第二章 ハーピー編

第22話 嫌な予感

 緑豊かになったオルネ村に平穏が訪れ、俺たちは三日ここに滞在していた。

 

 その間にも村は修復と発展を続け、最初の時よりも格段に豪華な村となった。

 木のログハウスには鉄や装飾が施され、鍛冶屋の赤髪短髪が特徴のオーレンと、ピンクの長い髪が美しいメリアの活躍により武器も作ることができた。


 二人の腕は確かで、彼らの打つ剣は街で売られているもの大量生産品とは比較にならない。


 そんな中、俺たちはこの村を出発しようとしていた。



「本当にお世話になりました。俺たちはこのままアヴェロン王国へ戻ろうと思います」


 俺は村長のヨア・アナスタシアにそう告げるとヨアが村人たちを集め、俺たちが村を出るのを見送ってくれるようだ。


 その横で目に涙を溜めたヨミヤは母ニーヤに別れの挨拶を告げていた。


 無理もない、次にこの村に帰ってくるときはいつになるかわからない。

 俺はヨミヤが満足するまで待つことにした。



 あれから数分、ヨミヤがキリッとした顔で戻ってきた。

 別れの準備ができたらしい。



「大変お待たせしました。参りましょう」


「よし、じゃあ行こうか」


 俺は村人たちが手を振る中、オルネ村から出発した。




  ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼




 初めて来たときは灰色の大地だったが、今は木が生い茂り雑草も元気よく生えている。

 そんな帰路を歩きながら、俺はアレクの言っていた言葉が気になっていた。


「なぁヨミヤ、アレクが言っていた王国でやる事も済んだしなって言葉、どういう意味だと思う?」


 一人で考えていても埒が明かないので、俺はヨミヤに質問した。


「さて……アレクたちの事ですから、余計なことをしている可能性がありますね」


 手を顎に当て首を傾げながらそう答える。

 俺も同じことを考えており、アレクたちが俺たちの目の届かないところで嫌がらせをしているかもしれないと思っていた。


「なんか帰るの怖いよなぁ」


「アマギさんなら、きっと大丈夫ですよ」


 俺の不安そうな声を聞くと、ヨミヤは笑顔で励ましてくれた。

 そうだ、俺はこれまでもヨミヤと頑張ってこれた。何が起こっても俺がヨミヤを守って見せる。


 余計なことを考えるのはやめ、俺たちはアヴェロン王国へと急いだ。



  ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼



 あれからかなり歩き、真昼間に出たはずがもう夜になっていた。

 ようやくアヴェロン王国が見え、国の入り口の橋までやってきていた。


「歩くと遠いな! めっちゃ疲れたわ!」


「私は夜が快適なので何とも思いませんけどね。疲れたのでしたら転移魔法を使えばよろしいのに」


「そ、その手があったか!? 早く言ってくれよ~!」


 ヨミヤは暗闇の中、影の中をスイスイと移動していた。

 確かに転移魔法を使えば一度行った場所へはすぐに行ける。

 使わなかった自分を殴ってやりたい気分だった。


「ま、着いたしいっか。いや~早く寝たいな~」


 俺は早く国に入り、ヨミヤのでっか洋館にあるふかふかのベッドで寝たいと心の底から思っていた。



 そう思いながら入り口の橋を渡っていると、警備兵が俺たちの顔をまじまじと見てくる。

 一体何だろうか、俺たちの顔は勇者ギルドにも登録され、貼られているから不審でもないはずだ。



――ブツブツ……



 警備兵が魔道具を使ってどこかへと連絡しているのがわかった。

 しかしそれ以上何も言ってこなかったので、俺たちは警備兵に見られながら橋を渡り切った。


 

 そのまま俺たちはギルドには寄らずに、ヨミヤの洋館へと足を進めていた。

 ギルドに帰った報告をするのが筋だが、あまりの歩き疲れから早く休まりたかったのだ。


 夜の街を寄り道もせず真っ直ぐヨミヤの洋館へと進む。

 ようやく洋館が見えてきたかと思うと、なにやら黄色いテープが洋館をぐるっと囲っているのが遠目でわかった。



「な、なんだこれ」


 その黄色いテープの正体は、結界魔法の類だった。

 そのテープで囲われている範囲内には、術者以外入ることが出来ない。


「わ、私の洋館が……一体なにがあったんでしょうか」


 口元を抑え動揺を隠しきれないヨミヤ。

 俺もこの国で何が起こっているのか、全く理解できなかった。


 ひとまず俺は、ギルドに確認すべく大急ぎで向かった。





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