第23話 濡れ衣

 あれから俺たちは大急ぎでギルドへと向かった。

 転移魔法でギルドの前に転移し、扉を開ける。


 中にはアレクパーティやその他勇者、受付嬢といつもと変わらぬメンツがそこにはいた。

 しかし、いつも俺を見るやちょっかいをかけてくるアレクは、ニヤニヤとした様子でこちらを見ている。

 そしてアレクの横には今まで見たことが無い、白い長髪で片目を隠している男がいた。


 中にいる人の様子も、何か変だ。

 俺を指差しざわざわとし始めた。


 俺は受付嬢に何があったのかを聞くことにした。


「すみません、ヨミヤの洋館が立ち入り禁止の結界魔法を張られてしまっているのですが、何か知りませんか?」


 そう問う俺を受付嬢は無言で俺たちの右の方を指差す。

 その先には一枚のポスターがあった。



「どれどれ……」



『アマギ・ライネスは国王侮辱罪により捜索中。見かけたら通報せよ』



 ポスターには赤字で大きくそう書かれていた。

 そしてその下に魔法で動く証拠動画が載せられており、そこには俺が広場で国王を無能だの使えないだのと侮辱している様子が映っていた。



「アマギさん、これって一体……」


 ヨミヤは驚いた様子でポスターを見つめている。


「ど、どういうことだ! 俺はこんなこと言ってないぞ!」


 これは明らかに捏造だ。俺が居ない間に何者かが仕組んだものだと確信した。



――王国でやる事も済んだしな



 俺は脳裏にアレクが言っていた様子がフラッシュバックした。

 そうだ、アレクは王国で何かやったんだ。


 そう思いアレクの方を見ると、まだニヤニヤした様子でこちらを伺っている。

 となりの白髪の男は無言で椅子に座っていた。


 俺は何とか弁明しようと、受付嬢に話しかけた。



「すみません! あれってどういうことですか!? 俺はあんなこと言ってません!」


 しかし、受付嬢は犯罪者とされている俺と話すことを許可されていないのか、答えたくても答えられないといった様子だった。


「くそ……洋館の差し押さえも、ヨミヤが俺と一緒に行動しているからか」


「これは非常にまずいですね……どうしましょうか」


 俺とヨミヤがどうしようかと悩んでいると、受付嬢がこっそりと一枚の手紙を渡してきた。

 それを受け取るのを確認すると、受付嬢はそそくさと持ち場へと戻っていった。



「なんだろう、これ……とりあえず人気のない所へ行こうか」


「そうですね、ここに長居していると警備兵がやってくるかもしれませんし」


 俺たちは皆が俺たちを見る中、ギルドを離れた。


 街の裏道まで避難し、受付嬢から貰った手紙を読むことにした。



――アマギさん、今あなたは国王侮辱罪により捜索願が出されています。私はあなたがこの街にいないことは知っていたのですが、あの動画が証拠となり私の話は誰も聞いてくれませんでした。しかし私はアレクパーティの新しい仲間があなたの姿に変身するところを見ました。恐らく幻属性の持ち主だと思います。それのせいでアマギさんは今犯罪者に仕立てあげられてしまっているようです。そしてアレク達はこの国を乗っ取ろうとしている話を小耳にはさみました。この街に長居すると危険です。早急に立ち去った方がお二人の為かと思います。ご武運を。



 手紙にはそう記されていた。


「幻属性だって……? 何かに変身するスキルか、もしくは変身しているように見せかける幻かどっちかだね」


「かなり厄介な相手ですね……この国を乗っ取ろうとしているというのも気になります」


 確かに、この属性があれば何でもできそうに思えた。

 アヴェロン王国はかなりの大国だ。乗っ取らせるわけにはいかない。


「もしこの国を乗っ取ろうとしているなら、俺たちがそれを阻止すれば国王は話を聞いてもらえるかもしれないな」


「一理あります。しかし、どうすれば……」


 ヨミヤは深く考え込んでしまっただが、俺には一つ思い当たることがあった。


 もし国を乗っ取ろうとしているのなら、アレクは魔王軍の力を借りるはずだ。

 そうなるとかなりの魔王軍が攻めてくることになる。

 それに対抗するために俺たちもオルネ村を拠点に、一つの国を作り上げてそれとぶつければいいと考えた。


「一度オルネ村へ帰ろう。そこを拠点に仲間を集めて、魔王軍と戦おう」


 俺の提案にヨミヤは頷ぎ同意した。

 そして俺たちは再び、オルネ村へと帰ることになってしまった。

 

 



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