第24話 オルネ村再び

 俺たちは転移魔法でオルネ村へと帰ってきた。

 太陽が輝く中、村はいつも通りの日常を送っており、鍛冶屋のオーレンとメリアも新しい武器づくりに勤しんでいた。


 そんな中、俺たちはヨア・アナスタシアの家で事情を話している真っ最中だ。


「なるほど、そんなことが……」


 ヨアは深い唸りを上げ、手を顎につき考えている。


「アマギさんの考えはわかりました。この村を拠点に、新たな仲間を集めアヴェロン王国を襲おうとしている魔王軍と戦おうということですね」


「はい。敵は憤怒の魔王が従える魔族です。かなり狂暴といってもいいかもしれません。なのでこちらも楽観の魔王シャギーに協力を頼む予定です」


 そう、俺たちには同盟を結んだ魔王がいる。

 シャギーに協力を頼むのが一番手っ取り早いと思ったのだ。


 敵の数は全く不明だが、恐らくかなりの数がいると思われる。

 俺とヨミヤだけでは捌ききれる自信が無かった。


 ヨアはこの村に魔王の手下が来るのかと少々不安がっていた。



「大丈夫です。もしシャギーの手下が何かしようものなら俺たちで食い止めますから」


 そういうと安心したのか、胸を撫でおろした。


「わかりました。アマギさんはこの村を救ってくれた恩人だ。今回は私たちが協力する番ですね」


「本当ですか! ありがとうございます!」


 ヨアはこちらに手を差し伸べ、握手を求めてきた。

 俺はそれに答えると、シャギーにも話をするために外へ出て闇夜の鈴シャドウベルを鳴らした。



――チリィィィィン……



 空に鈴の音が鳴り響き、数秒経つと遥か彼方から黒い点がこちらに飛んでくるのがわかった。



「やっほー! アマギにヨミヤ、久しぶりじゃん!」


 楽観の魔王・シャギーが俺たちの前に降り立ち、ヨミヤと肩を組む。


「あぁ、久しぶりだな。来て早々で悪いが、話があるんだ」


 シャギーはきょとんとした顔で俺たちの後に続いてヨアの家へと入った。






「えぇ!? 戦争すんの!? たのしそー!」


 俺はシャギーに今まで話したことを再び伝えた。

 机に手を突き驚いた様子で話すシャギーだが、さすが魔王、話が早く二文字で表してくれた。


「その通りだ。だから俺たちはシャギーの力も借りたいと思ってる」


「う~んいいけど……あたしに魔物の傘下っていないんだよねぇ……」


 目をつむり苦虫を噛みつぶしたかのような表情をするシャギーだが、俺は一つの疑問を抱いていた。

 この村を襲ったヴリトラやポイズンスネークは魔王による使命だと言っていた。



「傘下がいないって……ヴリトラやポイズンスネークはどう説明するんだ」


「あぁあれ? あれは力でねじ伏せて従わせてるだけだよ」


 あっさりとそう言うシャギーは、さすが楽観の称号を持つだけの事はある。


「ねじ伏せてって……う~んじゃあどうしようか」


 俺が一人悩んでいると、ヨミヤが一つの提案をしてくれた。



「ならば、私たちで近隣の魔物の村を訪問して回ってはどうでしょうか」


 手を合わせ笑顔でそういうヨミヤは、少し怖く見えた。


 そう、この世界には二種類の魔物がいる。

 一つは知性を持たずに単独で行動する魔物。

 もう一つは知性を持ち、村を築きある程度の言葉を発する魔物。


 俺たちが目指すのは後者だ。ヴリトラのようにある程度知恵を持った魔物の村を訪れるという作戦だ。



「それが一番確実かもしれないな。よし、それでいこう。シャギーはついてきてくれるか?」


 俺たちだけでは魔物を説得するのは難しいかもしれない。

 そう思った俺はシャギーに同行を頼んでみた。


「え~めんどくさいよ~。あたしの名前は出してもいいからさ、そっちで適当にやっといて~」


 手を横に振り面倒くさそうに話すシャギー。

 さすがに楽観なだけあって面倒ごとには首を突っ込まないらしい。



「そうか……でも名前を貸してくれるのは助かる。それで交渉してみよう」


「じゃ、戦争するときになったらまた呼んでね~」



――ガシャァァン!



 そう言うや否や、シャギーは家の窓ガラスを突き破って空へと帰っていってしまった。

 その恐ろしいスピードに俺は別れの言葉を言う隙もなかった。


「あいつ、また治さないといけないじゃないか!」


「まぁまぁ、シャギーさんも名前を貸してくれるみたいですから、我慢しましょう」


 そう俺の肩に手を置きなだめるヨミヤ。


 俺たちは明日、一番近い鳥型の魔物ハーピーがいる森へと向かうことになった。




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