第26話 年
「それでね、こう言ったんだけどさ。どう思う?」
「・・・・・」
「おばあちゃん?聞いてた?」
「ええっ?なんだってっ?」
わたしの祖母は、耳が遠い。
それでもなぜか、聞こえているフリをする。
挙句、トンチンカンな事を、言ったりもする。
知らない人からしたら、【認知症かしら?】と思われるだろうが、そうではない。
頭はクッキリ聡明だ。
ただ単に、耳が遠いだけ。
家族は祖母に、ことあるごとに言っている。
「お母さん、補聴器使いなよ」
対して、祖母は言う。
「イヤだよ。年寄り臭い」
・・・・いやいや、もう年寄りだし。
『ええっ?なんだってっ?』
と聞きなおす方がよっぽど、年寄り臭いぞ。
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