第15話 ポイズンスネーク戦

 数百は居るだろうか。ポイズン・スネークの群れが、オルネ村目指して一直線にやってきていた。


「な、なんだあの数は!?」


「来る度に倒しても倒しても、またそれ以上の数のポイズン・スネークがやってくるんです。一体どこで繁殖しているのか……」


 斧を強く握るヨアの手は、村人を失う恐怖と自分の責任感に震えていた。


「大丈夫です、俺も加勢します」


「私も戦うわ! アマギさんはこう見えても、凄く強いのですよ!」


「そうか、それは頼もしいな」


 ヨアの震える手が収まり、蛇の群れへと向かっていった。



「バリケードを上げろ! 弓兵はヤグラから! 魔法を使える物は後方支援、前衛は私たちに任せろ!」


 そう村人へ的確な指示を行いながら、村の外へと突撃するヨアと多くの村人たち。彼の斧の扱いはかなり熟練度が高く、バッタバッタとポイズン・スネークの頭を切り落としていった。

 前衛の隙間をスルスルと潜り抜けてきたポイズン・スネークがバリケードに張り付くが、弓兵によって撃ち落されていった。


「よし、俺たちも行こう!」


「はい!」


 俺はヘブンズレイをメインに、ヨアたちの邪魔をしないよう数を減らしていった。




「魔法職! バフ魔法のあと、私たちの前をファイアウォールで塞いでくれ!」


「承知しました! ヒール! ウォールアップ!」


 手負いになりバリケード内に戻ってきたヨアがそう頼むと、後衛が前衛に向かってバフ魔法を唱えた。その後小さな炎の壁をバリケードの前へと召喚した。しかし属性守護神に選ばれていない者の魔法は威力が低く、ポイズン・スネークを仕留めるまでにはいかなかった。


 はじめは火の壁に足を止めていたポイズン・スネークだったが、致命傷にはならないということが分かると少しずつ火の中を突っ切ってくるヤツらが出てきた。


「く、くそ! 数が多すぎる……」


 膝をつき回復中だったヨアが、傷もふさがっていないままこれ以上先へは進ませまいと再び斧を取り向かっていった。


「う~ん、これじゃあキリがないなぁ」


「そうですね、あまりに数が多すぎます」


 息を切らしながらそういうヨミヤに、俺は一つ提案をした。


「ヨミヤ、シャドウバインドで最前列の蛇ポイズン・スネークの動きを止められるか?」


「は、はい。やってみます」


 ヤグラにジャンプで登り、ヨミヤは広範囲にシャドウバインドを発動した。すると前にいたポイズンスネークは動きを封じられその場に硬直し、後続のポイズンスネークたちがそれに引っ掛かり団子状態になっていった。


「いいぞヨミヤ!」


 そう褒めるとヨミヤはこちらに振り向き、頬を赤らめ笑っていた。

 俺は蛇の団子状態が解けないうちに、詠唱を始めた。


「――全てを照らし尽くす光を司る偉大なる守護神の名において、その陽光のたぎりをもって我が道を阻む愚かなるものをその身の一片に至るまで焼き尽くせ! セラスティアル・レイ!」


 詠唱を唱え終わると、天空に巨大な魔法陣が描かれ轟音と共に大地を貫くほどの光線がが幾本も降ってきた。その光線は数多のポイズンスネークを貫通し、あたり一帯にポイズンスネークの死体の山が出来た。


「な、なんじゃこりゃぁ……」


 ヨアは腰を抜かし、持っていた斧が手から滑り落ちた。村人たちも呆気に取られていた。

 俺はそれを横目に、エメラルドの指輪を掲げポイズン・スネークを吸収した。紫色の粒子が指輪の中に吸い込まれ、魔法用紙が紫色に輝いたのを確認すると俺は新たなパッシブスキル毒耐性Lv10を習得した






「や、やったぞぉぉ! 勇者様が我々をお守りくださった!」

「誰も犠牲者を出さずに済んだぞ! こんなのは初めてだ!」


 腰を抜かすヨアの周りで、村人たちは歓喜の渦に飲まれた。ヨアは斧を杖のように使い立ち上がり、俺に礼を言った。


「本当にありがとう。アマギ君と言ったか、君はここまで出来るとは思ってもいなかったよ」


「はは、ありがとうございます。これもヨミヤのお陰ですよ」


 そうヤグラの上にいるヨミヤの方を向くと、笑顔でこちらに手を振っていた。




――ズザザザザザザザザ……



 すると何処からともなく巨大な音が近づいてきた。音の方を見ると、巨大な王冠を付けた大蛇がこちらに向かってきていた。


「う、嘘だろ……」

「あ、あんなの勝てっこない……」


 村人が尻もちをつき、大蛇とは反対方向へ慌てふためきながら逃げ出した。


「な、なんてことだ……今までこんな巨大な蛇は来たことがなかったのに……」


 先ほどまでの喜びムードが嘘のように、再び村は絶望へと包まれていった。



「アマギ君。君はよくやってくれた。これ以上君を巻き込むのは申し訳ない。この村の事はもういいから、あとは私たちで何とかする」


 ヨアは逃げる村人の中、大蛇の方を睨み斧を力強く握りしめた。


「き、危険です! あいつは今までの雑魚的とはレベルが違います。ここは俺たちに任せて!ヨアさんはニーアさんを!」


「だがしかし……いや、本当にありがとう……検討を祈る」


 ヨアはこちらを振り向き、俺の言葉に安心したのかそう言い残し家の方へと向かい始めた。




「さて、どうやって倒そうか……」


「大きすぎますね……」


 ヤグラから降りこちらに駆け寄ってきたヨミヤ。

 大蛇は、猛毒を撒き散らしながらこちらに全速力で向かってきていた。


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