第18話 修繕
あれから俺たちは倒壊した村を元に戻すため、修繕工事に勤しんでいた。
魔王にも修繕工事の手伝いを頼んだが、面倒くさそうな顔をすると背中から黒い蝙蝠のような羽を生やし、上空へと逃げた。俺はすぐさま
飛び去って少し時間が経つと、木々の成長が目まぐるしく、あっという間に巨大な木へと成長していった。
「本当によろしいのですか、村を救って頂いただけでなく修繕工事まで手伝っていただけるなんて」
「これくらいお安い御用です。試したいスキルもありますから」
「本当に感謝してもしきれないくらいだ。……それで、このスケルトンらは一体……」
そういうヨアは動き回るスケルトンの方を恐怖の目で見ていた。
さきほどから妙に村人の緊張感が抜けないと思っていたら、丸太をせっせと運ぶスケルトンを警戒している様子だった。
「あぁそいつらですか。ここを去る前に、魔王が修繕工事用の労働者として召喚していったんですよ。危害は加えてこないと思うので、安心していいと思いますよ」
いざとなれば俺が速攻で浄化させてやることもできる。さすがにそんな中襲ってはこないだろう。
「なるほど……それで、試したいスキルとは一体?」
「あぁ、そうだった」
俺はスキル習得をする為に魔法用紙を取り出した。
改めて見ると、
――
(お、これはヴリトラの死骸を吸収した時に得たやつか。状態異常耐性が付くのは大きいな)
魔王が去った後、実はしれっとヴリトラの死骸を吸収していたのだ。
俺は習得したスキルを差し置いて、生活スキルの項目へと指を滑らせた。
――生活スキル 『サバイバルリスト』『木こりの目利き』『構造力学術』
魔法用紙に光る三つのスキルを指でなぞり、以上三つを習得した。
「よし、修繕に必要そうなスキルを覚えたぞ」
俺は早速、木こりの目利きで大きな木に視点を合わせた。すると何処をどう切れば最適な木材になるかが一目でわかった。ライトニングブレードで短剣にエンチャントを施し、見えた通りに剣を走らせるとあっという間に建築に必要な木材が完成した。
「お、おぉなんと早い……」
村の奥でせっせとノコギリを前後させていた村人からも歓声が上がった。
「次はどうやって建物を建てればいいかだが……」
俺は建物を建てる方法なんて知る由もなかった。
だが構造力学術を習得したおかげでどこに木を置き、どこに重心があり、どこに柱を立てればいいのかも全てわかった。
あとはサバイバルリストでそれらの釘打ち、ロープで補強していくだけの簡単な仕事だった。
「ひとまずはこんなもんだな」
額の汗を腕で拭うと、あっという間に一つの普通のログハウスが完成した。
「も、もう出来上がったのですがアマギ様」
「あぁ。便利なスキルだよこれは。検証に付き合ってくれてありがとう」
「いやはや……最初の時よりも格段に豪華な家になっておる。なんと素晴らしい……」
ログハウスの入り口部分の三段の階段を登り、手すりを撫でながらそう言った。
その後俺たちは皆で協力しながら、村の家を修繕していった。
あれから日は落ち、平和が戻って最初夜が訪れた。スケルトンたちは一仕事終えたのを確認すると、地面の中へと潜り姿を消してしまった。
「皆さんお疲れ様です。冷たいお茶でもどうですか」
そういえばしばらくヨミヤを見ていなかったとふと思った。
彼女は森の奥へとお茶っぱを摘みに行き、焚火でお湯を沸かして作ったお茶を新しくできた川で冷やしていた。
ニーアと共にお茶を用意してくれていたようだ。
二人の横で暖かな光を放つ焚火は、人々の心を癒していった。
「あぁありがとう。……これ美味いな!」
「はい、とても新鮮なお茶っぱが取れるようなったんです」
ニーアは嬉しそうにそう語った。今までお茶っぱなんて手に入れることも出来ず、泥水をろ過して飲んでいたらしい。
「とりあえず夜を過ごすために必要な最低限の建物は完成させた。とりあえず今日はみんな休もう」
俺の提案にアナスタシア家の三人と村人たちは頷く。
「おおい! 帰ったぞ!」
声のする方を振り向くと、村の入り口から赤髪短髪の青年とピンク色のロングヘアーの二人が、食料となる動物を荷台で運びながら帰ってきた。
彼らはこの村の鍛冶屋で働くオーレンと弟子のメリアだ。
「おおお疲れさん。今夜は宴だな!」
ヨアは楽しそうに笑った。彼の笑顔を見たのは初めてだった。
オーレンとメリアが獲ってきた獲物をニーアが匠の包丁捌きで解体し、あっという間に焼肉ができそうなサイズへと生まれ変わった。
「それでは! 村を救って頂いたアマギ様と、我が愛しの娘のヨミヤが帰ってきてくれたことにに乾杯!」
変な紹介をされたヨミヤは恥ずかしそうにしていたが、そんな恥ずかしいなんて気持ちも吹っ飛ぶくらいに歓迎され、楽しい宴が小一時間行われた。
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