第20話 対決

 恐らく今のこいつらは魔王により強大な力を分け与えられている。

 村や村人に危害が加わることを恐れた俺は村人たちにこの周りから避難するように伝えた。


「他人の事ばっか気にしてんじゃねぇよ! クソ野郎が!」


 アレクは剣を上に構えこちらへと突っ込んできた。

 その剣には赤い火の中に黒い火がまとわりついていた。

 エンチャントだろうか、洋館でのバトルの時よりも激しい炎だ。

 俺らの横でヒュウガとヨミヤも戦闘を始めていた。



――ガイイィィィン!


 俺は咄嗟に短剣に光エンチャントを施し応戦した。

 

「俺は今お前に勝つためだけを目的に生きてる。だからさっさと死んでくれや」


 目は怒りに満ち、剣を握る手はより一層強くなった。



――キィィィン シュババババ!


 俺は鍔迫り合いをスルリと上手く抜けヘブンズレイを複数放ち距離を取ったあと、召喚魔法を繰り出した。


「お前にそんな恨まれることをした覚えはない! 言っても聞かないなら力づくでねじ伏せるまでだ! 精霊召喚、光の守護神オラクルガーディアン!」


――シュワァァァァァ……


 俺の周りにいくつもの光球が浮遊する。

 実体のない鬼火のような存在だ。

 それぞれが共闘するタイプだが、一度攻撃すると消えてしまう。

 物理的な攻撃は受け付けず、攻撃された物体を通して持ち主を攻撃するものだ。

 振れただけでも電撃や衝撃を攻撃してやけどなどの被害を与える。


「行け! 光の守護神オラクルガーディアン!」


 俺の合図とともに無数の光球がアレクを襲う。


「しゃらくせぇ! こんなもんで俺を止められると思ってんのか! 舐めてんじゃねぇぞ!」


 アレクは剣に纏った暗黒の炎で薙ぎ払うと、飛んでいった光球たちがその炎に当たってジュワァっと消滅した。


――ビリビリビリビリ!


 消滅すると同時にその炎を伝って、アレク自身へと電流が走るような衝撃が体を襲った。



「ぐ、ぐああぁぁ! なんだこれ! 消してもダメなんかクソ!」


 そう、俺の光の守護神オラクルガーディアンは間接的に防いでも、その魔法を伝って持ち主の元へと攻撃がいく。


「俺はもう昔のような弱虫じゃない! 諦めろ、俺には勝てん!」




「きゃあ!」


 俺がアレクを圧倒していると、横でヨミヤの叫び声が聞こえた。

 ヨミヤの攻撃が上手く刺さらず防衛戦になっていたヨミヤだったが、ヒュウガの氷槍アイシクルランスをくらってしまったようだ。


「大丈夫かヨミヤ! くそ、俺が二人を相手にしてもいいが、ここは魔王を呼んで腕前でも見てみるか」


 俺は魔王が本当に助けてくれるのか試してみるためにも、闇夜の鈴シャドウ・ベルを振って鳴らして魔王を呼んでみることにした。



――キィィィィィン ズドオオオオン!



 ほんの数秒で村の後ろに土煙と共に爆発音が響き、魔王シャギーが駆けつけてくれた。

 どうやら本当に手助けに来てくれるようだ。


「はぁ~いアマギ。呼んだ? 何してるの?」


 お気楽そうにそう問うシャギーに俺は今の現状を説明した。

 その間もヨミヤはヒュウガに押されているようだったので、ラスターバーンで援護だけしておいた。


「ふ~んなるほどね~。じゃああたしはヨミヤの手助けをしてあげればいいの?」


「あぁ。頼む」


「おいおいおいおいなんだその女は! お前も魔王と手を組みやがったのか!? 堕ちたもんだなぁお前も!」


 そう高笑いするアレクだったが、俺とアレクは全く違う。

 契約と同盟では立場が全く違うのだ。


「俺たちは同盟だ! お前みたいに魔王の傘下に入るようなことはしていない!」


「それはつまり……俺の方がお前より下ってことなのか!? そうだよなぁ!?」


 俺が反論すると、再び激昂したアレクは俺の方へと飛びかかってきた。

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