第5話 挑戦


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 俺たちはそのままダンジョンの前で夜を明かした。新しいスキル「ラスターバーン」のおかげで俺たちは安心して眠れた。



「ラスターバーン」


 最上級反射系補助魔法。

 地面や壁、天井などの障害物に光の膜を張り、魔法を反射させる。

 光の魔法なら威力を増幅させる。

 膜に物理的な干渉があった時、肌に触れられるような感覚がある。



「いやぁ便利なスキルも手に入って、一気に強くなった気分だよ。ヨミヤ、よく眠れたか?」


「おかげさまで。気持ちよく眠れましたよ」


 といってもこいつは影の中で眠っていたんだがな。もう少し俺を信用してくれてもいいんじゃないだろうか。



 時刻は昼頃。俺たちはギルドを目指して獣道を歩いていた。相変わらずヨミヤに関しては、昼間はずっと傘を差しながら歩いている。途中に出てくるスライムなどの下級生物は俺の発動済みの潜在スキルを察知してか、全く近寄ってこなくなった。それはそれで寂しいものだ。



 何事もなく俺たちは街に着いた。まともな食事をとっていない俺たちは、金を稼ぐ為に高報酬な依頼があるギルドに再び顔を出したのであった。



「おいおい誰かと思いきやアマギ君じゃないか~」

「あ、あれから大丈夫でしたか……?」


 俺を見るや否や火属性使いのアレクが俺を威圧する。サリアちゃんは相変わらず優しいなぁ。


「ひ、久しぶり」

「横にいる女は誰だぁ?見たことねぇ顔だが、勇者なんか?」

「あまり強そうには見えないな」


 アレクとヒュウガがそう悪態をついてきた。俺がわざわざ低姿勢であいさつしてやったのに、返す言葉がそれか! 



「俺たちは新しくパーティを組んだ。今日は高報酬な依頼を受けに来たんだ」


「ッハッハハハ! お前に高報酬な依頼なんて達成できるものか。木の棒でスライムでもつついてる方がお似合いなんじゃないか?」


 俺はそんな悪態をついてくるアレクと心配そうに見ているサリアを無視し、依頼が張られている掲示板へと近寄った。ゴレンは相変わらず岩のように動かないけど、どう思っているんだろう。


「ふん、生意気な奴だ」



 俺とヨミヤは割が良さそうなクエストを、大量にクエスト表が貼ってある掲示板を指でなぞりながら一つ一つ探していく。するとなかなかに良さそうな物が一つ見つかった。



――採掘場におけるゴーレム退治。一匹につき十万ゴールドーー



「ヨミヤ、これいいんじゃね!?」


「はい、なかなかに高報酬ですね!今の私たちならいける気がします!」


 二人で盛り上がっているとまた後ろからアレクが話しかけてきた。



「お前たちにそんな依頼は無理だ。俺たちに寄越せ」


 アレクが言う後ろでサリアがまたあたふたしている。だが今の俺にはゴーレムだって退治できる気がしている。ヨミヤだって後ろの方で怖気づくことなく自信に満ち溢れた表情でこちらを見ている。俺はアレクの言う脅迫に屈することなく俺は一つ提案をした。



「なら、どっちが多く倒せるか勝負しようよ」

「は?そんなもん俺たちが勝つに決まってんじゃねぇか」

「やってみなくちゃ分からないよ」

「どっからそんな自信が沸いてくるんだこいつは」


 昔の俺とは違い堂々とした態度でそう答える。それが気にくわなかったのか、アレクは捨て台詞を吐いて依頼を受注すべくカウンターへ向かっていった。



「この依頼を受けたい。今回は二つのパーティ同時にだ。正直向こうのパーティはろくに討伐も出来ないだろから受注する必要は無いと思うがな……」


 アレクがあいつらの事だと言わんばかりに視線をこちらに向けてきた。でも大丈夫だ、今の俺たちならきっとやれる。そう俺は拳を胸の前でグッと力を込めた。ヨミヤはヨミヤで、屈伸運動のような事をしてやる気を高めているようだった。彼女なりのルーティンだろうか。


 受注を済ませたアレクが鎧の音をガシャガシャと激しく立てながらこちらに受付表を持ってきた。


「ほら、お前たちの分だ。このクエストを失敗させて恥をかかせてやる」


「負けないよ」



 そうニヤリと笑う俺を気にくわなかったアレクは、椅子をガンッと蹴ってパーティの方へと帰っていった。

 一方で俺たちはこの前稼いだ日銭を使い切り盛大に飲み食いをした。


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