第49話 靴下

会社最寄り駅近くの登りのエスカレーターにて。


私の2段ほど前に、おそらく若者と思われる、ピシッとしたスーツの男性が乗っていた。

スーツもピシッとしていれば、鞄も靴もピカピカだ。

彼自身がそうしているのか、恋人かはたまた親御さんか。

そんなことはどうでもいい。

後ろ姿だけでも、身だしなみは満点だ。


ふいに、彼が片足を1段上のエスカレーターに乗せた。

と同時に、きっちり折り目が付いたパンツの裾が持ち上がり、靴下が現れた。

私はその靴下に、目が釘付けになった。


紺色の生地に描かれていたのは、たくさんの小さな・・・・ハンバーガーっ?!


靴下とスーツと靴と鞄を、何度も見直す。

スーツと靴下と鞄は、何度見てもピシッと決まっている。


・・・・何故に、ハンバーガー・・・・?!


色々、妄想してみる。


実は、小さい子供がいて、誕生日などでプレゼントとしてもらったとか。

恋人からのプレゼントとか。

ご両親の趣味・・・・とか?



それから間もなくエスカレーターは上に着き、若者は足早にビルの中へと入って行った。


立っていても歩いていても、見える事は無いだろう。

座った時と、先ほどのようにエスカレーターに乗った時以外は。


私はその日一日、ハンバーガーの靴下がどうにも気になって仕方が無かったのだった。

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