第27話 理由

わたしが幼い頃の話だ。

叔父が、わたしを映画に連れて行ってくれることになった。

母は、叔父にこう言ったのだと言う。


「この子には絶対に、食べ物を与えちゃダメよ」


叔父は、こう思ったらしい。


「義姉さんは、なんて可哀想な事を言うんだろう」


そして、優しい叔父は、母の言いつけを破って、映画が始まる前に、わたしにお菓子を買い与えた。


映画の上映中、叔父は激しく後悔をしていたと言う。母の言いつけを破ったことを。

映画に夢中になっていたわたしは、そこら中に菓子を食い散らかしていたのだ。

服を菓子まみれにしながら。



「だから言ったじゃない、食べ物を与えちゃダメだって」


わたしを家に連れて帰った叔父は、母にしこたま怒られたとさ。


すまぬ、叔父さん。

つーか、母よ。

叔父さんにちゃんと、『理由』も話すべきでは無かっただろうか。

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