺たちは枝を何本か進んだところにある一つのツリーハウスへと案内された。




「じゃ、この家を二人は自由に使ってね! もしオークが攻めてきたら、周りのトラップが作動して凄い音がするから分かると思うよ」


「あぁ、わかった。ありがとうな」


「そんなに気にしないで~!」


 そう言うとマリアは羽ばたいてどこかへと行ってしまった。


 ツリーハウスの中に入ると、ふかふかのベッドが二つに小さな椅子が二つにテーブルもあった。

 この布団は羽毛だろうか……あまり考えたくない。


「じゃあオークが攻めてくるまで何しようか」


「そうですねぇ……スキルの鍛錬でもしましょうか」


「そうだな、暇だしそうするか」


 俺たちはスキルの鍛錬や、ステータスの振り分けなどをして時間をつぶすことにした。


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