第6話 圧勝
青空のなか俺たちはアレクとは違う馬車の中で揺られていた。
道はガタガタと揺れ続け乗り心地はお世辞にも良いものとはいえなかったが、俺は新しいスキルを使いたいことに興奮しておりそんなことは気にならなかった。
一方でヨミヤは馬車に酔ったのか、ずっとオエオエ苦しみながら馬車の縁に手を着いていた。
「ヨミヤ、大丈夫か?」
「うっぷ……大丈夫じゃないです。まだ着かないんですかこの馬車は……」
「もうそろそろ着くと思うんだけど……」
そうこう言ってる間に採掘場が見えてきた。二日ほど馬車に揺られていたので、気にならないとは言ったものの体がなまっているのを感じた。ヨミヤは採掘場を見るや否や馬車を降りたそうにするが、日の光がキツイので諦めていた。あと一時間も乗っていれば吐きそうな様子だった。
「おせぇぞアマギ! どんだけ時間かけて来てんだ。歩いたほうが速かったんじゃねぇのか!?」
アレク達は見るからに乗り心地の良さそうな、シートにクッションがふんだんに使われた馬車で来ていた。しかもその馬車を引いているのは白馬だ。つやつやの毛に長いまつ毛が印象の、足の速そうな馬だった。
「ご、ごめん……待った?」
「待ったも何も一日待ったわ! ったく、日が暮れるってのはこういうことを言うんだな」
アレク達には申し訳ないなと感じながら俺たちは採掘場を入り口から入っていった。
しばらく進んだだろうか、道が開けてきて、明かりも増えてきた。さっきまでここで採掘していたんだろうな、という感じるほどツルハシやリアカーがそこら中に転がっていた。おそらくゴーレムが湧き出てきて大急ぎで逃げだしたんだろう。
奥の方にはまだこちらに気づいていないゴーレムが数体、ノラリクラリと動いていた。
「じゃ、お先に行かしてもらうぜ」
「アイスブロック!」
そう言うや否やアレク達四人のパーティはゴーレムに向かって勢いよく走りだした。先陣を切ったのはヒュウガで、氷魔法で足を凍らせ動きを止め、サリアが風魔法エアーシュートをゴーレムに放った。
その風目掛けアレクがファイアストームを撃ち込むと、風の力により炎が増幅されとんでもない火柱がゴーレムを襲った。
「ストーンプレス!」
ゴレンがゴーレムに巨大な岩を落とす魔法を放った。熱されたゴーレムはその岩に押しつぶされ粉々になってしまった。
「いっちょあがりぃ!」
アレク達四人はハイタッチをする。相変わらず凄い連携力だ。今の連携にも、当時の僕なら入る余地がないだろう。出来ることと言ったら、後光をさしてかっこよく魅せるくらいだ。
「わ、私たちも頑張りましょう!」
「そ、そうだな。今の俺たちならいけるよな!」
そう意気込んだ俺たちはアレクとは反対方向のゴーレムを相手にする。アレクはちらちらとこちらの様子を伺っているようだった。
「ヨミヤ! ゴーレムの動きを少しの間止めてくれ!」
「わかりました! シャドウバインド!」
ヨミヤのシャドウバインドは、相手の影を縛り動きを制限する。幸いここには電気が通っており、影が出来るには十分な環境だった。
「よし、今のうちに
――
――詠唱魔法 魔法陣を構築し、相手の足元を中心に光の十字架を描き、両断する。発動にはそれなりに時間がかかる。
「これって詠唱魔法だったの!?」
それを知らなかったアマギは少し出遅れてしまった。その瞬間をゴーレムは見逃さず、岩魔法ストーンフォールを発動した。ヨミヤの頭上から数多の岩が降り注ぐ。
「危ない!!」
俺はすかさず詠唱を辞め、ラスターバーンを発動した。ヨミヤの周りを光の幕が包み込み、ストーンフォールの岩たちを反射させた。
「助かりました、アマギさん!」
「いいってことよ! でもヨミヤ、俺の
「頑張ってはみます……!」
シャドウバインドで拘束されているゴーレムの後ろに回り込み、俺は詠唱を始めた。ゴーレムの足元に巨大な魔法陣が描かれ始める。
ゴーレムは再びストーンフォールをヨミヤに向かって放った。今度はヨミヤもシャドウシークで上手く避けられたようだ。頼む、もう少しだから耐えてくれ!
十秒ほどの詠唱を唱え、ゴーレムの足元の巨大な魔法陣が完成した。
「よし、発動できるぞ!ヨミヤ離れろ!」
「わかりました!」
シャドウバインドを解除し、一目散に後ろへ撤退する。
「
耳が痛くなるような高音が採掘場内に響き渡ると同時に、魔法陣から巨大な十字架が勢いよくゴーレムの頭の上にまで伸びた。その後十字架が弾けると同時に、ゴーレムもバラバラと床に砕け散った。
「やったぞヨミヤ!」
「やりましたねアマギさん!」
「あいつら……嘘だろ……」
この爆音が鳴り響く前からアレクパーティ達も戦闘の様子を見ていた。今までと違うアマギの様子に肩から力が抜け落ちていった。
「おいアレク、今はこっちに集中しろ!」
ヒュウガがアレクを呼び戻す。だがアレクの耳にその声は届かなかった。
その後、俺たち二人は次々とゴーレムを倒していった。その様子をアレクは見続けることとなった。
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