舞台は京都、家族経営の中小企業間で繰り広げられる数組の男女による恋愛模様。
主人公の真一は、実家の農業を継ぎたくないという消極的な理由で上京し、流されるように伯父の会社を手伝わされることに。そこで上京中の列車で出会った女性と再会し,やがて恋愛に発展しそうなところに,強力な恋敵が出現して……
この物語に出てくる男子たちは,仕事の腕はさておき,恋愛については不器用な印象です.主人公も恋敵も,恋愛対象に対して「悪手」としか思えない策を講じてしまいます.これに対して,女子たちはみな気丈夫で,男子に発破をかける様子が好対照です.「不器用な男子に惹かれる」というの通説をあっさり蹴り飛ばすあたりに痛快さすら覚えます.
ネタバレになりそうなので詳細は控えますが,この物語にはある意味最大の「恋敵」でもあるキーパーソンがいて,その人の存在が起こすどんでん返しも熱いです.
他にも,(関東在住の拙レビュアーから見ると)旅情をかきたてる列車名,理解できるぎりぎりの範囲で句読点が省略されまくった会話文による関西人同士の丁々発止,美しくも危険な雪景色など,演出面も素晴らしい作品です.